組織に必要な「キャプテン、リーダー、フォロワー」――バスケ強豪校を30年率いた名監督の「強いチームの作り方」

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2024年07月01日 06:40  ITmedia ビジネスオンライン

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東京成徳中学校・高等学校 バスケ部顧問 遠香周平氏

 吉本興業でナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号、ロバートのマネジャーを務めた後、FIREBUGを立ち上げた佐藤詳悟氏。FIREBUGでは、才能を拡張させる“タレントエンパワーメントパートナー”として、多くのタレントのプロデュース戦略を手掛け、企業向けにはタレントを軸としたコンテンツを中心にマーケティングソリューションを提供している。


【画像】対談の様子


 本連載では、マネジメントのプロである佐藤氏が、今会いたい“敏腕マネジャー”と対談し、メンバーのモチベーションを上げたり、才能を開花させたりするヒントを探っていく。


 第6回目となる今回の対談相手は、女子バスケットの名門・東京成徳中学校・高等学校で長年指導者を勤めてきた遠香(おか)周平氏。何度もチームを表彰台に送り出し、日本代表チームなどで活躍するプロ選手を育成してきた。


 記事の前編(「ちぐはぐでも『目標はメンバーが立てる』 全国制覇多数、女子バスケ名門校を率いる敏腕コーチのマネジメント術」)に続き、若きチームメンバーを成功に導くマネジメント手腕を明らかにしていく。若くてエネルギーにあふれている一方で、メンタル面でもスキル面でも発展途中の選手たちを、どのようにチームとしてまとめ、鼓舞してきたのだろうか。


●組織に必要な「キャプテン、リーダー、フォロワー」 それぞれの素質とは?


佐藤氏: 遠香先生は、30年以上いろんなチームを見続けてきていますよね。同じ学校の部活動でも、世代によって、チームのカラーは異なりますか? もし異なるとしたら、チームの色を決めているものは何なのでしょうか。


遠香氏: チームの色を決めるのは、「リーダー」です。ちなみに私は、チームには「キャプテン」「リーダー」「フォロワー」が必要だと考えています。


 キャプテンは、チームをまとめるバランサー的存在。基本的には、コーチが指名してその役職につきます。


 リーダーは、チームの士気を上げることに長けている子。そしてフォロワーは、リーダーを支持してサポートする子。


 リーダーとフォロワーは、キャプテンのように指名したからといってなれるものではありません。世代によってはキャプテンだけで、リーダーとフォロワーがいない年もあります。でも、「キャプテン」「リーダー」「フォロワー」がそろっているチームが、バランスの良いチームになりやすい。だから、リーダーはスカウト経由で探すことも多いですね。


佐藤氏: 遠香先生が、「ぜひリーダーになってほしい」とスカウトする学生の特徴はありますか?


遠香氏: 練習中や試合中にチームメイトを鼓舞していたり、どんな場面でも自分が率先して動いていたりする子が多いですね。リーダーに必要なのは、テクニックよりもみんなの前に出る「勇気」。そして、フォロワーに必要なのは、リーダーを支える「思いやり」なんです。


佐藤氏: ここでも、理念が生きてくるのですね(前編参照)。


遠香氏: はい。もちろん、勇気と思いやりは、部員全員に持っていてほしいものです。でも、リーダーとフォロワーには、特にその資質が求められます。


●30年前と今、変わったことと変わらないこと


佐藤氏: だから、勇気を持ってみんなを引っ張るリーダーによって、チームのカラーが決まっていくのですね。ちなみに、30年前と今など、時代によるチームのカラーの変化はありますか?


遠香氏: 「若者」という意味では、今も昔も変わりません。でもより納得感を持って練習をしたい生徒が増えてきていますね。


 例えば、30年前は学生にとってNBAの映像は、簡単に手に入るものではなかった。そのため、学生にとってはコーチの指導が絶対でした。


 でも今は、プロ選手の試合や練習風景を動画配信サービスなどで手軽に閲覧できます。そのため「自分にはこの練習が合ってそう」「次の試合ではこの先方を試してみたい」など、以前に比べて自分で考えて、やり方を提案してくれる子が増えました。これはうれしい変化ですよね。


 生徒たちに合わせて、私たち指導者も変わっていかなければいけません。約30年間、指導者という立場は変わっていませんが、どうしたら目の前の生徒たちが選手としても人としても成長できるかは、ずっと試行錯誤し続けています。


佐藤氏: 「納得してやりたい」は、若手の社会人からもよく聞きますよね。どんな理念を掲げていて、それを実現するためにどんな戦略で行くのか。それをきちんと説明できる企業で働きたい人が増えているし、その方が仕事へのモチベーションが上がると感じているのでしょう。


 「余計なことは考えなくていいから、とりえず手を動かせ!」という時代は、もう終わったのかもしれません。これからは、自分で考えて行動できる人が伸びていく。それは、部活も社会も変わらないのですね。


(仲奈々)


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