スマホの「イヤフォンジャック」「microSDスロット」は廃止されるのか 次のターゲットは「SIMスロット」?

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2024年06月30日 10:20  ITmedia Mobile

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イヤフォンジャックを廃した2024年のAQUOSシリーズのスマートフォン

 スマートフォンから減りつつあるイヤフォンジャックとmicroSDスロットは、今でも根強い支持されている機能だ。今回は日本国内にて2024年発売、発表された機種で改めてmicroSDメモリカードや有線イヤフォンが利用できる機種を取りまとめてみた。


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●少なくなったイヤフォンジャック搭載機、ハイエンドでは少数派に


 まずは、2024年日本で発売(発表)されたスマートフォンにイヤフォンジャックとmicroSDスロットが利用できるか否かを表にまとめた。microSDスロットの有無は本体のストレージ容量の関係が大きいため、端末のストレージの最低容量も合わせて記載している。


 イヤフォンジャックはミッドレンジでは採用機種が一定数あるが、ハイエンドでは少数派だ。10万円を超える価格帯では、現時点でゲーミング性能をアピールする「ROG Phone 8」と「REDMAGIC 9 Pro」、ソニーの「Xperia 1 VI」で採用している。


 また、ソフトバンク専売の「Leitz Phone 3」もイヤフォンジャックを備えるが、こちらのベースモデルは2023年発売のシャープ製のハイエンドスマホ「AQUOS R8 pro」だ。


 ミッドレンジではFCNTの「arrows We2 Plus」、ソニーの「Xperia 10 VI」がイヤフォンジャックを採用するが、Xiaomiやモトローラといった海外勢は採用していない。以前に比べて海外メーカーの機種が増えたこともあり、ミッドレンジでイヤフォンジャックを採用する機種が少なくなった印象だ。


 市場想定価格が4万円以下のエントリーモデルではイヤフォンジャック採用機種も多く、ユーザーからの支持が根強い。このあたりの価格帯ではFMラジオ機能を備える機種もあるため、有線イヤフォンをアンテナとして機能させるために備える。


 さて、ハイエンドスマートフォンにおけるイヤフォンジャックは機能性よりも、もっぱらゲーミングのアピール要素が強くなった。ゲーミング用途では音声の遅延を抑えられること、本体を充電しながら有線イヤフォンを利用できることがアピールポイントだ。REDMAGICやROG Phoneといったゲーミングスマホで支持が根強い点は納得だ。


 また、ソニーのXperiaはゲーミングに加えて音楽の「高音質再生」という付加価値を備えている。このあたりはウォークマンを同じグループ内に持つソニーらしい強みだ。


 ミッドレンジでもイヤフォンジャックを備えない機種が増えているのは、メーカーの考え方も大きい。日本での地盤が強いメーカーはユーザーの声に応える形で採用しているが、海外勢のようにグローバル向け製品をベースに日本向けローカライズをする場合は別途コストもかかるので好まれない。Xiaomiでは自社のワイヤレスイヤフォンを購入特典として提供するなど、利便性を損なわないように対応した例もある。


 また、ミッドレンジやエントリーモデルではFMラジオ機能を備える関係で、有線イヤフォンをアンテナとして機能させるためにイヤフォンジャックを備える機種がある。2024年初めの能登半島地震でも「携帯電話のセルラー通信に依存しない情報収集ツール」としてFMラジオが注目を集めるなど、もしもの備えに応える機能だ。


 2024年は端末の変化も大きい。長年イヤフォンジャックの採用を続けていたシャープは、2024年夏に発売する「AQUOS R9」で採用を見送った。端末のデザインを一新したことや、海外市場にも注力している点から、従来のイメージとは異なる戦略に至ったと考えたい。


【訂正:2024年7月1日10時50分 初出時、AQUOS wish4のイヤフォンジャックを非対応としていましたが、正しくは対応しています。おわびして訂正いたします。】


 また、積極的な日本向けローカライズで人気を集めるOPPO Reno Aシリーズの最新モデル「Reno11 A」も今回はイヤフォンジャックの採用を見送っている。こちらはベースモデルをグローバル向けの機種としたことで円安下でもコストを抑えており、その影響だと考えられる。


●ハイエンドでは絶滅危惧種となったmicroSDスロット


 microSDスロットを備える機種は、イヤフォンジャックを備える機種より少ない。10万円を超えるハイエンド機種では、シャープのAQUOS(Leitz Phone)とソニーのXperia に限られる。


 この価格の海外勢に採用例はなく、日本のみならず世界的に見てもレアな存在になりつつある。フラグシップのSnapdragon 8 Gen 3採用機に至っては、ソニーのXperia 1 VIが現状唯一の存在だ。


 一方、microSDメモリカードを利用できない機種では、大容量モデルを用意するという変化が見られる。例えばGalaxyでは上位モデルのSシリーズや折りたたみのFold、Flipシリーズ、Google Pixel 8シリーズも直販のみならずキャリアでも複数容量を選択できるマルチストレージモデルで展開しており、日本でも「大容量が欲しい」というニーズに応えている。


 また、Xiaomiのオンライン向けブランドのスマートフォン「POCO F6 Pro」も512GBストレージが選択できるなど、オープンマーケット向けの10万円以下の製品も複数容量を選べるものが増えた。


 ミッドレンジでは日本向けのローカライズを施したarrows We2 PlusやXperia 10 VIがmicroSDスロットに対応。その一方で、海外勢はmicroSDメモリカードが利用できない代わりに大容量の本体容量で応えてきた。


 例えば、「Nothing Phone(2a)」は256GBの容量を選択できる。XiaomiのRedmi Note 13 Proシリーズのように5万円以下でも最低容量が256GBの構成も現れた。XiaomiやNothingなどをはじめ、この価格帯の機種でも複数の容量を選べる機種が登場しており、microSDスロットが利用できなくとも大容量の選択肢が与えられている。


 一方、GoogleのPixel 8aについては、256GBの選択肢が欲しいという意見がSNSなどで見られた。本機種は直販、キャリアを通しても128GBの容量しか用意されていない。


 4万円以下のエントリーモデルでは、今でもmicroSDメモリカードが利用できる機種も少なくない。一方でarrows We2やAQUOS wish4はストレージ容量が64GBと少ないこともあり、かえってmicroSDメモリカードがないと不便な場面も少なくないと考える。


 端末の傾向として、256GBを超えるストレージを備える機種ではmicroSDスロットを採用しない機種が多い印象だ。特にXiaomiなどの海外勢ミッドレンジが最低容量を大きくした代わりに、microSDスロットを採用していない点からもその傾向が見えてくる。


 2024年はAQUOS やXperia、arrowsが256GBのストレージ容量でもmicroSDスロットを採用しているが、どれも日本市場での支持が極めて高いメーカーであり、ある意味実質的な日本向けローカライズと判断することもできる。


●どんどんなくなるスマホの「穴」 次の一手はSIMスロットか


 ここまで見てきてイヤフォンジャックやmicroSDスロットを廃止する流れはハイエンドにとどまらずミッドレンジでも現れている。


 ただ、これらの背景にはワイヤレスイヤフォンの高性能化、高音質コーデックの登場。ストレージの大容量かつ廉価化、5G通信による大容量高速通信の普及がある。イヤフォンジャックやmicroSDメモリカードについては、これらの代替え手段がある程度整ったことも端末側の変化に影響している。


 PCの端子類がUSB Type-Cに変わったのと同じように、スマートフォンも時代に合わせた必然的な変化と評価していいだろう。一方で、これらの機能を求める場合の選択肢が少なくなっており、機種変更の際には利用できる機種を見極める必要がある。


 スマートフォンからイヤフォンジャック、microSDスロットといった穴が廃止されれば、次は「物理的なSIMスロット」がeSIMの台頭によって廃止されるかもしれない。既に米国向けのiPhoneはeSIMのみの仕様で販売されており、物理的なスロットは備えない。日本でも2024年春に発売されたiPad ProはeSIMのみの仕様となるなど、変化が起こり始めている。


 Androidスマートフォンでは数は少ないものの、日本では楽天モバイルの「Rakuten Hand」や「Rakuten mini」といったオリジナル端末がeSIMのみの仕様だったことは記憶に新しい。


 物理的なSIMスロットの廃止。この流れがすぐに日本でも来るとは考えにくいが、iPhoneでも前例がある以上は「絶対にない」とはいえない。日本では大手4キャリアがeSIMに対応し、MVNO各社も対応しつつある。eSIMのみの端末を利用する地盤としては十分なものだ。時間等の制約で使いにくい現状の手続き面も、eSIMのみの端末が普及すれば改善される可能性は高い。


 イヤフォンジャックもmicroSDスロットといった物理的に親しんだものがなくなったり、大きく変更されたりすると最初は戸惑いがあるかもしれない。それでも時代を追うごとに改善していったのが世の常だ。


  microSDスロットやイヤフォンジャックが時代の流れと共に廃止される機種が多い中、同じような理由で物理的なSIMスロットが多数のスマホからなくなる日もそう遠くないのかもしれない。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/


このニュースに関するつぶやき

  • イヤホンジャックはUSBタイプC経由で代替可能なので大丈夫。microSDスロットは5万円以下のスマホで本体容量が512GB以上が普通になれば自然に無くなっていくと思います。
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