イチョウの枝、突然の落下で男性死亡……サクラの木も危ない? 倒木が相次ぐ原因はなぜ?

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2024年09月24日 08:00  リアルサウンド

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photo:sq lim(unsplash)
■イチョウの枝が突然落下

 9月12日、東京・日野市多摩平にある遊歩道「多摩平第2緑地」で突然、直径30センチほどのイチョウの枝、少なくとも6本が落下。遊歩道を歩いていた36歳の男性が下敷きになった。男性は約1時間後に救助され、病院に搬送されたものの死亡が確認された。現場となったイチョウ並木は日野市が管理していたもので、日中は人通りも多いという。


 イチョウの枝の状態は7月25日に行われた樹木点検時に確認されていたが、異常は見つからなかったという。また、事故があった当日は、強風などは吹いていなかった。近年の気温上昇の影響で、2023年にはギンナンの実が多く実り、枝に過重がかかっていたことが指摘されているが、事故の原因は調査中とのことである。普段あまり意識することはないが、こうした“危険な木”は意外に身近に存在するといわれている。


■不安視されるソメイヨシノ

 イチョウの木以上に危険性が指摘されているのが、樹齢を重ねたサクラの木だ。それは公園や学校などで見られるサクラ、すなわちソメイヨシノである。ソメイヨシノは明治時代に城跡や学校、河川敷などに盛んに植樹された。日清戦争、日露戦争などの戦勝を記念して植樹されたものもある。現在見られるサクラの名所は、この時代に植えられた木が育ったものが多い。


 一説によると、ソメイヨシノの寿命は約60〜80年と言われている。それでも各地で樹齢100年を超す木が少なくないが、枯死する例も増えているうえ、枝が折れたり、幹が腐って空洞ができるなど痛々しい状態のものも見受けられる。そうした危険なサクラの植え替えは、思ったように進んでいない。植え替えにもコストがかかるうえ、それまでサクラを守ってきた人々の高齢化も顕著であり、維持管理に苦労しているのが実情だ。


 高度成長期に完成した橋や道路など、インフラの老朽化も深刻化しており、たびたびニュースでも報じられている。


 東京都では街路樹の維持管理に対して2022年度には、街路樹の点検や剪定、老朽化した木の更新などの維持管理に約37億円を計上している。この予算は、約48万本の街路樹の管理に使われており、定期的な巡回点検や樹木診断が行われているという。また、老朽化した木は倒木のリスクを減らすため、「街路樹維持管理指針」というガイドラインがあり順次更新されている。内容は下記が主となっている。


定期点検と剪定 街路樹は定期的に点検され、特に冬期と夏期の剪定。剪定は景観の維持だけでなく、倒木や落枝による事故を防ぐための対策


危険木の管理 古くなった木や病害虫の被害を受けた木は診断され、必要に応じて撤去や更新が行われ安全性を確保


環境保護と美観 街路樹は都市の美観や環境保護にも寄与。特に、都内の「水と緑の回廊」のプロジェクトの一環として、街路樹の緑化を進める


 しかし、その更新はというと、東京都以外での自治体は、財政難などによって十分に進んでおらず、各地に危険な構造物が多数存在すると推定されている。また、このガイドラインは公道の街路樹のみに適用されるので、個人の所有地(私有地)にある樹木に関してはこの適用外だ。つまり私有地内の樹木管理は、土地の所有者の責任となり、東京都の指針や点検は及ばない。そのため私有地内の樹木が倒木の危険性がある場合や、隣接する公道に影響を及ぼす可能性がある場合には、所有者が適切な対策を講じることが求められている。


  樹木は心を癒してくれる存在である。樹木の緑や花がなくなった公園や歩道など、殺伐としてしまうだろう。最近の突然の倒木のニュースは、多くのリスクを伴うことは明白だし、今後も続く可能性は否定できない。日本は自然災害が多く、巨大台風がたびたび上陸しているし、地震も相次いで発生している。そんななかで老朽化した樹木をどう維持し、管理していくのかが問われている。



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