「やりたいこと」を見つけるには“自分の経験の棚卸し”だけでは不十分 多くの人が見落としがちなもう1つの視点

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2024年07月02日 06:30  ログミー

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0から1にするコツは、とにかく「種まき」をすること

大木浩士氏(以下、大木):新しく何かを始める時は緊張するし、失敗が怖いし、本当に不安です。冒頭でお話ししたように、私は2011年までずーっとサラリーマンしかしてこなかったので、場づくりをしたことがなく、講師経験もない。人前に立つことも大変苦手でした。

でも何か自分でできることを始めたいと思い、実験する感覚でスタートしました。「実験だから失敗をしていい」、そんな気持ちから最初のセミナーを開催し、研修講師も始めました。セミナーや研修を最初に行う方に、私は「第0回」の開催をお勧めしています。

身内だけでのセミナー、知人を集めてのトークイベントなど、心理的なハードルを思い切り下げて、まずは経験の機会をつくってみる。そんな一歩の踏み出し方も大切かもしれません。

0から1にするコツとして「種をまく」ことも、とても大切だなぁと思っています。何か取り組みをした時に、「成果を出したい」とか「果実を得たい」と思うわけですけど。最初から成果を得ることは難しいし、果実もなかなか得られない。

何かを得ようと思った時は、やっぱり土を耕したり種をまいたりすることが重要だと、個人の活動を通して感じています。果実を求める前にとにかく種まきをする。その大切さを、独立した今も痛感しているところでもあります。

三日坊主で終わらせないための「種まき記録シート」

大木:種まきについては、例えば考えを人に伝えたり、自分でモノづくりをされてる方は小さく作品を形にしてみたり、発信することも大切です。そういうことでコツコツ種をまいて、水をあげて、人脈を広げたり経験を重ねたりする。そんなことをしているうちに、いつしか芽が出て茎が伸びて花が咲き果実が得られる。自分の過去の経験を通してそのように思います。

とはいえ、種をまく行為は、三日坊主で終わってしまうこともよくあります。どうやったら続けられるだろうかと考えた時に、私は「種まき記録シート」をつくってきました。「1日1個、未来に果実を得るために種まきをしよう」と決めて、何をやったかを紙に書き出しました。

「今日はこれをやった。明日はこれをやる」みたいなことを、1日1個でいいから紙に書いていくと、続けやすくなるかなぁと思います。

(種を)まいたこともそうですが、成果が出たことや変化が生まれたことも少しメモをしておくと、モチベーションが高まったりします。種まきや、それを継続することも非常に重要だというお話です。

自分のやりたいことや、できることの探し方

大木:本の最初の章に、これまで述べたようなことを書いてもいますが、「自分のやりたいことやできることの探し方」もけっこう重要なので、その話にも少し触れたいと思います。

自分がやりたいことやできることを見つけるのは、なかなか難しいと思います。探すコツは、「自分への気づき」と「人の悩みや困りごとへの気づき」を、少しずつ自分の中に貯めていくこと。そしてこの2つの接点を探すことです。

「自分への気づき」は、自分の得意なことや、昔楽しかったことを振り返りながら、自分の棚卸しを行うことが一般的です。この取り組みはもちろん重要なのですが、多くの方が、これだけで終わってしまう。実はもう1つ大切なことがあって、それは「人の悩みや困りごとに気づく」ことも必要だと考えています。

岩手県の陸前高田では、地域のコミュニティ再生に悩んでいた福田さんとの出会いがありました。企画書を書けない主婦や学生さんの声にも触れてきました。栃木県の出身者からは「自分たち出身者が集まる場がない」という話を聞きました。

そういう方々の悩みや困りごとを知ることで、私は自分ができることのヒントを得てきました。そして新たな活動のヒントにしてきました。

「人の悩みや困りごと」の情報を自分の中に貯め、その上で「自分は誰の力になりたいだろうか」や「誰の笑顔をつくりたいだろうか」と考えてみる。そしてその人たちの顔を思い浮かべながら具体的な活動を始めてみる。どこかの誰かではなく、目の前にありありと顔が浮かぶ1人のために動いてみると、活動が始めやすくなると思います。

仲間を見つけるためのヒント

大木:新しく何かを始める時はやっぱり緊張もするし怖いですけど、本当に簡単なできて当たり前ってことから始めるといいと思います。僕も怖くなったら、「こんなことをやるなんて、俺って馬鹿だよなぁ」と自分に言い訳しながら始めることも多いです。

1人でやることが怖かったら、仲間を見つけることも必要です。仲間を見つけるためには、自分のやりたいことを、ペライチでいいから、紙にまとめることです。そういうノウハウもこの『まずは小さくはじめてみる』という本の中に書いておりますので、もしよろしかったら手に取っていただけるとうれしいです。

各地で開催している「企画書講座」。もしご興味がございましたら、お声がけください。現在は企業向けの人材育成や企画づくりのご支援も行っています。今日は「副業3.0」で小さく始めることがテーマですけれども、私の体験談や本に書いてあることを中心に、いろいろお話ししました。

私のお話は以上になります。ありがとうございました。

「人に見せてみる」のも大事な一歩

島崎由真氏(以下、島崎):小さく始めることに対しての、大きな思いを受け取りましたね。ありがとうございました。(これまで見てきた中で)「小さく始めた大賞」じゃないですけど、印象に残ってる人はいらっしゃいますか?

大木:自分の考えてることをペライチでまとめるみたいな企画書講座をやっているんですが、企画書にまとめるのも小さいながらも大きな一歩だと思います。「そこから何か始めました」とか「この紙を人に見せて話したら興味を持ってくれたんです」といった声がけっこう多いですね。

島崎:確かに。人に見せてみるのも大事な一歩ですよね。

大木:自分の考えてることを人に話すのはやっぱり怖いですし、話しているうちに支離滅裂になっちゃうこともけっこうあると思うんですけど。企画書講座の中では、自分の考えていることを何度も(話します)。なんでそれをやりたいのかとか、具体的にどういうことをしたいのか、人に話すような対話型で進めるんですね。そうすると、自分がやってみたいことを話し慣れていくんです。

島崎:ありがとうございます。起業家の方たちも、プロダクトをつくる前にとにかくピッチを繰り返されますよね。

大木:そうですよね。起業に関しても事業計画とかをちゃんとつくるのが大切だと思います。でも、やってみると想定外のことが次々起こるので、やりながら修正・改善みたいな感じが多いとは思いますね。

島崎:ありがとうございます。本を出されてから、今も講演や勉強会を頼まれるとおっしゃっていましたね。何かを始める時に悩まれる方が多いってことなんですかね。

大木:例えば自治体さんとか、生涯学習をやってる部署とか、NPOさんとか。コロナがあって、何もできなかった時期が長かったわけですけど、「やっぱりいろんなことが始まるといいよね」「始めるお手伝いをしたいよね」っていう方から声をかけていただくことが多いですね。

島崎:なるほど。

大木:地域にもいろんな課題がありますが、自治体任せではなくて、市民の中から解決者を生み出したい、そのきっかけにしたいみたいな考えもあるんでしょうね。

「特にやりたいことはない」という人が変わるきっかけ

島崎:なるほど、やっぱり内に秘めていても表に出す機会がなくて止まってしまったり。そこからある種雪だるま式に大きくなっていく可能性もあると思うんですけれども、最初の一歩を踏み出してもらう機会や場をつくっていくところが大切なんですね。

大木:はい。「自分は特にやりたいことはないです」「できることなんてないです」という方でも、他の方々のやりたいことを聞くと、「あ、そういうレベルだったら私にもできるかも」と、けっこう刺激や参考になるみたいです。

私だけが話をするわけではなくて、いろんな方々の話を聞きながら学び合う場づくりをすることが多いので、それをおもしろがっていただけますね。

島崎:確かに。身近な人がこれをやっていて、「あ、実は自分もやってみたいことがあったな」みたいなものに気づくことってありますよね。私もふだん、「外に越境しましょう」という研修の営業をしてるんですけれども、こういうプログラムをやった時に「そもそも手が挙がらないんじゃないか」みたいな不安を人事の方が持たれたりするんです。

でもお話ししている中で、「実際そういうことを自発的にやってる方いますよね」みたいな話をして。「その周りの人たちも、刺激を受けてやられるようになるんじゃないですか」「そもそもそういう人に社内でスポットを当てて見せてますか」みたいな話をしていくと……。

「そこまではやってませんでした」「○○さんだから特別でしょう、と思われて止まってました」とか。その意欲がある人や実際に動いてる人と、そこまでいけてない人たちや悶々としてる人たちを、いかにつなげていくか。そこのつなぎのポイントや場をつくっていくのが大事なんだなって、今大木さんのお話をうかがっていて感じました。

身近な人の成功が周囲に与える影響

大木:みんな自分と同じように会社の仕事しかしていないのかと思いきや、「実は同じ会社の中にこんなことやってる人がいるのか」とかね。

島崎:そうですね。

大木:「こんな肩書きを持ってるのかぁ」とか「実は本を出してるのか」みたいなことが見つかると、ちょっとショックを受けたり「負けてられない」みたいな気持ちが生まれてくる。「ここまでやっていいのかぁ」という気づきや、「何かするべきなのかな」って思いますよね。

島崎:そうですよね。よく言われるのが、自己効力感の中の4つの構成要素の1つに「代理体験」というものがあります。まさに身近な誰かが成功していたりチャレンジしている様子を見た時に、「自分もできるかもしれない」と思う。なので、身近な人の成功は、周りの人の自己効力感に働きかける要素があるってことらしいです。

まさに大木さんがやられている、「実はこんなことをやりたいと思ってる」というのを共有していくだけでも、「自分もそれをやりたいと思ってた」とか「自分もそういうことを思いつくかもしれない」みたいな。

あるいは、「それを助けることからだったらできるかも」というのも、まさに自己効力感が働いている証拠だなって思います。なので取り組みとしてすごく意義があるなぁと思って聞いていました。

大木:最初は自分1人だとやっぱり踏み出しにくいですよね。

島崎:そうですよね。

大木:だから背中を押してくれるような方や、島崎さんみたいに事例をたくさん持ってらっしゃったり、つなぎ役になるアドバイザーみたいな方が必要な気がしています。

島崎:ありがとうございます。実際の事例を探そうと思ったら、今いくらでもある状況じゃないですか。それこそけっこうおもしろい取り組みをされてる自治体も多いなと思ってるんですけれども。

一方で、すごく消極的というか、「いや、○○さんだからできてるんですよね」と二の足を踏んでらっしゃるようなところも多かったりすると思うんですが。そこをかき混ぜる要素がすごく大事なのかなって思っています。

ある中小企業で若手社員が発案した「剣」をつくるプロジェクト

大木:そうですね。さっきもちょっとお話ししましたけど、企業の中や個人を対象に場づくりやきっかけづくりをやってたんですけど。今は地方の中小企業さんの中に入り、社員さんと一緒に話をしたりチームをつくったりしながら新しいプロジェクトづくりをしています。一部部活のような感じになってる会社もあるんですけど、やっぱり新たな動きが始まるケースがありますよね。

会社の仕事しかやらせてもらえなかったし、それをフルでやるのが当たり前だと思ってたけど、社長さんのご意向でプロジェクトづくりをすることになった。同じことばかりやってても、もしかすると未来はないかもしれないので。(企業さんからは)チャレンジしないといけないし、(社員の)モチベーションやエンゲージメントも高めたいみたいなご要望をいただいています。

社員のみなさんの「実はこれをやってみたかった」という話を引き出しながら、できるところからチームをつくって形にする。これがけっこうおもしろくて、そういう場づくりもしています。中小企業さんの中でも、そういう動きはあってもいいよなって思いますね。

島崎:具体的にどんなプロジェクトが出てきたりするんですか。

大木:例えば金属の部品をつくっている製造業の会社さんでは、自動車の部品や大型の工作機械の部品をつくってます。大手の会社さんから依頼をされて、そのとおりに図面をつくるんです。言われたことをつくって納品していたんですが、「自分たちでつくりたいものを考えてデザインして、プロジェクトをつくって形にすることをやらせたい」と社長がおっしゃいました。

社員さんに、「何かつくってみたいものはありますか」というのを聞きながら、時計や道具箱をつくってみたり。最近は「剣をつくってみよう」って話が生まれています。

島崎:剣!

大木:ある漫画に出てくる印象的な剣があるんですけど、それを参考にしながら企業の技術を生かして再現を試みるような若手社員中心のプロジェクトも進んでいます。

島崎:そうなんですか。おもしろいですね。

大木:この作品が完成したら、学生などが多く来場するイベントで展示をする予定です。そして若い人材に会社のアピールをしたいと考えています。そういうことを新規事業や人材採用につなげたいって会社さんもありますね。

相手の「小さいチャレンジ」を引き出すための言葉

島崎:若手が「剣をつくりたい」と言ってつくらせる会社って、それだけでも「ちょっと行ってみようかな」みたいな感じになりそうですよね。

では、最後に1つだけおうかがいしたいんですけど。みなさんの小さいチャレンジを引き出そうと思うと、言いやすい環境をいかにつくるかが大事だと思います。大木さんが場づくりの中で大切にされてる要素があれば、1つおうかがいできますか。

大木:私は本当に場づくりをしたことがないし、講師をやったこともないし、人前で話すと緊張して本当にプレゼンとか大の苦手でした。でも、「こんな僕でも一歩踏み出しました」みたいな話は、少しハードルが下がっていいのかなって気はしますかね。

島崎:なるほど。

大木:自分の失敗談とか弱みをできるだけしっかり伝えながら、ハードルを低くすることはちょっと意識しています。僕はしくじりの数としくじりの度合いでは負けない自信があります。

島崎:(笑)。いいですね。これから真似させていただこうと思います。ありがとうございました。

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