現役引退後いきなりレノファ山口社長に就任 渡部博文氏に聞く「Jクラブのトップって何をしているの?」

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2024年07月05日 07:20  webスポルティーバ

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渡部博文レノファ山口FC社長インタビュー(1)

「ゼロからのスタートだからこそ、チャレンジしたいです。不安はありますよ。でも、自分ができることがあると思っています」

 2022年に現役引退を決意し、レノファ山口FCの社長に就任することになった渡部博文(36歳)は当時、そう心境を語っていた。

 渡部はセンターバックとして、栄えあるプロキャリアを過ごしている。柏レイソル、栃木SC、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸、そしてレノファ山口FCで350試合以上に出場。タイトルにも恵まれ、天皇杯優勝2回、ヤマザキナビスコカップ、ゼロックススーパー杯では2回優勝した。

〈プロサッカー選手生活に幕を下ろし、Jリーグのクラブ社長に転身する〉

 それはセカンドキャリアとして夢のある展開だった。ただし新しく違う世界に飛び込むことは簡単ではない。懐疑的な目も向けられたはずだが......。

 現在は社長2年目。2年連続だった赤字を黒字に転換している。就任直後に歯止めをかけたことは大きい。そして今シーズンは営業収入(売上高)アップを見込んでいる。

 同時に、成績も急上昇しつつある。今シーズンは7位(第22節終了時点)と健闘。スタジアム全体の熱気は確実に高まっている。

 そこで今回、Jリーガーから転身した気鋭の社長に話を聞いた。

――渡部社長は現役引退を決めたあと、当時の社長である小山(文彦)氏(現会長)から社長就任の打診を受けたそうですが、引退後すぐに社長になる例はほとんどありませんよね。

「当時は引退を決意して、次のビジョンに向かって、というところで、道を模索していました。経営にはもともと興味があって、2021年に児童向けのデイサービスを行なう会社を立ち上げています。なので、そこをどう広げていくか、構想を練っていたんです。それが現会長に引退報告に行った際に、直接レノファの社長のオファーをもらって。それまでいろいろと頭を巡らせていたのですが、新たなルートに興味を抱きました。実は小さい頃、作文で『サッカークラブを持ちたい』という夢を書いたことがあったんです。社長はオーナーではないですけど、これって現実に近いことになるかもしれない。運命なのかなって」

【朝はオフィスの掃除から】

――経営に興味を持っていたようですが、実際の社長業はどうですか?

「計画と実行、そしてイレギュラーへの対応の連続ですね」

――仕事内容についてお聞きしたいのですが、社長はどんなルーティーンを過ごしていますか?

「朝、クラブ事務所に出勤する場合は、会社の掃除からですね。水回りとか、自分で掃除します。会社はお金を生むところでもあるし、『整理整頓を徹底する』っていうのは決めてスタッフにも伝えています。原点に帰るというか、サッカーも仕事も基礎ができて初めて応用にもつながっていくと考えています」

――社長のイメージといえば秘書がいて、決済のハンコを押している感じですが......。

「(笑)。社員は業務委託も多いんですけど、20名程度。部署だけでいうと6つです。なので、ミーティングが多いですね。決済をするのも、資料を読み込んでからの判断が多いので、それに時間を取られます。それから試合の振り返り。細かいところで何が起きているか把握しておかなければいけないので、逐一、報告をもらっていますね。

 監督とは、試合直後に話すようにしています。自分が何か伝えるよりも、監督が自分と話すことで頭のなかを整理できるようにと心がけています。選手獲得に関しても、日々話し合っていますよ。今日も9時から強化ミーティングに出席し、前半戦の振り返りや夏の補強についてなど会議をしてきました」

――元選手の知名度も生かしてクラブの顔になって、市町村への表敬訪問やスポンサー、パートナーのイベント参加などの業務も多いようですが。

「各市町村に、年間に1回は必ず、表敬訪問という形でご挨拶に伺っています。クラブは2021年から地域活性化のために、山口県内全19市町と包括連携協定を結んでいて、各自治体様と連携し、観光PRや様々なアクティベーションを実施しています。スポンサーに関しては、自分たちはパートナーと呼んでいますが、パートナー企業様とタイアップし、トークショーやサッカー大会など様々なイベントに参加させていただいています」

【失点にこだわり目標設定】

――地元企業との連携は欠かせませんね。

「山口が拠点で、地元の人脈が大事です。経営者の方々のロータリークラブに入っていますよ。定例で会議に参加し、情報交換。地場を大事にしている企業さんは多いので、そういった方々とお付き合いさせていただいています」

――さまざまなコラボレーションにも取り組んでいられるようで、山口県出身であるタレントの田村淳さんともSNSなどで......。

「田村淳さんは、以前にスタジアムに来ていただいたことがあります。なので、何かまた一緒にできれば、とは思っていますね。先日はSPICY ORANGEというレノファの公式ダンスパフォーマンスグループの踊りを、淳さんのオンラインサロンのダンス部が(踊って)SNSにあげてくださっていました」

――今シーズンの目標設定は?

「順位よりも勝ち点55、失点45というのを掲げています。まあまあ難しい数字で、シーズンによっては5、6位になれるほど。去年は失点が70点近かったので、まずはそこをどうにかしたくて。サッカーの方向性を変えて、失点をしないチームづくりにこだわって目標設定をしました」

インタビュー(2)「クラブ経営から見たサッカーの醍醐味」へつづく>>

■Profile
渡部博文(わたなべひろふみ)
1987年7月7日生まれ。山形県出身。山形中央高校、専修大学を経て、2010年、柏レイソル入団。その後、栃木SC、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸、レノファ山口でプレーし、2022年、現役引退を発表。同年12月、レノファ山口FCの運営法人である株式会社レノファ山口の代表取締役社長就任が発表された。

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