晴海フラッグ「居住実態なしが3割以上」の報道、SNSでは「住宅ローンで購入していたらどうなる?」の声

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2024年07月03日 09:40  弁護士ドットコム

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2021年に開催された東京五輪の選手村として利用され、その後マンションとして改修された「晴海フラッグ」(東京都中央区)。発売されると、投資目的などで人気となり、注目されました。


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しかし、NHKが6月6日に報じたところによると、分譲マンション2690戸のうち、3割以上の部屋に居住実態がないといいます。法人が投資目的で取得したケースが多いといい、早くも賃貸に出されたり、投資目的の転売をされたりしているようです。



この報道を受け、SNSでは「住宅ローンで購入したのに住んでない人がいるということ?」「住宅ローンで購入しているのに賃貸に出していたら、ペナルティはあるの?」といった疑問の声が多く上がり、住宅ローンの仕組みが話題となりました。



一般的に、住宅ローンで購入したマンションに居住しなかった場合は、どうなるのでしょうか。ペナルティはあるのでしょうか。不動産問題に詳しい鮫川誠司弁護士に聞きました。



●住宅ローンで購入したら居住しないとダメな理由

——そもそも、住宅ローンを組んで購入したマンションには居住しなければならないのでしょうか。



海外在住の方が日本の不動産を投資目的で購入するような場合には即金での取引も珍しくないようですが、そういった例を別にすれば、日本では、住宅を購入する場合、住宅ローンを利用することが一般的だと思います。



現在、住宅ローン商品の中心をなしているのは、「フラット35」を初めとするフラットシリーズです。これは、民間金融機関が住宅ローンの貸付けを行い、独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」)がその貸付債権の証券化を支援する、という連携と役割分担の下で誕生した住宅ローン商品です。



「フラット35」という名称は、固定金利(=フラット)で、かつ、返済期間が原則として15年以上35年以下(=最長35年)という、長期・固定金利というローン商品の魅力を分かりやすく表現しているといえます。



そして、この「フラット35」をはじめとする住宅ローン商品は、資金使途を「自己又はその親族の居住の用に供するための住宅の建設、取得等のための貸付け」であることが要件とされています。これは、「フラット35」をはじめとする住宅ローンは、他の不動産投資ローンや使途を定めないフリーローン等と比較して、その商品設計や貸付条件が非常に優遇された内容となっていることの裏返しの関係です。



そのため、「フラット35」を初めとする住宅ローンを利用して不動産を取得したにもかかわらず、第三者に賃貸する目的の投資用物件に用途を転換することは融資条件に違反することになります。



●もし賃貸に出しているのがバレたら「一括返済」も…

——万が一、賃貸に出していることが露見した場合、どうなるのでしょうか。



機構では、「フラット35」を初めとする融資を受けた住宅宛てに、定期的に、転送不要の郵便をもって融資残高証明書を送付するといった方法により、申込者またはその親族が実際に居住している実態があるかを確認しているようです。そのため、長期間空室のままになっていたり、第三者に賃貸していたりといった場合には、早晩、機構にその事実が露見するだろうと思われます。



そうした場合、資金使途として認められているマイホーム以外の目的での利用が明らかになれば、機構は融資申込者に対し、期限の利益を喪失させて融資残額を一括して返済するよう請求してきます(全額繰上償還請求)。



以前、実際に、「フラット35」が不動産投資ローンやフリーローンよりも有利な商品特性を有していることから、投資用物件の取得のための資金であるのに、これを偽って「フラット35」を悪用していたケースが問題となりました。今でも、関係書類の偽造等を行って「フラット35」を申し込むことを持ち掛けてくる不動産業者や投資コンサルタントがいないとも限りません。



しかし、初めから、第三者に賃貸する目的の投資物件を取得するための資金借入れであるにもかかわらず、そのことを秘して、「フラット35」を初めとする住宅ローンの申し込みをすることは、融資を実行する金融機関に対する詐欺罪(刑法246条)が成立すると考えられます。



それに加えて、融資申込みのために必要となる偽造書類の作成に使用されることを認識しながら関係書類を提供すれば、私文書偽造・同行使罪(同159・161条)も問題になると考えられます。



●どうしても住み続けられない事情が発生したら?

——たとえば親の介護で実家に戻ったり、遠方への転勤で住み続けられなくなる事情が発生し、一時的に賃貸に出したいという場合は居住しなくても許されるのでしょうか。



前述のとおり、「フラット35」を初めとする住宅ローンは、自己又はその親族の居住の用に供するための住宅の建設、取得等のための貸付けですから、事情変更があったにせよ、途中から、賃貸の用に供することはできず、仮に、賃貸の用に供するのであれば、不動産投資ローン等に借り換えすることになるのが原則です。



しかし、転勤は、自らの意思によるものでないことが多いでしょうし、しかも、数年後にはまた異動になることが見込まれている場合がほとんどでしょう。このような短い期間さえ、賃貸できないとすると、自宅の住宅ローンの返済や固定資産税の負担と、転勤先の賃料の負担とで住居費を二重に負担することになって酷です。



そこで、転勤の間に限った短期間の賃貸(このような賃貸のことをリロケーションということもあります)が認められないかが問題となります。



この点、機構では、「フラット35」を初めとする住宅ローンについて、転勤等の事情がなくなったときは元の自宅に居住すること、及び融資を実行した金融機関において、あらかじめ、一定の手続きをすることを条件に、例外的に、リロケーション物件の賃貸を認めています。それに対して、「フラット」シリーズ以外の民間の金融機関の住宅ローンの場合には、各金融機関との間の契約や金融機関内部の事務取扱によって対応が変わってきますので、各金融機関に相談されるとよいでしょう。



いずれの場合も、リロケーション物件として賃貸する前に、一定の手続きをとった上で行わないと、投資用物件への用途転換とみなされて、前述の全額繰上償還請求を受けることになりかねませんから、その点には、十分注意が必要です。




【取材協力弁護士】
鮫川 誠司(さめかわ・せいじ)弁護士
司法書士だった経験から、不動産や会社などの登記に関する法令及び実務に精通しています。 また大型の不動産開発に関する事件から近隣紛争まで、不動産に関わる様々なトラブルの解決に、熱意をもって取り組んでいます。
事務所名:神谷町セントラル法律事務所
事務所URL:http://k-central.net/index.html


このニュースに関するつぶやき

  • 改築の意味でリフォームというのは和製英語で外人には通じないが、リロケーションも和製っぽいなw 本来は単に「移転」の意味で、短期賃貸は無関係。
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