「Zenfone 11 Ultra」速攻レビュー カメラから新AI機能、パフォーマンスまでを徹底検証

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2024年07月03日 11:31  ITmedia Mobile

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ASUS製「Zenfone 11 Ultra」

 ASUSからSIMフリースマホの新モデル「Zenfone 11 Ultra」が7月5日に発売される。今回は従来モデルとは異なり、大画面ハイエンドモデルになったのが特徴だ。価格は12GB+256GBモデルが13万9800円(税込み、以下同)、16GB+512GBモデルが15万9800円となる。事前に試すことができたので、早速その魅力と性能について見ていこう。


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●Zenfoneの高性能カメラとROGのゲーム環境を合わせた新ハイエンド


 今回のZenfone 11 Ultraは6.78型の有機ELディスプレイと、Qualcomm製の最新ハイエンドチップSnapdragon 8 Gen 3を搭載した大型モデルとなった。


 同社のスマホをよく知る人なら、形状や仕様からゲーミングスマホの「ROG Phone 8」との兄弟分であると気付くだろう。だが、普段使いに適したデザインのZenfone 11 Ultraと、ゲーミングスマホらしいデザインと外付けファンなどの拡張性を備えたROG Phone 8でうまくすみ分けられている。


 Zenfone 11 Ultraの魅力は“普段使いしやすいデザインと手ブレに強い高画質カメラ”という点までは他社ハイエンドスマホと同じだ。ここへさらに“高画質ゲームを快適に楽しめるゲーミングスマホ並みの高速処理と冷却性能”という新たな魅力が加わった。


 さらに話題のローカルAIへの対応やIP65/IP68の防水・防塵(じん)性能、おサイフケータイも備える。従来のコンパクトモデルから大きくコンセプトを変えることになったが、日本で広く受け入れられる可能性を持った魅力的なモデルに仕上がった。


●大画面6.78型ハイエンドとしてはスリムで落ち着いたデザイン


 ディスプレイは6.78型フルHD+(1080×2400ピクセル)有機ELディスプレイを採用。リフレッシュレートは1〜120Hz可変で最大144Hz表示にも対応する。色域はDCI-P3 107%と広く鮮やか。ピーク輝度は2500ニトで屋外での視認性は良好だ。表面には強化ガラスとしてVictus 2 Gorilla Glassを採用する。


 背面には6軸ジンバルを搭載した5000万画素広角カメラ、光学3倍の望遠3200万画素カメラ、超広角1200万画素カメラを搭載。従来モデルと同じくFeliCaとNFCにも対応し、おサイフケータイを利用できる。背面パネルは柔らかい光沢を帯びた塗装とサラッとした質感になっている。


 本体サイズは76.8(幅)×163.8(高さ)×8.9(奥行き)mm、重量が約224gだ。大画面ハイエンドモデルとしては軽量な部類に入る。画面サイズの割には幅76.8mmとスリムなので、手が大き目の人なら片手持ちでの親指フリック文字入力も可能だ。


 デザインは派手すぎず普段使いしやすいが、カメラ部分の厚みはやはり気になる。モバイルSuicaなどをよく利用する人はケースをつけたくなる。後述するゲーミング性能と冷却を考えると、メッシュタイプのケースが欲しいところだ。


●β版だがAI翻訳や文字起こしに対応


 AI関連機能をスマホ側の処理だけで実行する、ローカルAIの機能を搭載。利用できるのは音声レコーダーの文字起こし(β版)、通話中のAI翻訳機能(β版)、ギャラリーのAI画像検索、AI壁紙生成、AIノイズキャンセリングだ。


 AI文字起こし機能(β版)は発売後のアップデートでの実装になるが、テスト機で実際に試すことができた。一通りおおむね問題なく認識できるのだが、β版ということもあり、他社サービスと比べると認識速度や音声認識の精度の面でやや劣るという印象だ。今後の製品版への搭載や、正式リリース時の改善を期待したい。 言語は英語、中国語(繁体字と簡体字)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、日本語に対応する。


 AI通話翻訳機能(β版)は、通話中に翻訳を有効にすると双方の会話内容を翻訳したものがZenfone 11 Ultraの画面に表示される。若干認識に時間かかる場合もあったが、これをスムーズに利用できれば便利になりそうだ。英語、中国語(繁体字/簡体字)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、日本語に対応する。


●光学式手ブレ補正と光学3倍ズーム対応のカメラを搭載 動画撮影は6軸ジンバルが強力


 アウトカメラは6軸ジンバルと光学手振れ補正対応の広角5000万画素カメラ(23mm相当/F1.9)など、Zenfoneシリーズの特徴を引き継いでいる。


 望遠は光学3倍で光学式手ブレ補正搭載の3200万画素カメラ(65.3mm相当/F2.4)を搭載。超広角は1200万画素カメラ(12.7mm相当/F2.2)だ。また、インカメラは 3200万画素カメラ(22mm相当/F2.05)という、画質も感度も良好なものを搭載する。


 画質はややコントラストが強めだが、全体としては極端な補正はなく、まとまった絵作りだ。夜景撮影はジンバル搭載の利点を生かしたいのか、2秒ほどの手持ちロングシャッターになる。


 動画撮影は8K24Pや4K60Pに対応。4K30P ならHDRムービー撮影も可能だ。また、被写体以外をぼかすポートレート動画撮影にも対応する。


 動画撮影では6軸ジンバルがより活躍する。近年のスマホも強力な手ブレ補正処理に対応しているが、実際には画角が狭くなる他、撮影対象の明るさが求められる。だが、6軸ジンバルはカメラを実際に動かす方式なので、強力な手ブレ補正と広角撮影や暗い場所での撮影を両立できる。


 実際のところだが、カメラを横などに振るといった動きはかなり滑らかになるが、歩きながらの撮影だと上下の揺れはやや発生する。本格的な外付けジンバル並みの性能とまではいえない。とはいえ、手持ちで昼夜問わず比較的滑らかに映像を撮れるのは大きな利点で、動画撮影の強力な武器になるのは確かだ。


●冷却構造でSnapdragon 8 Gen 3の性能を最大限引き出す


 プロセッサにはQualcomm製の最新ハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載。さらに、ゲーミングスマホROG Phone 8譲りの冷却システムとしてベイパーチャンバーや窒化ホウ素などをほぼそのまま搭載。冷却周りの違いは、外部冷却ファンの装着を想定した急速冷却コンダクターがない点ぐらいだ。


 メモリ容量とストレージ容量は購入時に選ぶ形で、12GB+256GBと16GB+512GBモデルが用意される。今回のテストは16GB+512GBモデルを用いている。


 実際のベンチマークスコアは非常に高く、AnTuTuベンチマークではハイエンドスマホの壁となっている総合スコア20万を超える値をたたき出した。日本でもSnapdragon 8 Gen 3を搭載したスマホは出ているが20万以下のモデルが多い。同等のスコアを出せるのは兄弟機種のROG Phone 8など、ゲーミングスマホクラスの冷却性能を持ったモデルぐらいだろう。


 結果、主にCPU性能を計測するGeekBench 6や3Dグラフィック性能を計測する3DMARKでも高いスコアを計測できた。Qualcommは前世代のSnapdragon 8 Gen 2と比べてSnapdragon 8 Gen 3のGPU性能が25%アップしたとしている。だが、Zenfone 11 Ultraは冷却性能が比較的高い分、一般的なSnapdragon 8 Gen 2搭載モデルから買い替えると25%以上の性能アップを体感できる場合がある。


 最近の高画質ゲームアプリはスマホに求める性能が上がってきており、それもあってスマホの買い替えを考えている人も多いだろう。このスコアの高さと、それを支える冷却性能は、普段使いのスマホでゲームに強いモデルを探している人にとってかなり魅力的だ。


●ゲーム支援機能「Game Genie」で高画質ゲームを普段から気軽に楽しめる


 ゲームプレイを支援する「Game Genie」は、ゲームプレイ時に画面上部の左右の隅から内側にスワイプすると表示される。また、「設定」→「拡張機能」→「GAME Genie」からも、動作対象となるゲームアプリリストの管理や個別の動作モード設定が可能だ。筆者の試した限り、「設定」ウィジェットなどでショートカットをホーム画面に出すことはできなかった。


 メニューからは、最高の性能を発揮する「高性能(ハイパフォーマンス)」や動作を状況によって変える「ダイナミック」などの動作モードを変えられる他、CPUやGPU利用率やフレームレートのリアルタイム情報表示、通知オフや充電モードの変更、画面録画など便利な機能を利用できる。ただし、ROG Phone 8シリーズに搭載された自動録画などの新機能は用意されていないようだ。


 Zenfone 11 Ultraでゲームをプレイした場合の利用スタイルだが、筆者の場合は「高性能(ハイパフォーマンス)」設定で無理に性能を引き出すよりも、標準的な「ダイナミック」設定でSnapdragon 8 Gen 3の処理性能に余裕を持たせつつ長時間プレイできる環境を整えるのが合っているという印象だ。


 具体的にタイトルを上げると、「原神」を「高/30fps」、そして「学園アイドルマスター」を「高/30fps」という標準設定でプレイすると、GPU利用率は50%前後にとどまり熱の発生を抑えつつ快適にプレイできた。もちろん最高画質や60fpsといった極端な設定でも「高性能(ハイパフォーマンス)」で問題なく動作する。だが、長時間動かすと熱を持つ上にバッテリーの持ちが気になってしまう。


 Zenfone 11 Ultraを普段使いのスマホとして使う場合は、性能を完全に引き出すよりも余裕を持たせて利用した方がより良い満足度を得られる。もし性能を完全に引き出したまま動かしたい場合や、画面をHDMIで外部出力し続ける用途ならROG Phone 8を選んだ方がいいだろう。


●フル充電は48分! 対応充電器で急速充電が可能


 充電は最大65WのUSB ケーブルでの充電と、最大15Wのワイヤレス充電に対応する。バッテリーは大容量5500mAhで、最新プロセッサ搭載ということもあってか省電力性能も高い。普段使いでたまにゲームを動かす程度だと、1日で半分消費するのも難しい。ゲームのヘビーユーザーでも、長時間プレイし続けないと1日で使い切るのは難しい。


 最速で充電するにはUSB PDのPPSモードに対応した65Wを供給できる充電器が必要だ。ただ、65Wは最大値なので、ある程度高出力なUSB PD充電器ならおおむね素早く充電できる。どうしても最大65Wの急速充電を利用したいなら、純正の充電器を購入するのが確実だろう。


 実際にバッテリー残量0%から最大出力65Wで充電できる製品を利用したところ、30分で75%、48分で100%まで充電できた。もともとROG Phoneシリーズで対応していた機能だが、超急速充電対応と呼んで差し支えないだろう。


 実際の利用時は「設定」→「バッテリー」の内容も確認しよう。バッテリーをいたわるための低速充電や充電スケジュールの設定などを変更できる。


 ゲーミングスマホゆずりの電力のバイパス供給設定も利用可能だ。充電器を接続したままゲームや動画視聴など長時間スマホを動かす場合に、供給電力をスマホの動作のみに利用してバッテリーへの不要な充電を避けてくれる。


●細かい仕様もチェック eSIM非対応やUSB2.0など意外な点も


 最後に、細かい機能についても見ていこう。前述の通り、ハイエンドながら3.5mmイヤフォンジャック搭載とビデオ会議や音楽ゲームに適した仕様だ。BluetoothイヤフォンはaptX AdaptiveやaptX Losslessに対応。ステレオスピーカーは音量や音はいいが、前面と底面に配置したことによるバランスがやや気になった。


 SIMカードへの対応は、底面にnanoSIMを2枚装着するスロットを搭載。ただし、eSIMには非対応だ。購入時と合わせて回線を契約する場合、nanoSIMの発行を受けるようにしよう。日本の通信バンドへの対応はドコモのn79も含めおおむね問題ない。ただしミリ波には非対応だ。Wi-Fiは6E対応だが、テザリングで6GHz態を選ぶことはできない。


 USB端子はUSB2.0のType-Cだ。画面出力にも対応していない。機種の価格帯を考えると、兄弟機のROG Phone 8の側面に搭載されているUSB 3.1のUSB-C端子を生かしてほしかった。この点が気になる人は要注意だ。


 生体認証はディスプレイ内の指紋認証と顔認証に対応する。


●普段使い可能なデザインだがゲームに強い、日本のガジェット好きに刺さるスマホ


 ここまでZenfone 11 Ultraを紹介してきた。今回のモデルは普段使いしやすいデザインの大画面ハイエンドかつ、ゲームや動画などエンタメも快適に楽しみたい人にお勧めしやすいスマホになった。カメラ性能も十分な品質を確保している。


 特に、通勤中などに近年の高画質ゲームを快適に遊びたい人にとって、ゲーミングスマホ譲りの高性能と冷却システムや有線イヤフォン対応は魅力的だ。価格もハイエンドとしては妥当な設定で、これを選んでおけば、ゲームライフが快適になること間違いない。まさに「こういうのでいいんだよ」と言いたくなるモデルだ。ぜひ今後の定番シリーズになってほしい。


 一方で気になるのは、ASUSは高価格帯のスマホを販売しながらも、現時点ではメーカー独自の有料保証サービスがないことだ。特にZenfone 11 Ultraは長く普段使いしたいモデルだけに、少々高くても故障・交換がスムーズな保証サービスが欲しい。これまでのZenfoneもそうだが、気に入ったが有料保証がないことに疑問を持たれて選択肢から外れるのはもったいないところだろう。もちろん他社の保険サービスに入る手もあるのだが、できればASUSのPC製品のような独自の有料保証サービスを用意してほしいところだ。


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