LINE WORKSが営業DX支援へ 社長が明かす「顧客とLINEでつながる」新戦略

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2024年09月23日 10:21  ITmedia ビジネスオンライン

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LINE WORKS島岡岳史社長

 LINE WORKSが企業のセールス活動支援を始めた。国内に9700万人いるLINEユーザーに対し、顧客企業が外部トーク連携やAPI連携することによって、顧客体験(CX)の向上や営業体験(EX)の向上を狙う。


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 一部の飲食店では既に、LINE上でのセルフ注文システムの活用が進んでいる。こうしたユーザーとのつながりを、LINE WORKS導入企業のCRM(営業支援システム)と連携を実現させるのが狙いだ。これにより、より効率的なユーザーへの情報伝達を目指す。


 LINE WORKSは「Sales」と「Technology」を掛け合わせた造語「Sales Tech(セールステック)」事業を、2025年中に本格稼働させる方針を打ち出している。顧客企業の営業DXを推し進めていく構えだ。9月11日に同社が開いた「LINE WORKSのSales Tech事業説明会」では、その新戦略や今後拡大していく事業領域を明らかにした。


 説明会では、6月に就任した島岡岳史社長が登壇。LINE WORKSの強みについてこう述べた。


 「B2B向けのLINEであるLINE WORKSは、LINEに非常に近いUIを持っているため、ITやデジタルリテラシーが高くない方でも簡単に使える特徴があります。その特徴を生かして、アルバイトや派遣社員など、顧客企業の現場で使われるケースが非常に多い傾向があります」


●セールステックに注力 理由は?


 企業向けのチャットツールは数多く出回っているものの、従業員が独自のUIに慣れるのに時間がかかってしまうケースも少なくない。その点LINEのUIを踏襲したLINE WORKSには、従業員が働き始めた途端に使える強みがあるという。LINE WORKSは創業9年で、約500万人のユーザーを有している。


 既にLINE WORKSではチャット機能に限らず、スケジュール機能やメール機能、掲示板機能など、LINEにはないさまざまな機能を搭載している。こうした機能の強化に加え、今後AIベースの新規アプリケーションの実装を進めていくという。


 「2023年にLINE WORKSが、LINEヤフーのAI事業を統合しました。この動きを踏まえ、LINE WORKSでもAI機能を追加して拡張していきたいと思います」(島岡社長)


 AI活用に加えて、LINE WORKSが推し進める事業拡大領域がセールステックだ。島岡社長がこう続ける。


 「LINE WORKSと外部のソリューションを連携させるビジネスを展開していきたいと思っています。われわれは既に他社製品との連携を強めており、現時点で170社以上の製品と連携しています。他のシステム・プログラムとつなぐためのインタフェースを使った『API連携』を拡充していきます」


 なぜ、セールステック事業を始めたのか。


 「われわれは今までLINE WORKSというチャット中心の製品を一生懸命皆さんに使っていただくように頑張ってきました。その中で、顧客企業からはさまざまな使われ方をされていて、そこから新たな課題が生まれてきました」(島岡社長)


 LINE WORKSはもともと、社内のビジネスチャットツール、グループウェアとして発展してきた。ところが近年では、LINE WORKSを利用している企業同士が連携する事例が非常に増えてきたという。こうしたLINE WORKSのB2B外部接続数は130万人にものぼる。LINE WORKSの総利用者数は約500万人であり、実に約26%がこの外部接続を利用している。


 B2CのLINE利用者との連携も進む。日本で9700万人いるLINE利用者のうち、2700万人のユーザーがLINE WORKSとコミュニケーションしている。総ユーザー数の約28%に及ぶ。


 「LINE WORKSを利用する理由として、LINEとコミュニケーションできる部分に多くの期待を寄せる顧客が多いのが特徴です。一方でここ数年、この機能をもっと改善できないかという要望を顧客からいただき、その施策について考えてきました」(島岡社長)


 それで新たに打ち出したのが、セールステック事業というわけだ。


 「LINEとのコミュニケーションをもっと強固にする、強化させる目的で、APIを通じ機能を拡張させ、強化していきたいと思います」(島岡社長)


 このセールステック事業を担当しているのが、営業戦略本部市場開発部の中澤亮介部長だ。事業をどのように展開していくのか。中澤部長がこう説明する。


 「Salesforceなどのように、幅広い分野で手掛けている他社製品がある中、LINE WORKSでは、まずわれわれが得意とする領域から足掛かりを作っていきたいと考えています。その一例が、B2Cにおける見込み客の獲得から商談獲得、そして契約からロイヤル化までの一連のプロセスです。特に顧客と名刺交換のごとくLINEでつながれる点は有利で、この分野を重点的に高度化していく方針です」


 LINE WORKSが提唱する営業DXの方針が、「CRM(営業支援システム)駆動によるデータドリブン性能の付加」だ。UIが優れているLINE WORKSと、9700万人が日常的に使うLINEというツールがより結びつくことによって、営業体験、顧客体験の双方の改善を目指す。


 「顧客側は日常ツールであるLINEを通じて、CRMなどに格納されている資料やデータに対し、LINEからアクセスをして情報を取得できるようになります。営業側も、CRMに格納されているさまざまなデータに基づき、5W1Hに応じた1対1のおもてなしを提供していく。このような世界観を目指していきたいと思っています」(中澤部長)


 営業体験と顧客体験双方に改善の余地がある中で、中澤部長が特に課題として認識しているのが、営業体験の効率化だという。


 「営業の効率化は道半ばであり、まだ目が向けられていない現状があるとわれわれは認識しています。ここを一つの憂慮点として考えた結果、この営業体験にフォーカスをしたサービス提供を進めていきます」(中澤部長)


 この具体例の一つが、顧客のLINE画面に「リッチメニュー」と呼ばれる追加のメニューを付与することだ。デジタル上の購買行動においては、ユーザーは些細なストレスを感じた瞬間に離脱してしまいがちだ。


 この問題に対処するためLINE WORKSでは、顧客のLINE画面上で、営業担当者に電話できるボタンを追加したり、ボタン一つで面談調整や来店アポが取れたり、契約書などの資料をワンタッチで確認できるボタンを付与する形を提案している。このリッチメニューを追加することで、顧客体験を向上させるだけでなく、一定のセルフサービス化を実現。営業の業務効率化にもつなげられる。


 営業体験においては、そのサービスを本当に必要としている顧客を効率的に限定して、LINEで一斉送信することが可能だ。


 既に先行導入事例として、トヨタ自動車系の販売会社での導入実績があるという。この販売店では、CRMを通じ店長から営業担当に対し手動でLINE WORKSで指示を伝達。CRMのシステムからは、例えば定期点検が近い顧客に対し、自動的にLINEで顧客に点検の案内を通知する体制を取っている。顧客と営業担当者との連絡も、LINEで行われている。


 これにより、顧客体験と営業体験の双方が改善。営業スタッフ1人あたり月20時間の工数削減を実現したという。


 LINE WORKSではこうした追加機能を「有償API」の課金モデルで進めていくことで、収益化を進めていく。同社のセールステック事業は2025年末から2026年初頭にかけて、本格稼働していく予定だ。


 LINE WORKSは導入障壁の低さから、中小企業での導入実績も多い。同社のセールステック事業によって中小企業のDXがどのように進んでいくのか注目だ。


(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)



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