ゴルフブーム終息は過剰表現 ジュンのゴルフ事業が堅調を維持する理由

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2024年07月02日 19:31  Fashionsnap.com

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ジュンの展示会の様子

Image by: ジュン
 コロナ禍で一気に加速したゴルフブーム。一気に市場が広がったことで、キャンプとともに「コロナバブル」とも称されたが、近年の“コロナバブル終焉”に伴い、「ゴルフブームは下火になった」といった指摘も少なくない。しかし、ゴルフブランドを複数運営するジュングループはそれを否定する。これまでは外苑前の本社で同グループの展示会の1コンテンツとして新作を発表していたが、今年6月の展示会は本社近隣のゴルフラウンジに会場を移し、初めてゴルフブランドに特化して開催。ゴルフカテゴリーに対する積極展開の姿勢を示した。今回は、ジュンの展示会からゴルフ市場の現在地を追った。

市場規模で見るゴルフの現在
 矢野経済研究所の国内ゴルフ用品(メーカー売上高ベース、2023年10月発表)に関する調査によると、2022年の市場規模は前年比12.0%増の3092億円を記録。3000億円の大台突破は21年ぶりだという。
 特に金額の伸び率が高かったのはウェアやキャディバッグ、パターなどで、ウェアは2021年、2022年と続けて2桁増で推移。同研究所は、2020年以降新たにゴルフを始めたゴルフ未経験者、および1年以上プレーしていなかった“休眠復活ゴルファー”は計約110万人(拡大推計値)いると推測し、これらの層が市場を支えたと分析している。
 しかし、2023年の後半以降は数量の伸び悩みなど課題が顕在化し、2023年の市場規模の予測値では、いずれのカテゴリーにおいても前年からほぼ横ばい、もしくは微増と予想。「コロナ禍をきっかけにゴルフを始めたが、既にやめてしまった(2023年7月時点)」という“早期リタイアゴルファー“が約2割程度存在することもわかった。ゴルフはプレーをするための道具を一式揃える必要があり、ゴルフ場に行くまでの費用もかかる。経済的な理由から続かない人も多いようだ。
 ゴルフカテゴリーが好調だった企業は業績を落とし、キャンプブームで注目された企業も低迷するなど、メディアの報道でも「コロナバブル終焉」の見出しが踊るようになった。
「コロナ前よりも拡大している」 市場を支える外国人観光客も
 ゴルフブームは本当に終わってしまったのか。ジュン常務取締役上級執行役員の太田浩司氏は、「一時の熱狂的な雰囲気はなくなったが、2019年以前から比べれば、市場としては伸びている。新規参入および休眠復活ゴルファーの中にもルーティーンとして定着した人たちはいる」とし、悲観的には捉えておらず、業績としても悪化はしていないという。
 消費を支えるのは日本人だけではない。円安を“追い風”にインバウンドが盛り上がる中、ゴルフを目的に日本を旅行する外国人観光客も多いという。「日本は、1位のアメリカ、2位でゴルフ発祥の地でもあるイギリスに次いでゴルフ場が多く、富士山が見えるコースもあったりする。日本を満喫しながら、自分の好きなゴルフができる。観光の一環としてゴルフを楽しまれる観光客がいま増えている」(太田氏)。その足でゴルフウェアを購入するケースも多く、ジュンが展開する「ハイプゴルフ(HYPEGOLF)」と「サタデーズ ニューヨークシティ(Saturdays NYC)」ではまさにその恩恵を受けている。
 たとえば、「ハイプビースト(HYPEBEAST)」との協業から生まれたハイプゴルフは、メディアの認知度の高さに加えて、直営店が日本にしかないことから、代官山の店舗は賑わっている。

 サタデーズ ニューヨークシティはサーフカルチャーからスタートしたブランドだが、サーファーのゴルフ人口は意外と多いという。「“SURF&TURF”という言葉にもあるように、サーファーのゴルフ人口は意外と多い。誰と戦わず、自然や自身との内面との対話がベースにあるのが共通点」(太田氏)。同ブランドのゴルフウェアは日本企画の商品という点も支持につながっている。

 派手な配色が多いゴルフウェアの中で、ハイプゴルフとサタデーズ ニューヨークシティが展開するシックなゴルフウェアとしての需要も強みとなっている。日本ブランドのものづくりへの評価の高さもあり、両ブランドが構える代官山の店舗はいずれも平日の売上の半分が外国人観光客で占めるケースもあるという。「ジュン アンド ロペ(JUN&ROPÉ)」も、ハイプゴルフとサタデーズ ニューヨークシティと客層は異なるものの、国内で活躍するトップアスリートと契約するなど、認知の高さから支持も厚い。

ゴルフウェア市場で生き残るために必要なのは「多様性」
 コロナバブルの時期には新しいゴルフブランドが数多く誕生したが、その後業績を大きく落としたり、ブランド自体が終了するケースも散見された。いま支持されるブランドとは何か。太田氏は「多様性」を強調する。「弊社のゴルフブランドは、それぞれ違う形でお客様にアプローチすることができている。多様性の中でどのようにお客様に接していくかが、今後より求められる。その戦略がうまくいくブランドは生き残っていく」。自社でゴルフコース「ジュンクラシックカントリークラブ」を運営していることもあり、ゴルフのカルチャーを正しく理解していること、ファッション軸のゴルフウェアを提案できること、そして現場のニーズを吸い上げられる点も強みとしている。
 今回の展示会はそのアプローチの一環として、初めて他のグループブランドと展示会場を分けた。同社はヴィジョンに「FFF(=Fashion/Food/Fitness)」を掲げており、これらをベースに新しいカルチャーを提案している。展示会も同様の考えから、同じ会場で新作を発表してきたが、客層の来場目的にズレを感じたことから、ゴルフ事業の姿勢を示すためにも、通常は入ることができない会員制のゴルフラウンジを貸し切り、取引先のブランドのシャフトを用意して実際に試打できるようにするなど、エンターテインメント性も追求した。「モノを売るということだけではなく、“ゴルフって楽しい”“いろんなカルチャーがある”という側面も知ってもらいたい」(太田氏)。
 ジュン アンド ロペの2024年秋冬シーズンでは、新ライン「ノワール(NOIR)」を新たにローンチ。これまでのロゴや柄といった目を引くアイコニックなデザインからは一転、新ラインではモノトーンをベースに上質でエレガントかつベーシックなウェアを展開する。フラミンゴのロゴもブラックで統一した。価格帯は税込9350〜6万500円。7月19日に同社のオンラインストア「ジャドール ジュン オンライン(J'aDoRe JUN ONLINE)」で先行予約をスタートし、8月上旬から順次販売を開始する。

サタデーズ ニューヨークシティは“逆輸入”でゴルフウェアを展開
 サタデーズ ニューヨークシティでは今秋、ニューヨークのクロスビーストリートにある店舗でゴルフウェアの販売を開始。同ブランドのゴルフウェアは日本生まれだが、ブランド自体はアメリカ発祥であるため、“逆輸入”的なかたちで展開が始まる。また、オーストラリアにある2店舗でも販売できるように準備を進めるなど、“日本発”のゴルフウェアの訴求を強化する。グレーターチャイナなどのアジア圏での展開を視野に入れるという。
 「ツーリストの売り上げを日本で得ることも大事だが、ずっと日本の中で閉じこもっていても仕方がない」と太田氏。インバウンドでの支持が広まる中、日本のゴルフブランドが長く愛されるためには海外進出は欠かせないようだ。ジュンのゴルフ事業としても「多様性」を武器に、海外へのアプローチを進めていく。
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