「同い年ということもあってよく食事にも行きましたし、本人が苦しい時期も知っているし良かった時も知っている。いろんな話をして、食事とかをしたのを覚えていますね」。
ロッテの西野勇士は、同学年で今季限りで現役引退を表明した中日の加藤翔平についてこのように語った。
西野は高卒、加藤は大卒での入団ではあるが同い年で、加藤が中日に移籍する21年途中まで8年半同じロッテのユニホームでプレーした。今季は加藤だけでなく、金子侑司(西武)、鍵谷陽平(日本ハム)といった同じ“90年世代”の選手たちの現役引退が目立つ。
西野自身は同学年の選手が引退することに寂しいという思いなのか、自分自身はもっと長く現役を続けたい思い、どういう思いを持っているのだろうかーー。
「どちらもあるのはあるんですけど、寂しいのは結構ありますね。人数も減ってきているし、その分、負けないように頑張ろうというのはあります」。
西野はベテランと呼ばれる年齢になったが、先発ローテーションの一角として今季もここまで8勝をマークする。特に西野がすごいのは、苦しい時期を何度も乗り越え、“進化”していること。14年から3年連続20セーブ以上マークしたが17年と18年に低迷、19年にアメリカで自主トレを行い、そこで新しい感覚を身につけ同年先発、リリーフに37試合に登板し、防御率2.96と復活した。しかし、20年に右肘のトミー・ジョン手術を受け、20年、21年と一軍登板がなかったが、22年がリリーフ、23年からは先発で一軍の戦力として活躍している。
筆者自身、“進化”していることが西野が長く活躍できている要因なのではないかと分析している。
「ちゃんと衰えないように時代にちゃんとついていけるようにしたいなと思います」。
西野が復活した19年をはじめ、“変化することに怖れない”印象だ。
「そうやって僕は一軍に辿り着いてきたりしたので。支配下になるとかもそうですけど、そうやってきたので変わることに怖さはないですね」。
振り返れば、西野は08年育成5位でプロ入り。同じ高卒でプロ入りし、すぐに一軍でプレーしていた他球団の同級生の活躍に当時、「負けたくないという気持ちがありました。浅(浅村栄斗)もそうだし、西勇輝とか、遅れはとりましたけど負けたくないという気持ちは常にありました」と明かす。
当時は同級生に負けたくないという気持ちは強かったが、今は自分のことに必死だという。「若い時は競う相手がいて、それで成長した部分もあったと思う。いい意味で若い時はがむしゃらにやれていた。今はポジション、チームのために、チームのこの場所を取るために、本当に自分のことばかりになっちゃうんですけど、そこに重きを置けているのかなと思います」。
“自分のこと”に重きを置いているとはいえ、後輩投手から質問されればアドバイスしたりもする。
90年世代の選手たちがどんどん減ってきている中で、「やれるだけやりたいなと思いますけど、はい」ともちろん、まだまだ第一線でプレーしていくつもりだ。最後に90年世代の最後の1人まで現役でプレーしていたい思いが現時点であるか質問すると、「ないです(笑)」と返ってきた。今も変わらず、進化、貪欲な姿勢を見せる背番号29は、まだまだ一軍の舞台で活躍してくれそうだ。
取材・文=岩下雄太