三井不動産、物流問題の課題解決に「街づくり型物流施設」「冷蔵庫」「データセンター」も積極展開

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2024年07月16日 09:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
三井不動産は11日、新グループ長期経営方針『& INNOVATION 2030』に基づく新事業戦略を発表。都内で開催のメディア説明会では、担当者が三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)における取り組みを解説し、既存・新規の物件を紹介した。


○社会課題の解決に向けて



いま物流業界ではECの拡大にともない市場が成長する一方で、物流の2024年問題、深刻な労働力不足などの課題にも直面している。2030年には2015年比で全国の約35%の荷物が運べなくなる可能性も指摘されている。



このような状況を受け、三井不動産 執行役員の篠塚寛之氏は「テナントや地域社会が抱える様々な課題解決に取り組みます。私たちは産業デベロッパーとして、社会的価値の創出、経済的価値の創出に努めていきます」と力を込める。



そして3つの観点から事業戦略を紹介した。1つめは「コア事業のさらなる成長」。同社では豊かな街づくりに貢献するため、地域に開かれた広場や保育所を併設した「MFLP 船橋」、職業訓練施設も入居する複合用途の「MFIP 羽田」など、「街づくり型物流施設」の開発を推進している。


当施設の従業員、および施設を利用するトラックドライバー7,000名以上を対象にした顧客満足度も調査。その結果を施設計画、管理、運営などに反映する取り組みも進めている。「これによりコンビニ、喫煙スペースをトラック待機所の近くに設けました。また休憩室、食堂などの機能も充実させました」と篠塚氏。


都内最大の物流施設「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」は2024年9月末に竣工予定。災害時には地域住民1,000人の緊急一時退避場所となる施設で、敷地内に併設する高台広場には緊急着陸用のヘリポートも設置している。「ドローン飛行用のフィールドを整備しています。ドローンによる物資配送、災害支援活動の実証実験などを実施予定です」(篠塚氏)


また「物流の2024年問題をはじめとする課題に対しては、荷主、物流企業、ソリューション提供会社などの連携が必須です」としたうえで、三井不動産がハブとなってサプライチェーンの改革を支援していくと宣言する。



物流コンサルティングプラットフォーム「MFLP & LOGI Solution」(2023年4月発足)では、独自のネットワークを活かして荷主企業のサプライチェーンの改革を支援。コミュニティの形成、連携プロジェクト、DX化などを活性化させる。ある国内ハウスビルダーとの取り組みでは、工場・倉庫拠点の集約、輸送配送の料金プランの見直しなどにより、すでに年間コストにして約8億円もの削減を見込んでいるという。


EC事業者に対しては2024年4月より「 & LOGI Sharing」の提供を開始。注文受付、配送手配、在庫管理などのフルフィルメントサービスを担うことで、EC事業者の成長を支援している。


○冷凍・冷蔵庫の開発



事業戦略2つめは「事業領域の拡大」。冷凍・冷蔵庫が集積している船橋エリアや厚木エリアを中心に全館冷凍・冷蔵庫の開発を進めている。



「コロナ禍においてネットスーパーが成長し、冷凍食品の需要が拡大しました。しかし既存施設の3割以上は築40年を超えています。また改正オゾン法による自然冷媒への転換も進んでいます。今後、建て替え、賃貸需要が増えていくことが見込まれているなかで、当社では船橋の湾岸エリア、埼玉の内陸部に冷凍・冷蔵施設付きの倉庫開発に着手しました」(篠塚氏)


データセンターの積極展開も見込んでいる。「クラウドサービス、IoTの導入などにより国内のデータ通信量は増えています。今後も生成AI、5Gの普及により増加傾向は続いていくでしょう。そこでアジア最大級のデータセンター計画をはじめ、用地取得を強化・拡大します。データセンター事業者とのリレーション強化も図ります」と篠塚氏。


このほか物流用途に限定されない複合用途施設の「三井不動産インダストリアルパーク(MFIP 羽田)」を展開する。

○ESGの取り組み



事業戦略3つめは「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に関する取り組み。太陽光発電設備の設置を推進し、オンサイトによるグリーン電力の供給、テナントの要望に応じた専有部への「グリーン電力提供サービス」など、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進していく。

○開発物件について



最後にこれまでの開発物件、および今後の新規開発物件について紹介した。2023年度は4物件が竣工済み。



2024年度には先述の「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」のほか、「MFLP横浜新子安」「MFLP京都八幡I・II」などを竣工予定。


開発総物件数は、竣工済みが51物件、開発中が24物件。これにより同社がロジスティクス事業として開発する施設は計75物件(国内66物件・海外9物件)、総延床面積は約600万平米となる。累計総投資額は約1兆2,000億円という規模。



篠塚氏は「ともに、つなぐ。ともに、うみだす。この三井不動産のステートメントのもと、今後もさらなる成長に向けて取り組んでまいります」とまとめた。(近藤謙太郎)
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