ソフトバンクグループ(SBG)が8月1日、米医療ITスタートアップ「Tempus AI(テンパスAI、以下テンパス)」との合弁会社「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」を始動させる。AIを駆使した新しい医療の提供を目指す。
遺伝子検査で得られたゲノム情報や電子カルテなどの医療データをAIで解析。患者ごとに最適な治療を提案するサービスを目指す。主にがん治療などに役立てる。
●孫正義氏の「次の一手」とは?
2015年設立のテンパスは、解析したデータと電子カルテなどから最適な治療の選択肢を示すサービスを手掛けてきた。すでに米国で2000の病院と連携している。今回の合弁会社エスビーテンパスでは、テンパスが米国で蓄積した知見や技術を応用。日本の医療のさらなる進歩を目指し、年内にも国内でサービスを始めたい考えだ。資本金は300億円で、SBGとテンパスAIが折半する。
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キーワードは今回もAIだ。テンパスはヘルスケア領域で、AIを実践的に応用した個別化医療を推進してきた。同社のAIに対応したプラットフォームは、医療提供者がよりデータに基づいた意思決定をし、製薬会社がより効果的な治療法を開発することを支援するものだ。
孫正義会長兼社長は記者会見で「AIを駆使した質の高い個別化医療を推進することで、少しでも人々の悲しみを減らし、一人でも多くの人々の幸せを増やしたい」と話した。
●昨年、がんで父親を亡くした孫氏
SBGが医療事業を手掛けた背景には、孫氏の個人的な経験もある。孫氏は2023年、父親をがんで亡くした。
「(父親は)それまで毎月のように、健康診断をしていました。直前の検診では分からずに、ちょっと調子がおかしいと(病院に)行った時にはすでにステージ4の肺がんで、体中に転移している状況でした。(私は)毎日のように泣きました。父の最期は壮絶な死でありました」(孫氏)
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孫氏は6月21日の株主総会で、SBGの使命を「ASI(Artificial Super intelligence、人工超知能)を活用しながら人類の進化に貢献すること」だと話していた。ASIを「人類の知能の1万倍」と定義。ASIの時代が10年前後で訪れると予測した。
今回の医療事業は、来たるべきASIの到来を見据えた孫氏の「次の一手」だ。最近は株主総会以外では会見に出席することはほとんどなかった孫氏が、一事業の発表のために記者会見で直接語ることは珍しい。記者からの質疑に応じるなど2時間以上の時間を費やした。
「本当にAIが医療の役に立てるタイミングが来た」(孫氏)
孫氏の本気度が見えた会見だった――。
(アイティメディア 今野大一)
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