新卒2年目でMVP 楽天エース社員の「売上、営業とのコネも少なかった」中での奮闘記

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2024年09月24日 09:11  ITmedia ビジネスオンライン

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楽天エース社員に聞いた

 買い物や生活、レジャー、さらには携帯事業や金融系事業など、インターネットサービスを中心に、消費者の生活をより良くするためのさまざまなサービスを提供している「楽天グループ」。


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 同社が作り上げた楽天経済圏や社内公用語が英語というグローバルな環境に魅力を感じ、2018年に新卒入社を決めたのが、今回取材した兼村翼さんである。


 兼村さんは、ポイ活アプリサービス「Super Point Screen(以下、スーパーポイントスクリーン)」の新卒1人目社員として、外国籍人材が多数在籍する部署へ営業として配属された。


 プロダクトセールスとして右も左も分からない、社内でクライアント提案を担っている営業部署との関係値も全くない状態だった中で、翌年2019年には社内MVPを獲得するまでに成長した。


 たった1年で圧倒的な成果を出し、道を切り開くためにはどのような努力があったのか。成長の糸口を探った。


●売り上げも営業とのコネも少ない…… 部署初の新卒、何から手を付けた? 


 スーパーポイントスクリーンの部署には当時、ビジネスサイドと開発サイドを合わせ、約20人が在籍していた。外国籍の人材が多いことも、この部署の特徴である。新卒社員として配属されたのは、兼村さんが初めてであった。


 「当社では研修を踏まえて配属が決まりますが、私はグローバルな環境で働きたいと常に周囲に話していました。希望は実現したものの、部署初となる新卒配属ということもあり最初は不安でした。仕事に慣れていく中で、その気持ちは少しずつ和らいでいきました」と当時を振り返る。


 広告営業の経験、開発チームと会話をするために必要なプログラミングスキルもほとんどゼロの状態でプロダクトセールスを担当することになった兼村さん。スーパーポイントスクリーンの部署は2018年8月に広告部署内に移動したばかりだったため、クライアントとの架け橋となる社内の営業担当との関係は深くなく、与件も売り上げも当時は少なかったという。


 スーパーポイントスクリーンのプロダクトセールスとして社外向けに営業活動を行っていたのは、兼村さんと上司の2人のみ。売り上げを伸ばしたい一方で、活動リソースは限られていた。そこで、既存の広告運用やクライアントへの営業活動と並行して、社内の営業メンバーに対してスーパーポイントスクリーンで展開できる広告の認知と販売強化を目的とした勉強会を開催。毎月のように勉強会を実施した結果、これまで接点がなかったクライアントとつながることができた。当時はコロナ禍前であったため、来店促進など、店舗を持つクライアントへの提案が特に効果を発揮した。


 勉強会以外にも、営業の週次定例などで、提案の切り口や直近の導入例などを共有し続けた。「サービスの多い楽天だからこそ、情報のアップデートは重要です。5分でもいいので時間をもらい、定期的な共有を心がけました」と兼村さんは話す。要望があればすぐに相手の元へ飛んでいき、勉強会や説明会を実施したという。


 これらの地道な取り組みが実を結び、プロダクトセールスとして商談に同席したり、他チームの営業と連携して広告を提案したりする機会が創出され、売り上げも増加していった。


●ポイ活×位置情報 新しい広告ソリューションが誕生


 兼村さんはスーパーポイントスクリーン内での新しい広告ソリューションとして、位置情報とポイントを生かした施策を打ち出し、2019年に楽天賞を獲得するが、この時のヒントになったのが営業同行だった。実際にクライアントと話す中で「顧客の抱える課題から、位置情報を活用した施策にニーズを感じた」という。


 当時、店舗を持つ多くの企業が「来店促進施策を展開しているが、実際それによって消費者が来店したのか、商品を購入したのかをトラッキングできていない」という課題を抱えていた。この課題を解消するために、営業やエンジニアたちと連携して作成したのが「O2Oの広告ソリューション」である。楽天ポイントをフックにした送客と顧客行動の可視化によって、位置情報を活用した来店促進の効果と顧客分析までが可能になった。


 「これまで現場の肌感でしか把握できなかった来店状況をデータで追跡し、どんな人が何人来たのかといった情報を可視化できたことがクライアントに強く響きました」


 新しいシステムをゼロから制作するにあたり、営業担当と密に連携した。代理店やクライアントの元へと何度も足を運び、「どういった設計が必要か?」「提案の可能性はあるのか?」などの話し合いを重ねた。また「データをトラッキングし、評価することはそもそも可能なのか?」など、広告ソリューションとしての実現性についてもエンジニアと協議を重ね、数カ月単位で提案から実行までを行った。


 「エンジニアチームと膨大な位置情報のビッグデータ活用に向けたデータ抽出や分析の仕組み化など、テクニカルな話を詰めていきました。その他、見積作成やレポート作成に向けて、アプリデータの理解と抽出言語を自ら学習し、クエリの作成やデータサイエンティストとの連携にも取り組みました。ゼロから立ち上げたり、学んだりするのは確かに大変でしたが、これまでにないものをつくることは非常に楽しかったです」


 エンジニアチームには外国籍のメンバーも多数在籍している。兼村さんの英語力によって事業部内でのスムーズな連携が実現したようだ。


 結果、兼村さんたちが考案したO2Oの広告ソリューションを含めた外部広告売上額は、2019年度に前年比200%超えを達成した。楽天グループは、楽天市場がスーパーポイントスクリーンに広告を掲出するといった相互送客施策を展開することもあるが、今回の売り上げは楽天グループ外のクライアントからの広告出稿が対象。外部クライアント売り上げのみで前年比を大きく上回った成果が評価され、兼村さんは2019年の楽天賞MVPを獲得する。


【訂正:2024年9月3日午後4時27分 初出で「O2Oの広告ソリューションによる売り上げ」と記載しておりましたが、「O2Oの広告ソリューションを含めた外部広告売上額」に訂正いたします。】


 楽天賞は月に1度、会社に貢献した社員を表彰する報奨制度である。楽天グループが事業を通じて実現しようとしている価値観や成功コンセプトである「楽天主義」を体現したチームや個人に贈られる。兼村さんは、この受賞が大きな成功体験になったと話す。


 「クライアントの課題を踏まえ、これまでにないものをつくり、実行する。このベーシックな成功体験を入社間もない時期に経験できたこと、そしてこの時の学びが今の仕事にも生かされています」


●今もこれからも、とことんクライアントに向き合い続ける


 楽天のさまざまなアセットを使い、広告を運用することに興味があった兼村さんは、ジョブローテーションの一環として、2020年7月に広告営業へと異動した。


 そして、2023年1月からは楽天市場を軸としたプラットフォームで活動する「アカウントイノベーションオフィス」に所属している。同部署はナショナルクライアントの販売促進に向けて、楽天市場における販売支援といった店舗コンサルティング、楽天市場におけるブランド認知や告知などを担う。兼村さんはこの部署で、家電業界を中心に担当する。


 入社から約6年が経過し、着実に営業としてのキャリアを重ねているが、「EC店舗のコンサルとしてはまだ1年半ほどなので、さまざまなことを吸収し、お客さまへの提案に生かしていきたい」と兼村さんは意欲を見せる。


 「わたしの強みはデータを軸とした提案ができることです。これまで関わってきたサービスのさまざまなデータを分析してきた経験が基になっています。店舗コンサルとして、クライアントへの提案はもちろん、売り上げに苦戦している店舗や新たな施策を試みたい店舗に対しても向き合い、引き続き解決に貢献できればと思います」


 現在、家電業界はコロナ禍の巣ごもり需要で盛り上がった市場が落ち着きを見せ始め、各メーカーも苦戦しているという。「売り上げ低下の理由が分からず、頭を抱えられているクライアントも少なくはありません」と兼村さんは話す。


 「特に家電は購入までのリードタイムが長く、ステップも多いため、マーケティングと販促支援が非常に重要です。例えば、新商品が出たタイミングでは、楽天市場内でのブランド認知をさらに強化するために、商品発売に合わせたイベントの開催を提案しています。クライアントの商品がしっかりと売れるよう、楽天市場の強みを生かしたイベントやポイント施策を提案し、ご支援していきます」


 楽天市場から得られるあらゆるデータを活用し、施策を提案し続けられるのも、データと向き合い続けてきた彼ならではだろう。


 兼村さんは仕事への向き合い方についてこう話す。


 「目の前のクライアントに向き合い、とことんやっていくという姿勢は、どこの部署で働いていても新卒1年目から変わりません。仕事柄、施策を進める上で社内とのコミュニケーションは不可欠です。社内外問わず、どの点を解決すれば満足度が向上するかを常に意識し、引き続き取り組んでいきたいと思います」


 強みであるデータ活用と顧客に向き合う姿勢で常に道を切り開いてきた兼村さん。顧客のために行動し続けられる彼なら、きっとこれからも、多くのクライアントの悩みに向き合い、一つずつ成果へと結びつけていくに違いない。



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