連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第65話
本コラムの連載開始から1年! 今回は、なぜ筆者が『週刊プレイボーイ』のニュースサイトをコラム執筆の場に選んだのか? その理由をじっくり明かします!
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■なぜ『週刊プレイボーイ』?
早いもので、『週刊プレイボーイ』、厳密にはそのウェブサイトである「週プレNEWS」でこの連載を始めてから、今日でちょうど1年である。これで65話。1年は52週、つまり、毎週連載で52話だと考えると、週1を上回るペース(単純計算で5.6日に1話のペース)で公開を続けてきたことになる。ウイルス学者という本業の傍らで、よくここまで書き続けていると自分でも思う。
2023年9月9日に始まったこの連載企画であるが、折に触れて、このコラムを読んでくれている同業の研究者の方々に会うたびに異口同音に聞かれるのが、
「なんで『週刊プレイボーイ』?」
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ということである。1年という節目に、この辺についてちょっと解説するコラムを書いてみようと思う。
いちばんの動機の種は、やはり私が文章を書くことを好んでいる、ということに尽きる。私が文筆家に憧れを持っていることについては、この連載コラムでも何度か触れたことがある(6話、13話、18話、32話など)。
それに加えて、これもこの連載コラムでも暑苦しく語ったことがあるように(14話、27話、48話など)、私がこうやって「アカデミア(大学業界)」、特に感染症・ウイルス研究の裏話のようなことを一般読者向けに書いているのは、普段はあまり日の当たることがない基礎研究にいそしむ研究者の姿を、一般の方々に知ってもらいたいという思いに尽きる。
そしてそれを通して、「次のパンデミック」に備えるための研究活動に賛同してくれて、その世界に飛び込んできてくれる人たちが出てきてくれることこそが、この連載に込めた、私の秘めた願いでもある。
――と、そのようなゴタクは置いておいて、今回のコラムの主題は、「なぜその媒体が『週刊プレイボーイ』だったのか?」である。
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■私が『週刊プレイボーイ』を媒体として選んだ理由
1年前の私は、「感染症研究やアカデミアについてのコラムを執筆したい」というようなことを、それまでの活動の中で知り合った出版関係の方々に話していた。そんな中、大変ありがたいことに、いくつかの媒体からその機会を提案いただいた。
――それでは、そんな複数の選択肢の中から、なぜ私は『週刊プレイボーイ』を選んだのか?
コラムを書くにあたって私が優先したかったのは、?ウェブで読める、?タダで読める、?書いたものがアーカイブとしてずっと残る、という3点であった。
まず、「?ウェブで読める」であるが、やはりこのご時世、広く読んでもらうことを優先した場合、紙媒体だけではなかなかに厳しい。新聞をとる家庭も減ってきているし、雑誌や書籍の場合、そもそも書店やAmazonで購入してもらわないと読んでもらえない。気軽に手軽に読んでもらうためには、やはりウェブで、スマホ片手に読めるようなものであることが望ましい。
次に、「?タダで読める」であるが、これは個人的にかなり重要なポイントであった。大手既成メディアのウェブ媒体には、読んでみたくなる、興味が湧く記事がたくさんある。しかしそのほとんどは有料(サブスク形式)で、タダで全文を読むことができないのである。「なにをケチなことを」と言う人もいるかもしれないが、やはりお金のことを気にすることなく、スイスイ読めるにこしたことはないはずである。
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そして、「?書いたものがアーカイブとしてずっと残る」こと。これも意外と盲点で、ネットニュースのほとんどは、時間が経つとウェブから消えてしまうものが多い。そういえば、と思って昔の記事のURLを辿ってみても、「404 Not Found」と表示されてしまうことも少なくない。私が「執筆した学術論文のことを自分の『作品』だと思っている」ということは6話でも紹介したが、それはこのコラムも同じである。せっかく自分でしたためた文章、それはやはり、私の中では「作品」であり、ずっと残したい、残ってほしいものである。
これらを考慮した結果、いただいたいくつかの提案の中で、これらのすべてを満たしていたのは、『週刊プレイボーイ』だけであったのである。
それに加えて、1話でも紹介したように、新型コロナパンデミックの中で、『週刊プレイボーイ』は、科学に基づいた真っ当な記事を載せる、当時としては(現在も)とても稀有で貴重な媒体であった、という背景がある。それは、編集者のKさん(私のこの連載コラムも担当してくれている。32話にも登場)と、その記事のライターを務めていたKさん(どちらもイニシャルKで紛らわしいですが、別の人です)の努力にほかならない。私も何度か彼らの取材を受ける中で、彼らの真摯な姿勢を目の当たりにしていたからこそ、『週刊プレイボーイ』を媒体として選ぶことに、個人的な抵抗感はまったくなかった。
ちなみに、「上記の3つを満たすなら、ブログやウェブノートでも良かったのでは?」という話もある。そのような方法ももちろんなくはなかったが、それはそれで媒体としてはちょっと地味で、あまり面白味がない。そもそも読んでもらうために、自分でゼロから宣伝しなければならないし、それを本業の傍らでするのはなかなかにしんどい。
そしてなにより、「え!! 東大教授が『週刊プレイボーイ』でコラムを!?」というギャップは、それだけでウケるんじゃないか、と内心思っていたのももちろん事実である。幸いにして今のところ、私の本務先から、この活動についての苦情・苦言は寄せられていない。
さらに、これは連載を始めてから気づいたことだが、講演の最後にこのコラムを聴衆に紹介する際に、「私の名前に『プレイボーイ』をつけてググれば見つかります」という、キラーワードこの上ない自己紹介フレーズを手に入れることができた。
......とまあ、最後の逸話は冗談としても、ひたすらグラビアが並ぶページで、それらを尻目に、ガチなトーンの科学コラムを読む、というのも、アバンギャルドな感じがして面白いんじゃないかなあ、と思っている今日この頃である。不定期連載とはいえ、さすがに無尽蔵にネタが湧いてくるわけではない。いつまで続けられるか、いつまで続けさせてもらえるかはわからないが、感染症研究の啓蒙活動の一環として、これからもできるかぎり面白い、読み応えのあるコラムを届けられたらと思っています。
文/佐藤 佳 写真/PIXTA