残された家族に迷惑をかけないためのデジタル遺品終活ガイド(後編) これで安心! 整理法まとめ

0

2024年07月02日 18:01  BCN+R

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

BCN+R

ジャンル別に具体的な整理法を考えてみた
 前編では、「今は見られたくはないけれど、万が一の時、渡したいものは渡したい」というやっかいな遺品、デジタル遺品となるサービス・製品をピックアップした。続きとなる本記事では、ジャンル別に具体的な整理法を考えてみる。

その他の画像はこちら

※前編から読む

https://www.bcnretail.com/news/detail/20240628_435322.html

●SNS、スマホ……ジャンル別デジタル遺品整理法

 デジタル遺品は、前編で挙げたもの以外にもいろいろあるが、まずは「数が多すぎてこのまま遺されたらこまる」と思われるデジタル写真と、「カオス状態」のスマートフォン(スマホ)の中身、「お金が絡むのでしっかりと引き継ぎたい」銀行や証券口座などを、うまく遺族に引き渡せるようにしておきたい。

 ということで、今できることをまとめてみた。

デジタル写真・動画

 まずは、デジタル写真・動画類だ。基本方針は、絶対に家族に残したい写真・動画を、一か所にまとめる、だ。いまや、故人が所有しているデジタル写真は数万枚レベルだろう。そこから、不要なものを削除する、というのはたぶん無理だ。

なので、「ああ、これは遺しておいてあげたいなあ」という写真を、日々すこしずつセレクトして、どこか一か所にまとておくことをやっておきたい。その「一か所」をどこにするかだが、とりあえずスマホの写真アプリに、「遺品」アルバムを作って、そこにためていこう。アルバムを共有アルバムに設定しておけば、交通事故などで万が一、自分のスマホが破壊された時でも、写真を家族に遺すことができる。

 膨大な量の写真からどうやって写真を選ぶかだが、ひとつは「撮影地」で抽出するのがおススメだ。旅行やドライブなどで訪れた場所で撮影した写真は、思い出として遺しておきたいものが多いだろう。

 もうひとつは「ビープル」で抽出した写真。特定の人物だけが抽出されるので、自分と家族が写っている写真だけを探せる。

 自分が写っている写真は、「遺影」として必要になることもあるので、自分のお気に入りの写真をいくつか入れておくことも重要だ。

 iPhoneの「写真」アプリ内の写真が整理できたら、Googleフォトなどのクラウドサービスに保存している写真からもセレクトしておこう。ちなみにGoogleフォトの場合、「思い出」という強力な写真抽出機能がある。撮影地情報をもとに、自動的に「○○への旅行」というタイトルで写真を抽出してくれるのだ。

 この中から、これは!という写真を選んだら、クラウドから写真アプリに保存しよう。こうやって保存した写真は、その写真の撮影日で保存されるので、カメラロール内で日付を戻って探すか、撮影地で探すかしないと見つけられないので、写真アルバムに保存したらすぐに「遺品」アルバムに保存しておこう。

 とはいえ、これから死ぬまで、写真や動画はさらに増え続けるだろう。だから、すべてを遺すことはあきらめて、本当に遺したいものだけを、大切にセレクトして保管しておこう。

 次は、スマホの中身だ。スマホのデータとして、遺したい、あるいは遺したくないものは、記録系のものだ。そのうち、写真については、前述した通り。では、残りの記録系データでどうしても遺したいものはあるだろうか?

 スケジュール? メールのやり取り? 日記?

 これらは、どちらかというと遺してはおきたくないものかもしれない。遺したいスマホデータは、たぶん連絡先(の一部)ではないだろうか?

 昔であれば、電話帳や住所録は専用のノートに記録していた。それが徐々に年賀状ソフトのデータになっていった。年賀状ソフトの住所録はCSVデータに書き出して、表計算ソフトのデータとして保管しておくこともできたが、いまや年賀状を出さない人も増えてきたので、友人・知人・親戚の住所や電話番号はスマホの中にしかない、ということも多い。

 iPhone(iOS)の場合、「連絡先」アプリが標準だが、このアプリがけっこう使いにくい。スマホ歴が長いと、連絡先内には不要なデータもたくさんあると思うが、それを整理するのも一苦労だ。なので、整理・管理しやすい表計算ソフトに出力して、必要な連絡先だけを抽出して、プリントアウトしておくと良いだろう。

 iPhoneの「連絡先」アプリから表計算ソフトにデータを移行(エクスポート)するのは、ちょっとだけ手間がかかる。まず、「すべての連絡先」を長押しして「書き出す」を選択し、ファイルやメールへ書き出す。

これで書き出されたデータは「vcf」という形式で、このままでは表計算ソフトに読み込めない。そこで、vcfをCSVに変換する必要がある。

 vcfをCSVに変換できるツールはいろいろあるが、無料で使え、かつサービスとして安心度の高いGoogleの「連絡先」を使うのがよいだろう。

 Google Cromeのトップページの右上の「アプリ一覧」の中にある「連絡先」を選び、インポートでiPhoneの連絡先アプリから書き出したvcfデータ(vCardファイル)を読み込ませる。

 そのあと、エクスポート機能で「Google CSV」を選んでエクスポートすればOKだ。

 あとは、Excelなり、Googleスプレッドシートなりに読み込ませれば、削除も抽出も容易にできるようになる。写真と連絡先が遺せれば、あとのスマホの中身は見せなくてもよいものばかりだろうから、万が一の時にだけ開封するという約束で、封書の中にスマホのパスコードと「自分が死亡したら、中身は見ずに初期化してほしい、電子マネーについては別紙を参照のこと」と書いた書面をいれておこう。

 さて、最後はお金に係るサービスのID・アカウントとパスワードだ。

 最低限、用意しておきたいのは

・銀行

・証券口座

・クレジットカード/入金済みのプリペイドカード

・事前チャージ型の電子マネー・コード決済

・サブスクリプションサービス

 この五つ。なかでも、銀行と証券口座の残高は相続財産でもあるので、しっかりと引き渡せるようにしたい(電子マネーや共通ポイントなどはサービスごとに本人死去による相続に関する規約が異なる)。そこで、下記をリストアップして、印刷しておくのといだろう。

・銀行名と支店名、口座番号

・証券会社名と証券口座番号

・それぞれのログインIDとパスワードなどログイン必要なものすべて

 レガシーな銀行や証券会社であれば、通帳や登録した印鑑のありかも書いておこう。

 クレジットカードは、カードを見れば、カード番号と発行会社が分かるので連絡を取りやすいが、最近増えているナンバーレス・カードレスタイプのクレジットカードを利用している人は、銀行と同じく、利用しているクレジット会社名、カード番号を印刷しておこう。

 事前チャージ型の電子マネー・コード決済はサービスごとに準備が変わってくるので、使っているサービスにあわせて、管理アプリのログインIDとパスワード、残高の処理の方法などを一覧表にまとめておこう。

 サブスクリプションサービスは

・サブスクリプションサービスの種類とログインID・パスワード

・解約の方法

 を一覧表にしておこう。

 これらの情報は、表計算ソフトでリストの形にして、印刷したものを前述の『万が一の時に開封する封書』に同封しておくのがよいだろう。

 とりあえず、これだけのことをまとめておけば、遺される家族に思いを残すことなくあの世に旅立てる……のかなあと思う筆者だった。実際には、デジタル遺品だけでなくて、葬儀など、アナログな手続きも重要なので、そちらも一緒にまとめておくと良いと思う。

 この原稿を書いていて、「けっこうやることが多いなあ」と気持ちが重くなってきた。いっぺんにやるのはしんどいので、毎日少しずつ、整理していくことをおススメする。

西脇 功

3Dデザイナーズスクール(https://3dschool.jp/)学長。製薬会社勤務を経て、1987年にApple社のMacintoshに出会いコンピュータ業界へと転進。IT系企業数社でコンテンツマーケティング、広報・宣伝のプロとして活動。製品導入事例の執筆、オウンドメディアのWebサイト立ち上げからコンテンツ作成までを一人で担当。2020年独立し、合同会社「天使の時間」を設立。3DCGソフト活用のためのオンラインスクール運営や、Webメディアへの記事執筆を行っている。

    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定