「チープカシオ」なぜ人気? 安価だけではない、若者に支持される理由

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2024年09月22日 07:21  ITmedia ビジネスオンライン

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「チープカシオ」若者に人気、なぜ?

 ここ数年、若者を中心にカシオ計算機のスタンダードウオッチが人気を集めている。SNSやネット上では「チープカシオ」あるいは、それを縮めた「チプカシ」の愛称で親しまれているものだ。


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 「Apple Watch」をはじめとしたスマートウオッチでもなく、「ロレックス」のような高価格帯の時計でもなく、なぜ今、チープカシオと呼ばれる時計に注目が集まるのか。


 カシオ計算機が分析する人気の理由や今後の展開について、同社で商品戦略を担当する轟理絵氏とマーケティング戦略を担当する服部飛花氏に話を聞いた。


●「チープカシオ」とは


 チープカシオはカシオ計算機が名付けたブランドやシリーズ名ではなく、「安価(チープ)なのにおしゃれで高性能なカシオの時計」といった意味合いからSNS上で広がっていったものだ。


 チープカシオと呼ぶ商品群はなく、同社が国内向けに「CASIO Collection(カシオコレクション)」「CASIO CLASSIC(カシオクラシック)」、海外向けに「CASIO VINTAGE(カシオビンテージ)」の名称で販売するスタンダードウオッチを示す。


 ラインアップはカシオコレクションとカシオスタンダードを合わせると200モデル以上あり、特徴はG-SHOCKなどと比較して低価格帯であること。最も安いものは2000円台から、高いものでも1万円台で販売している。1980年代から30年以上続いているロングセラーモデルや、現代向けにカラーを新調したモデルまで存在する。


 「カシオ計算機ではG-SHOCK/BABY-G、OCEANUSシリーズなど、さまざまな時計をラインアップしていますが、その中でもカシオコレクションやカシオクラシックは一番手に取りやすい価格帯の商品群です。年代性別を問わず、幅広い層に向けた商品となっています。売り上げは2021年以降、毎年前年を超えており、直近では2ケタ成長を記録しています」(轟氏)


●なぜ若者に支持されているのか


 同社によると、SNS上で人気が出始めたのは2010年ごろだったという。10〜20代のファッション感度が高い若者を中心に広がり、一部芸能人も着用写真を自身のSNSで投稿していることが話題に。その後、アパレルショップでの取り扱いも増え、2021年ごろから徐々に売り上げが拡大していった。


 Amazonの時計ランキングなどでも常に上位をキープ。その理由として、同社は「低価格だけど耐久性や機能性が高く、お得感を感じてもらえたこと。カシオ計算機らしいタフネスで信頼性があること。加えて1970〜80年代を思わせる昭和レトロ感が今の若者に新鮮に映ったこと。こうした背景があると思っています」と分析している。


 「ファッション感度の高い人に話を聞くと、コーディネートの中にあえて異なるテイストのものを取り入れる“外しアイテム”として当社の時計を着用する若者が増えているようです。そうしたハイブランドとのミックスファッションに加え、ジェンダーレスで自由な選択肢があることも今の世の中の流れに合っているのではと考えています」


●2021年にリブランディング


 そうした反響も受け、同社では2021年にスタンダードウオッチのリブランディングを実施。それまで複数に分かれていた各モデルを、基本性能とデザイン性を追求した「Standard」、スポーツを楽しむ人向けの「For Sports」、カラフルなデザインの「POP」に分類したタイミングで、カシオコレクションに統一した。さらに2023年、よりファッション性を意識したモデルをカシオクラシックとして展開した。


 「当時、スタンダードウオッチはG-SHOCKなどと比べるとプロモーションに特別チカラを入れていたわけではありませんが、それでも売れているということで、社内でも『まだアプローチしきれていないファッション層などにも伸びしろがあるのではないか』と話に挙がりました」(服部氏)


 同社のブランド時計は女性層やファッション層に弱いといった課題感もあり、リブランディングによって利用シーンをイメージしやすくしたほか、ファッション性を意識したカシオクラシックについてはSNSでも購買欲が高い女性向けに訴求を強化することにした。


 「SNSの投稿については、当社として成長の余地がある女性やファッション好きの若者へのアピール方法を課題として捉えていました。共感性を意識し、例えばユニセックスの商品でも、より女性向けに見えるようなコンテンツをつくったり、マガジンコンテンツやイラスト、さまざまなスタイリングを訴求する投稿をしたりすることで徐々にフォロワーも伸びています」(服部氏)


●入門機としてもアピール


 商品開発においてはユーザーニーズを捉えながら実用性を追求したモデル、ファション性を意識したモデルを中心に投入している。


 今後は幅広い年齢層に向けた小型商品として、カシオコレクションの中でもカラフルなデザインを採用した「POP」のラインアップも強化。ファッション感度が高い若者に加え、これから時計を楽しむ層に向けた入門機としてもアピールしていきたい狙いだ。


 「スマートフォンの普及で時計を着ける文化が薄まっているともいわれていますが、カラーやデザインに面白みを持たせることで、子どもでも気軽に使えるファーストウオッチとして提案していきたいと考えています」


 1970年代から幅広い世代に親しまれてきたカシオ計算機のスタンダードウオッチ。商品戦略やプロモーションを強化することで、新たな層にも広がっていくか。今後の展開にも注目したい。


(熊谷ショウコ)



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