ユーロ2024ポルトガル対フランス ロナウド頼み、エムバペ依存は通用するのか

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2024年07月05日 17:21  webスポルティーバ

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 ベルギーに辛勝したフランスと、スロベニアを延長PK戦で下したポルトガル。決勝トーナメント1回戦の戦いぶりはどちらもよくなかった。しかし、両チームとも優勝を狙う潜在能力はある。今後よくなる可能性を秘めた実力派だ。7月5日(日本時間6日4時〜)に行なわれる直接対決を土台に飛躍するのはどちらか。

 より実力が発揮されていないのがポルトガルだ。選手の質は間違いなく過去最高である。ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ルベン・ディアス、ベルナルド・シウバ(ともにマンチェスター・シティ)、ジョアン・カンセロ(バルセロナ)、ヴィティーニャ、ヌーノ・メンデス(ともにパリ・サンジェルマン)、ディオゴ・ジョタ(リバプール)......。スタメン候補で欧州のトップ15クラスのクラブでプレーしていないのは、クリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)、ぺぺ、ディオゴ・コスタ(ともにポルト)、ジョアン・パリーニャ(フルハム)の4人のみだ。

 ポルトガルはご承知のとおり、前々回ユーロ2016の覇者で、決勝の相手は開催国で本命のフランスだった。大黒柱ロナウドが前半途中に負傷退場。絶対的なピンチに立たされたが、残された選手がしぶといプレーでフランスに食い下がり、スタッド・ドゥ・フランスを沈黙させる、まさかの痛快な優勝を飾った。

 この時のポルトガルは、全7試合の戦いを通して徐々に好チーム化していった。フェルナンド・サントス監督(当時)の采配が光るいいサッカーが最後に爆発、番狂わせを起こした。それから8年後。ロベルト・マルティネス監督率いる2024年型のポルトガルに、いまのところ当時の面影を見ることはできない。選手のクオリティは上がったが、サッカーのクオリティは上がっていない。

 ロナウドはかつてストライカー兼ウイングだった。センターフォワードでありながらサイドをドリブルで疾走するウイングプレーを得意とした。キリアン・エムバベ(パリ・サンジェルマン→レアル・マドリード)同様、走力も大きな魅力だった。

【ロナウド色がいっそう強まったポルトガル】

 だが、39歳になったいま、そのプレーを望むことはできない。何よりドリブル力が低下した。1トップとしてゴール前で張りついて構えているばかりである。体つきを見る限り衰えたという印象はないが、プレーエリアは大幅に狭まった。点で合わせるストライカー。ストライクゾーンの狭い選手になった。

 しかし、依然としてポルトガルの大黒柱として君臨する。タレント軍団と化したポルトガルの1トップを張る。初戦のチェコ戦、2戦目のトルコ戦のみならず、120分の戦いに及んだ4戦目のスロベニア戦でもフル出場を果たした。グループリーグ突破が決まった3戦目のジョージア戦も、多くの選手を入れ替えて臨んだにもかかわらず、ロナウドは先発し、後半21分までプレーした。

 全4戦で出場時間が最も長いのはGKディオゴ・コスタだが、2番手には39歳のストライカーの名前がくる。4試合の出場時間はなんと366分。控えのストライカー、ゴンサロ・ラモス(パリ・サンジェルマン)にポジションを譲った時間はわずか20数分しかない。選手交代5人制の時代において、超ベテランの1トップがほぼ出ずっぱりとはどういうことなのか。

 7試合の道のりを考え、大ベテランを大切に使っているという感じではまったくない。あえて先頭に立たせている。その矛盾、弊害が見え隠れするのが現在のポルトガルだ。いまだにロナウド頼みの構図になっている。

 PK戦に及んだ前戦のスロベニア戦では、延長前半、PKを外した。にもかかわらずPK戦では一番手として登場。無事に大役をこなし、チームをPK戦勝利に導いた。これでロナウド色はいっそう強まった印象だ。後半なかば過ぎにベンチに下がる姿は想像できない。フランスにこのやり方が通じるのか。疑問を覚える。

 一方のフランスも、ここまでいい感じで来ていない。大会前はイングランドともにブックメーカー各社から優勝候補の一番人気に推されていたが、現在はスペインに抜かれ、ドイツに並ばれている。勢い、余力に乏しい戦いぶりである。

【サブ選手に出場時間が与えられないフランス】

 象徴的だったのは先のベルギー戦だ。決勝点が決まったのは後半40分。それまで0−0の状態が続く緊迫した試合だった。フランスは内容でわずかに上回っていたが、うまくいっているようには見えなかった。

 ディディエ・デシャン監督の選手交代が注目された。後半17分、1トップのマルクス・テュラム(インテル)に代え、ランダル・コロ・ムアニ(パリ・サンジェルマン)を投入。しかし交代はこれをもって終了した。わずか1枠しか使わなかった交代。むしろ使えなかったように見えた。

 同じく接戦(0−0)となったグループリーグ一番の好カード、オランダ戦も同様だった。ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン)→キングスレイ・コマン(バイエルン)、テュラム→オリビエ・ジルー(ミラン)の交代のみだった。3枠も余しながら引き分けたのである。

 レギュラーとサブがハッキリしているだけではない。サブ選手にはわずかしか出場時間が与えられていない。スタメンで最後まで押しきるしかない、試合の終盤に選択肢が残されていないサッカーに陥っている。選択肢が限られているので、この方法論では準決勝、決勝と試合が進むと苦しくなる。誰がスタメンなのかよくわからない面白さが、このチームには一切ない。

 スタメンの最適解も見つかっていない。1戦目(オーストリア戦)、2戦目(オランダ戦)は、4−2−3−1の前4人にエムバペ(左ウイング)、テュラム(1トップ)、アントワーヌ・グリーズマン(1トップ下/アトレティコ・マドリード)、デンベレ(右ウイング)を配したが、3戦目(ポーランド戦)は4−3−3にしてグリーズマンを外している。休ませたという見方もできるが、4戦目のベルギー戦では、布陣は4−3−3のままで、右ウイングをデンベレからグリーズマンに代えている。

 だが、いじるほど悪くなっている印象だ。1年数カ月前のカタールW杯では、ジルーが1トップを張っていた。テュラムはその交代選手だった。それに見慣れたものにとって、テュラムの1トップはハマり役に見えない。

 しかし、テュラムには、相手ボール時、エムバペとポジションを入れ替え左に回り、相手サイドバックを牽制する影武者的な役目が課せられている。このエムバペの守備への負担を軽減しようとする狙いに、37歳のジルーは適さない。先のベルギー戦で行なわれた唯一のメンバー交代が、テュラムと非ポスト系の半ウインガー、コロ・ムアニの入れ替えだったことにそれは示される。

 エムバペで勝つ。試合内容より大会一のスター選手、エムバペの個人能力にかけたサッカーに見える。しかし、4試合で奪った得点はわずか3だ。

 ポルトガル対フランスはつまり、1トップに少なからず難を抱えたチーム同士の対戦と言える。この一戦を経て、問題は解決するかにも目を凝らしたい。

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