輪島で中学生が行方不明 父「とにかく見つかってほしい」

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2024年09月22日 19:04  毎日新聞

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行方不明となっている喜三翼音さんの捜索現場を見守る父鷹也さん=石川県輪島市で2024年9月22日午後1時42分、大西岳彦撮影

 石川県能登半島を襲った豪雨で、輪島市久手川(ふてがわ)町では塚田川が氾濫し、4人が行方不明となった。市立輪島中3年の喜三(きそ)翼音(はのん)さん(14)も21日午前から連絡がとれなくなっており、父鷹也さん(42)は自宅から数百メートル下流にある橋の近くで救出を待った。「ここに翼音がいるんじゃないか。とにかく見つかってほしい」と願う。


 鷹也さんによると、21日朝、他の家族は外出中で、翼音さんは1人で川沿いの自宅にいた。午前9時40分ごろ、知人から塚田川が氾濫していると連絡があり、鷹也さんは翼音さんと無料通信アプリ「LINE(ライン)」で通話した。翼音さんは「道路が海のようで逃げられない」と驚いた様子だったという。2階の部屋の戸も開かず「出られない」と訴えた。LINEのビデオ通話で、2階まで濁流が迫る様子が見えた。


 午前9時52分に話した後にも翼音さんから着信があったが、鷹也さんは他の電話で応答できなかった。午前10時6分にかけ直したが、つながらなかった。鷹也さんは「この数分で流されたのだと思う」と静かに語った。


 消防にも通報し、翼音さんには「大丈夫か?」「消防が来てくれるから窓から手を振れよ」という内容のメッセージを送った。市街地の道路は冠水しており、歩いて帰ると、自宅は基礎を残してなくなっていた。


 22日も午前10時ごろから夕方まで、自宅から数百メートルも下流にある橋の近くで救出作業を見守った。大量の流木や住宅の柱などが数メートルも積み上がり、自宅ガレージの屋根や妹のおもちゃも流れ着いていた。その一帯を自衛隊や警察、消防が重点的に捜索した。


 正午ごろ、翼音さんが保育所に通っていたころの写真が、土手に落ちているのを見つけ、拾い上げた。


 「絵がうまくてね」。鷹也さんは娘について語った。マイペースだけど優しい性格。中学では美術部の部長を経験し、「推しの子」などアニメの絵をよく描いている。金沢市内の高校を志望し、将来は公務員になるのが目標だ。


 鷹也さんは「見つかった時は名前を呼ぶと思う。『よう頑張ったな』というか『怖かったな』というか。今は分かりません」と語った。


 輪島市久手川町で何が起きたのか。


 この地区で暮らす女性(59)によると、21日午前5時過ぎから雨が強くなった。茶色く濁った川の流れは勢いを増し、「ゴーッ」という地鳴りのようなごう音が響いていた。「恐怖で眠れなかった」という。


 午前9時ごろだった。「バキバキ」と物が割れるような音が聞こえ、ベランダから外の様子を見渡すと、塚田川沿いにある住宅の納屋が土砂で潰れていた。約1時間後、近くにあったはずの2棟の住宅が消えていた。塚田川の氾濫で一帯には泥水や土砂が流れ込み、この住宅は流されたとみられる。乗用車が川に流される様子も目撃した。


 女性は「道路も土砂で寸断され、周囲では今も土砂崩れが相次いでいる。かろうじて建っている家も崩れてしまいそうだ」と嘆いた。【国本ようこ、砂押健太、中田敦子】



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