阿部巨人4年ぶりの優勝へ! 平成の「坂本・長野」から、令和の「岡本・吉川」のチームへ

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2024年09月24日 16:11  ベースボールキング

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巨人の岡本和真(左)と吉川尚輝(右) (C)Kyodo News
◆ 主軸は29歳と28歳のドラ1コンビ

 令和の巨人軍は「坂本・長野」のチームから、「岡本・吉川」のチームへ———。

 混セを頭ひとつ抜け出した阿部巨人は残り6試合で、2位阪神に2ゲーム差をつけ、優勝マジック4(23日現在)と4年ぶりのリーグ優勝へ向けてラストスパートに入っている。その中心にいるのは、「3番二塁」吉川尚輝、「4番一塁」岡本和真である。開幕からフル出場を続ける両者は9月10日の広島戦から3番と4番で固定され、16日の中日戦(東京ドーム)では2試合連続アベックアーチを記録。スポーツ報知によると、巨人3・4番コンビの2試合連発はあの“オガラミ”こと小笠原道大とアレックス・ラミレス以来14年振りだった。

 29歳の吉川は9月の19試合で月間打率.380と調子を上げ、28歳の岡本も9月は5本塁打、13打点で13試合連続安打中と首位を走るチームを牽引している。ともにドラフト1位組だが、16年1位の吉川の入団は高橋由伸監督時代で、14年1位岡本の1年目は第二次原政権のラストイヤーだった。さらに言えば、現在売り出し中の19歳浅野翔吾は、第三次原体制最終年のドラ1選手である。

 いわば、原門下生と由伸チルドレンのハイブリットジャイアンツ。この10年間、巨人が追い求めた次世代のチームの形が2024年の阿部巨人でついに実現した。それは、同時に2010年代、平成後期の巨人の象徴でもあった「坂本勇人のチーム」、もしくは「坂本勇人と長野久義のチーム」が名実ともに終焉することを意味していた。


◆ 長くチームを支えた坂本の低迷

 今から10年前の2014年シーズン、原巨人は2度目のリーグ三連覇を達成した。しかし、12年の日本一をピークにチーム力は徐々に下降線を辿り、当時35歳の阿部慎之助は満身創痍で翌15年から一塁コンバートとなる。いわば、主将を任され、「4番捕手」として原巨人を栄光に導いた「阿部のチーム」の時代が終わりを告げたのである。

 そして、第二次原政権ラストイヤーの15年にキャプテンの座を継承したのが坂本勇人であり、高橋由伸監督1年目の16年に約2カ月間に渡り4番で起用されたのが、長野久義だった。この年、「3番坂本、4番ギャレット、5番クルーズ」で開幕した巨人だったが、Bクラスに低迷すると5月29日から7月23日まで「4番右翼・長野」で臨むも、後半戦は「4番一塁・阿部」で固定された。あくまで、プロスポーツにおいて育成は「目的」ではなく、勝利への「手段」である。

 当時、長野は31歳。2012年に最多安打のタイトルを分け合い、16年に首位打者に輝いた4歳下の坂本とのサカチョーコンビで、これからのチームの土台になってほしいと首脳陣は世代交代を目論むも、背番号7は膝の故障もあり低迷。岡本という次世代の4番候補が台頭し、18年オフにはFA移籍の丸佳浩の人的補償選手で、広島へ移籍した。

 原監督が復帰した巨人は、全盛期を迎えた坂本、若き大砲の岡本、そして補強組の丸と理想的な三本の矢で19年と20年にはリーグ連覇。しかし、20年に31歳11カ月で通算2000安打を達成した背番号6も30代中盤を迎えると、19歳から遊撃手で試合に出続けてきた勤続疲労からか故障がちとなり、23年9月にはついに三塁コンバート。今季は三塁守備では軽快な動きを披露しているが、打撃不振が続き105試合で打率.234、6本塁打、31打点とレギュラー定着後自己ワーストの成績である。


◆ 巨人軍の“新時代”の始まり

 2024年、45歳の阿部慎之助監督のもと、29歳の吉川尚輝と28歳の岡本和真が3・4番コンビを組み、35歳の坂本勇人はときに「7番三塁」で先発出場。23年に巨人復帰した39歳の長野久義は基本的に代打としてベンチにスタンバイ。なお、長野は12年前に東京ドームで配布されたプレーヤーズ・プログラムで、「子どもの頃に憧れていた選手」として、ある仕事人の名前を挙げている。

「大道(典良)さんです。僕は九州出身なので福岡ドームに試合を観戦しに行ったときにはダイエー時代の大道さんをよく応援していました。とにかく渋いし、勝負強い!! 」

 時が流れ、今はあの頃の大道のような代打の切り札役を長野が担っているわけだ。巨人時代の大道は持ち前の勝負強さで、08年6月21日ソフトバンク戦、9回二死走者なしの場面で完封勝利目前の杉内俊哉(現巨人投手チーフコーチ)から、起死回生の代打同点アーチをかっ飛ばした。ちなみに、その試合で延長12回にサヨナラ打を放ったのは木村拓也である。

 当時、大道は38歳、木村が36歳———。まさに今の長野や坂本と同世代である。V3を達成した頃の巨人は、彼らのような百戦錬磨の仕事人たちが顔を揃えるプロの集団だった。今度はベテランになった長野や坂本が、大道やキムタクのように、勝負どころのジョーカー役としてチームを支える番だ。

 阿部監督もここぞの場面では、修羅場をくぐってきた彼らの力を頼り、そのプライドを刺激する起用法を見せている。阪神との天王山では、22日に長野が「5番レフト」で先発すると2安打。23日はスタメンを外れた坂本が代打で値千金の決勝タイムリーを放った。どんな偉大な選手も永遠ではない。高橋由伸も現役時代の阿部慎之助も30代後半に差し掛かると、代打の切り札として若い頃とは違う仕事をまっとうしたものだ。

 栄光の4番キャッチャー阿部時代も、青春のサカチョー時代も過ぎ去り、岡本和真と吉川尚輝が中軸を担う、あの頃の未来に巨人軍は来たようだ。

 現在、優勝マジック4。なお、21世紀の巨人のリーグ優勝は9度。そのすべての優勝監督が原辰徳だった。ついにアフタータツノリ時代へ突入。2024年、阿部監督の胴上げが実現すれば、名実ともに巨人軍の新時代の始まりとなるだろう。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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