NECのDX統括部長が明かす「ブルーステラ」誕生の理由

0

2024年09月14日 11:31  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

NECのBluStellarビジネス開発統括部の岡田勲統括部長

 NECが社を挙げて進めている価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」。顧客のビジネス変革の実現に向けたDX推進事業「NEC Digital Platform」を進化させたブランドとして打ち出そうとしている。


【その他の画像】


 背景には、業界を問わずに急速に加速している企業のDXがある。NECは年商300億円以上の企業に対し、毎年「NEC DX経営の羅針盤」という調査を実施。調査項目は「業務のデジタル化」「意思決定のデジタル化」「接点/チャネルのデジタル化」「サービス/製品のデジタル化」「バリューチェーンのデジタル化」「ビジネスモデル変革」の6つだ。


 このうち「意思決定のデジタル化」では、前年と比較して企業のDX着手率は49.6%から95.5%に激増。「バリューチェーンのデジタル化」は35.7%から85.1%、「ビジネスモデル変革」は39.7%から85.1%に上昇している。倍以上になっている項目もあり、この1年で、いかに企業のDXへの関心が高まっているかが分かる。


 「業務のデジタル化」は84.4%から100.0%、「接点/チャネルのデジタル化」は67.7%から97.0%、「サービス/製品のデジタル化」は47.0%から92.0%に、いずれも上昇している。


 「意思決定のデジタル化」が進んでいる要因として、NECはデータドリブン経営の成功事例が出てきた点を挙げている。最も伸びた「バリューチェーンのデジタル化」における要因は、物流の「2024年問題」が関係しているという。法改正により、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されたため、否が応でも企業は物流の効率化を進めなければならない外圧的な背景がある。


 一方DXに着手し、推進しようとしても、課題はまだまだ多い。一番は企画・実行部門における人材不足の問題だ。


●NEC「ブルーステラ」 他社にない「価値創造シナリオ」とは?


 DX推進の課題として「DX企画部門の人材不足」を挙げた企業は、64.2%から77.6%に上昇している。既存の社内システムからの更新が課題となっている企業も多い。「既存情報システムの老朽化」を課題に挙げた企業も、37.3%から46.3%に上昇している。


 こうしたDXの課題をより本格的に解決しようとしているのが、ブルーステラだ。ブルーステラ誕生の背景を、NECのBluStellarビジネス開発統括部の岡田勲統括部長は、こう説明する。


 「顧客企業の課題は、単なるデジタル化にとどまりません。データをいかにして経営に生かしていくのか。組織や会社の体制・風土をどう変えていくのかが今後の課題になると思います。ブルーステラでは顧客ごとのゴールに対し、当社がどのようにサポートし、伴走していくべきか。NECがその意思表示としてブランド化したものになります」


 このブルーステラの目的を実現していくためには、顧客企業よりも先にNEC自身が変わらなければならない。NECでは社内DXの取り組みとして、社員証のデジタル化や顔認証を積極的に導入。


 「NECがデジタル技術を使ってどんな価値を提供していくのか。何を目指していくのかを顧客と共に検討していきます。それにはテクノロジーだけではなく、人材育成も重要になってきます。われわれがSIer(エスアイヤー、システム開発の全ての工程を請け負う受託開発企業)からバリュードライバーに変わろうという決意が、ブルーステラになります」


 ブルーステラでは「戦略コンサル」「サービスデリバリ」「運用・保守」とオファリング(提案)を商材にしていく。DXを進めるための人材の提供や、人材育成のブログラムも顧客に提供していくという。


 ブルーステラの全体構造としては「Agenda」「Technologies」「Programs」の3つを柱に据えた。Agendaでは顧客のDX実現構想・成功ストーリーと事例、Technologiesでは顧客へ提供するオファリング・商材、Programsではブルーステラを支える社内外の取り組みで構成している。こうした知見を、いかにして顧客に届けるかが、ブルーステラの軸となる。


 そこでブルーステラが重視するのが「価値創造シナリオ」だ。このシナリオについて、岡田統括部長はこう説明する。


 「シナリオとは、顧客の課題やアジェンダに対し『こういうゴールが必要になるだろう』と、ある程度の想定をしながら進める筋道になります。顧客のゴールに向かい、どのようにサービスを提供していくのか。サービスをどのような順番で提供していくべきかを、型化したものになります」


 ブルーステラのシナリオは、上流から「戦略コンサル」「サービスデリバリ」「運用・保守」の3つの主な行程に分かれている。


 「上流であるコンサルからそれを実現するサービスデリバリ。さらにサービスを提供するだけでなく、それを実際に顧客の中で運用していきます。運用だけでなく、その運用の中で見つかった課題を解決したり、よりよく運用が回るようにするためのサービスも提供したりしていきます。こういう形で型化をし、われわれとしてのノウハウを集約したシナリオを提供していくことを考えています」


●顧客目線でのシナリオのメリット


 顧客目線でのシナリオのメリットとして「経営課題に対する戦略的集中と事業成長」「事業拡大・競争力強化」「実績とノウハウを持つパートナーのサポート」の3つを挙げる。


 「経営課題に対する戦略的集中と事業成長」では、抱える経営課題に対して目指すべき姿と具体的な課題解決策のロードマップが明確となり、戦略的リソースの集中と事業成長が可能になる点。「事業拡大・競争力強化」では、実績のあるシナリオを基に事業環境や市場動向の変化のスピードに対応しながら課題解決に取り組むことで、事業拡大や競争力強化につながる点。「実績とノウハウを持つパートナーのサポート」では、コンサルや製品サービス、システム構築・運用の実績とノウハウを持つパートナーのサポートが得られることで、課題解決や事業拡大に取り組める点を挙げている。


 ブルーステラでは「お客さまのDX実現構想」と題して、5つのアジェンダと8つのシナリオグループを顧客に提案している。顧客がブルーステラを活用しDXを進めようとした際には、まず顧客企業の経営課題テーマに基づきアジェンダを5つの中から選び、さらにシナリオを選んでいく。


 そしてシナリオを元にオファリングを受け、最終的にソフトウェアや単体のコンサルといった商材として、運用・保守を受ける。シナリオを軸とした価値創造モデルについて、岡田統括部長がこう腕を鳴らす。


 「これまでNECはSIerとして、このシナリオのようなものを営業やSEが部門ごとにばらばらに立てていました。それぞれに知見やノウハウはあったものの、それが体系化されていなかったわけです。結果、顧客に対応するスピードが遅くなるなどサービスの低下がありました。ブルーステラでは、この知見の共有をNEC全体に対して実行し、さらにこの型を常にアップデートしていき、より良い形で顧客に提供していきます」


 ブルーステラの導入社としては、既に大東建託や三井住友海上火災保険、東京電力パワーグリッドなどの例があるという。その事例についても「スモールスタートで始めるデータドリブン経営ワークショップ」や「経過記録要約システム」「DX戦略コンサルティング」などさまざまなものがある。


 「パートナー企業には一定の評価をいただいていて、より良い信頼関係を構築できたと思っています。その関係性から次のお話をいただき、NECも一緒にゴールを目指し、お客さまと共にさらなるDXを進めていきます」


 NECに限らず、いま各企業が価値創造ブランドを創出し、独自に展開しようとしている。ブルーステラはシナリオを軸に据えている点にユニークさがあるといえそうだ。シナリオを軸にしたDXがどのように広まるのか注目だ。


(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定