私たちの“仕事”に適したビジネスPCをどう選ぶ? 〜CPU編〜

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2024年09月23日 12:21  ITmedia PC USER

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AutoCAD 2025の動作環境(主に2D図面)より

 本連載では、ビジネスPCを構成するパーツにそれぞれフォーカスを当て、情シスの方々に向けたビジネスPCの選び方を掘り下げていく。今回はビジネスPCの中核をなすパーツ「CPU」にフォーカスを当てて、私たちの“仕事”に適したCPU選びについて詳しく解説していこう。


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●CPUを選ぶ前に、まずは業務の洗い出しを


 CPUと一口に言っても、 低価格帯から高価格帯まで、あるいは用途に応じて非常に多岐にわたるラインアップが展開されている。安すぎるCPUを選択すると、業務に必要なアプリケーションの要件を満たせずに動作しない、動作したとしても動作自体が重たくなり、業務効率が低下する恐れもある。


 では、なるべく性能の高いCPUを選べば良いかといわれると、ビジネスPCにおいては必ずしも正しい選択とはならない。ビジネスPCを購入する上で避けては通れない予算の上限があり、限られた予算の中からモデルを選択する必要がある。


 プライベートで使用するPCなら、用途が明確に定まっていないため「今後、ゲームをするかもしれない」など、将来的に必要スペックが上がる可能性があれば、自分自身のお財布と相談して、現状よりもスペックの高いCPUを選択しても良いだろう。


 しかし、ビジネスPCに置いては、ある程度用途が定まっていることから、現状よりもスペックの高いCPUを選択すると過剰な投資となり、最大限の費用対効果を得られなくなる。まずは業務の洗い出しを行った上で、組織に適したCPUを選択したい所だ。


●最小システム要件ではなく、推奨システム要件をクリアできるCPUを選択しよう


 業務の洗い出しを行った後は、利用するアプリケーションのシステム要件をまとめよう。システム要件をまとめた上で、一番高いスペックを求められるアプリケーションのシステム要件を元に、必要なCPUを選択していくのだが、1点気を付けたい点がある。


 ここではオートデスクの「AutoCAD 2025 including specialized toolsets」(以下、AutoCAD 2025)の動作環境(動作要件)を例に挙げて解説しよう。


 AutoCAD 2025の動作環境のプロセッサ(CPU)の部分を見てみると、基本要件と推奨要件の2つが記載されている。ここで言う基本動作環境とは、AutoCAD 2025を最低限動かすためのスペックだと認識しよう。


 アプリケーションの起動や、単純な2D図面の作成であれば動作するものの、複雑性の増す操作を経るごとに動作が重たくなり、業務効率が低下する恐れがある。


 そのため、各アプリケーションベンダーが公表している推奨要件をベースラインとしてモデルを選択したい。推奨要件を満たせば、業務で利用するアプリケーションの動作自体は快適になるが、業務を行う場合はそれ以外にもWebブラウザやオンライン会議アプリなどを同時並行して利用することが大半であるため、あくまでベースラインとして定めることをオススメしたい。


●結局、CPUはAMDかIntel? どちらを選べば良いか


 必要なスペックを選ぶ方法について解説してきたが、次に立ちはだかる壁はどのメーカーのCPUを選択するかとなるだろう。x86/x64アーキテクチャのCPUと言えばRyzenシリーズを展開しているAMDのCPUか、Coreシリーズ展開しているIntelのどちらかを選択することになる。


 2017年3月2日にRyzenシリーズが発表されるまでは、AMDのCPUはIntelのCPUと比べると、どうしてもパフォーマンスに差が開きがちで選定の対象に上がってこなかった。


 しかし、Ryzenシリーズは非常に高いパフォーマンスを誇っており、今ではメインPC用としてIntelのCoreシリーズと遜色ないCPUとなっている。


 シングルコア性能の観点で見ると、Intelの方が比較的に高くなる傾向にある。その反面、マルチコア性能においてはAMDのRyzenシリーズに軍配が上がる。


 CPUパフォーマンス以外で見ると、IntelのCPUは第12世代以降から高性能なPコアと、電力効率の良いEコア(第14世代以降はさらにLP Eコア)と複数のコアを搭載する、「ヘテロジニアスマルチコア構成」を採用しており、PコアとEコアに処理を振り分ける機能「Intel Thread Director」を活用することで、高い電力効率を実現できる。


 特にWindows 11はWindows 10と比べて、Intel Thread Directorの最適化がさらに強化されているため、Windows 11搭載PCにおいてはさらに高効率な処理が可能となる。電力効率の高さは、ノートPCのバッテリー持ち時間に直結するので、ビジネスPCを選ぶに当たって大きなメリットといえる。


 ビジネスPCで利用するアプリケーションの大半はシングルコア性能の高さに依存するものが多いため、パフォーマンスの観点から見るとIntel CPUに軍配があがる。


 しかし、一般的にIntelのCPUは、AMDのCPUと比べると高価になりがちだ。おのずとIntelのCPUを搭載したビジネスPCと、AMDのCPUを搭載したビジネスPCとで価格差が生じてくる。


 そのため、パフォーマンスに重きを置く場合はIntelのCPUを搭載したビジネスPCを、コストパフォーマンスに重きを置くのであれば、AMDのCPUを搭載したビジネスPCを選択すると良いだろう。


 また、両社からは最新のCore Ultra V200やRyzen AI 300シリーズが登場している。AI機能に関するパフォーマンスを中心に性能がアップしており魅力的だが、製品が出そろうのはもう少し時間がかかりそうだ。無理をして登場を待つ必要はないだろう。


●Armという選択肢は?


 現在は、新たな選択肢としてQualcommの「Snapdragon X」シリーズという選択肢も出てきている。ArmアーキテクチャのSoC(CPU/APU)ということで、x86アーキテクチャを上回るパフォーマンスと高い省電力性が魅力だ。しかし、業務アプリケーションや業務機器との互換性という観点から、本稿では割愛している。


 ビジネスPCを選定するにあたって重要な点は、「限られた予算の中で最大限の費用対効果を得る」ことにある。今まで挙げたIntelのCPUとAMDのCPUの違いを把握した上で、自社にとって最大限費用対効果が得られるCPUを選定したい。



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