アウディの最新EVは5台のコンピューター搭載? 「Q6 e-tron」にスペインで乗った!

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2024年07月02日 07:50  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
アウディ最新の電気自動車(EV)「Q6 e-tron」にスペインで乗った。この新型EV、アウディの既存モデルである「Q4 e-tron」「Q8 e-tron」と比べるとデジタル化の進み具合がはなはだしい。なんと5台のコンピューターを搭載し、全体を制御しているというのだ。はたして電脳アウディの乗り味は?


5台のコンピューターが制御するE3 1.2を搭載



Q6 e-tronが搭載するコンピューターシステムは「E3 1.2」仕様と呼ばれている。「E3」は「エンドツーエンドの電子アーキテクチャー」(end to end electronic architecture)の意味。「1.2」はそのバージョンを表す。



車両の全ての機能は、5台の高性能コンピューター(HPC:ハイパフォーマンス・コンピューティングプラットフォーム)に割り当てられている。例えば「HPC1」は駆動システム、サスペンション、前後方向と横方向のダイナミクス、「HPC2」はドライバーアシスタンスシステム、「HPC3」はインフォテインメント機能、「HPC4」はライト、エアコン、シート調整など、「HPC5」は車両と外部の接続に使用されるといった具合だ。当然、納車後のアップデートは「OTA」(over the air、つまりはインターネット経由)で対応可能。クルマのコンピューター化の最先端といえる仕組みだ。


ポルシェと共同開発したPPEプラットフォームの完成度は?



プラットフォームにはポルシェと共同開発した全く新しい「PPE」(プレミアムプラットフォームエレクトリック)を採用。800Vアーキテクチャーで稼働するリチウムイオンバッテリーの容量は100kWh(実質94.9kWh)、重量は590kgだ。急速充電により、10分の充電で255kmの走行距離を充電できるという。21分も充電すれば残量10%のバッテリーを80%まで回復させられるそうだ。


次にパワートレインを見ていこう。フロントアクスルは、最高出力140kW/最大トルク275Nmを発生する重量87.5kgのASM(非同期機)モーターを採用。リアアクスルには、ヘアピンコイルを使用する重量118.5kg、280kW/580NmのPSM(永久磁石同期電動機)モーターを搭載する。レーシングカーで使用するようなドライサンプ式の新冷却システムなどを採用することで、コンパクト化と軽量化を果たしたという。



試乗したのはシステム出力285kW(387PS)、0-100km/h加速5.9秒、最高速度210km/h、航続距離625kmの「Q6 e-tron クワトロ」と、出力380kW(517PS)で同4.3秒、230km/h、600kmの高性能版「SQ6 e-tron」だ。


コンピューター制御で走りは変わるのか



最初に乗った白いボディのQ6 e-tron クワトロは、EVらしい静粛性と乗り心地の良さが印象的だった。高性能なデイトナグレイのSQ6 e-tronは、ダイナミックモードを選択すると車高がぐっと下がり、まるでスポーツモデルのe-tron GTやRS e-tronを駆っているような感覚が味わえた。


試乗後、シャシー担当者にその乗り心地の良さの秘密を聞いてみると、決して足回りをソフトにしたというわけではないとのこと。サブフレームにボルトで直接固定した新しいプログレッシブステアリングや新しい5リンクフロントサスといった機械部分だけでなく、エアサス、ダンパー、操舵量が少なく正確なステアリング、リア寄りの駆動配分、95%の電気を回生するブレーキフィーリングなど、その多くがコンピューターでパワフルに制御されていることから、そのように感じられたのだろうとのことだった。

付け加えると、11.9インチと14.5インチのディスプレイを曲面で組み合わせた運転席側のMMIパノラマディスプレイと、助手席側の10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイがとても見やすく、情報をうまく整理してくれているところもドライブの安心感につながった感がある。例えば助手席側のモニターにも大画面でナビが表示されるので、慣れない欧州のラウンドアバウトを通過する際には、前もってドライバーに「次は何番めの出口に向かえばよいか」を告げることができて、とても便利だった(もちろん、直前に音声でのインフォメーションがあるのだが)。こちらも、「デジタルステージ」と呼ばれるハイパワーなコンピューターによる恩恵だ。

ライトやゲームもコンピューター制御



アウディお得意のライティングシステムである「アクティブデジタルライトシグニチャー」も、E3 1.2によって進化している。前後8種類ものライトパターンで表示することが可能になったのだ。


フロントのデイタイムランニングライトは70個のLEDユニット、リアは10ミリ/秒で生成できる360セグメントの有機LEDパネルで構成されている。MMIでの操作を担当者に教わりながらやってみると、変更方法は至極簡単。今回のQ6は停車時に三角停止板のようなデザインで光るパターンが組み込まれていて、ライトによって車外へ情報を伝える将来の「Car to X」をも見据えた仕組みであるとの説明だ。



同じ担当者から「こっちも試してみないか」と誘われたのが、AR(拡張現実)ヘッドアップディプレイに表示される「スペースシップ」ゲーム。こちらは充電時間を楽しく過ごすためのサードパーティ製ゲームで、パドルシフトを使って行う方法は新しく、時間はあっという間に過ぎていった。


EVの世界にライバルは多いけれど



アウディによると、Q6のライバルとして、欧州勢ではBMW「iX3」とジャガー「I-PACE」、米国勢ではテスラ「モデルY」とフォード「Mach-E」、中国勢ではNIO「EL6」「EC6」を想定しているとのこと。その中国に関しては、同国向けオリジナルのQ6L e-tronを開発して自社工場で生産し、2025年には投入する方針だという。我々と別日の取材では中国から大挙22名が訪れた(日本からは4人)そう。かの国では、まだまだEVへの関心度が高いようだ。


Q6 e-tronのターゲットユーザーはカップルや若い家族、そして、日常的な使い勝手を求めつつも妥協なくテクノロジーとパフォーマンスの双方を求める人たちだという。価格は1,500万円〜2,000万円の間というところに落ち着きそう。現在は米国市場向けの発売準備を進めており、年内にはその他の海外市場で導入を始める予定だ。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
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