「コストコ愛」アジア人が強いのは、なぜ? “熱狂”を生む仕組み

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2024年09月27日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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なぜコストコは人気なのか

 日本で大人気の会員制の大型スーパー、コストコ。テレビや雑誌などで特集が組まれることも珍しくなく、注目されている店だ。


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 2024年7月、全米小売業協会は世界の「2024年小売企業トップ100リスト」というランキングを公開した。これによると、1位はウォルマート、2位はアマゾン、3位はコストコと続く。


 日本ではすでに全国で35店舗を展開している。特に最近になって、日本で新規開店が続いている。


 2024年8月には沖縄県南城市に沖縄で初の店舗がオープンし、さらに同月、滋賀県東近江市にも新店舗を開店。また11月には、福岡県小郡市に「コストコ小郡倉庫店」がオープンする予定だ。沖縄の店舗では、あまりの混雑ぶりに周辺地域で苦情が出ていると報じられたほど注目されている。


 最近、そんなコストコを取り上げた米国のコメディアンの動画が英語圏で話題になっている。というのも、なぜかアジア系は他の人種に比べて“コストコ愛”が強いというのである。そこで今回は、その説が本当なのか考察してみたい。


●なぜアジア系はコストコ愛が強いのか


 まずその説は、数字が証明している。米国人全体で見ると、2023年にコストコで一度でも買い物をしたことがある世帯の割合は、実に45%にも達する。そして一度の買い物で使う金額は平均で100ドル(約1万4000円)だったという。


 それを踏まえた上で、米国の小売業界を専門とする市場調査会社ニューメレーターによれば、2023年時点で米国の人口でアジア系が占める割合は7%ほどに過ぎないが、コストコ会員の10%がアジア系であることが分かっている。


 アジア系の消費者がコストコを選ぶ背景として、世帯人数が一般的な米国人家庭よりも多いことが挙げられる。そのため、まとめ買い需要に応える商品が充実しているコストコが選ばれるというわけだ。


 米マーケティング大手ニールセンIQは、コストコに集まるアジア系について「アジア系米国人の人口増加率の高さは、彼らが今後さらに大きな市場の変化を生み出すことになるという見方を裏付けている」と分析した。今後、コストコに集まるアジア系の数がさらに増えそうだ。


 米NBCニュースは「アジア系米国人がコストコで買い物をする割合は、一般消費者の約2倍である」という見出しで記事を掲載。コストコがいかにアジア系に愛されているのかを報じている。


 YouTubeの登録者が210万人を超えているユーチューバーでアジア系米国人のファン・ブラザーズも、アジア系のコストコ愛について分析。次のような理由を挙げている。


・大量買いができる


・アジア系はレストランなど小規模なビジネスを行っていることが多いので、仕入れ先としてコストコは重宝する


・アジア人は歩くのが好きだから広いコストコに行きたがる


・1ドル50セントのホットドッグに、おかわりし放題のジュースが「米国」を感じられる


●日本、韓国、台湾に多数出店


 さらに米国のコメディアンなども、アジア人のコストコ愛を話題にすることが少なくない。例えば、中国系米国人の女性コメディアンであるアリー・ワンは「コストコはアジア系にとっての教会のようなものよ」と話し、アジア人は教会に行くかのごとく定期的にコストコに足を運んでしまう、と笑いを誘っている。


 さらに香港生まれの米国人人気コメディアンであるジミー・O・ヤンもスタンダップ・コメディでこう話している。「コストコに行ってみると分かるけど、年寄りのアジア人だらけだろ? なぜかって、コストコでだまされることはないからね」


 英語があまり得意ではない移民の年配アジア人が安心して買い物できるのがコストコだ、と笑わせている。


 また、インド系など東南アジアからの移民にとっても、コストコは米国の象徴のようである。インド系米国人の中には、自分たちを「コストコマニア」と呼ぶ人たちが存在しているとメディアに取り上げられている。


 コストコの海外進出を見ても、アジアで愛されているのがよく分かる。コストコは世界で890店舗を展開しているが、最も店舗数が多いのは言うまでもなく米国で614店舗。次いで同じ北米のカナダとメキシコが続くが、その次に店舗数が多いのは日本だ。すでに述べた通り、日本には35店舗が存在し、36カ所目が11月にオープンする。


 人口が日本の半分以下の韓国にもコストコは19店舗あり、人口が日本の6分の1である台湾にも14店舗が存在する。売り上げで見ると、韓国と台湾が世界でも上位に入り、会員数も多いという。中国本土にも7店舗ある。


●「派手な消費」の欲求を満たしてくれる


 もともとコストコは、1983年に米ワシントン州シアトルで、会員制の店舗としてオープンし、会員数は世界で1億3400万人にも達している。米ニューヨーク・タイムズ紙は、コストコは一度会員になるとほとんど退会しないため「カルト教団に似ている」と表現する。加えて「コストコは表向きは格安ショップであり、食料費をできるだけ節約するための場所だ。だが同時に、米国人のほとんどが持つ『派手な消費』という欲求を満たしてくれる」とも指摘する。


 そしてコストコ自体も、アジア人に刺さっていることは認識しており、米国で店舗数が多い地域はアジア系が好んで暮らす大都市圏などに集中している。また、例えば即席ラーメンやうどん、タイ米やキムチなど、アジア系スーパーでしか買えなかったようなものも、今ではコストコで手に入る。それもアジア人会員を意識してのことだ。


 日本でもコストコマニアは多く、メディアでも好意的に取り上げられてきた。一方で、2024年3月には、公正取引委員会から勧告が出されている。NHKの報道によると、コストコが「総菜やパンなどの食料品を安売りする際、納入業者に値引き分の一部を負担させていた」という。また、商品の品質に問題があったとして業者に返品する際、「本来求められる納入時点での検査をしていないケース」があったしている。加えて「新規開店の際、試食品を出すための費用を業者側に負担させていた」ケースも確認されたと報じている。


 コストコはいつもかなり混んでいて、最近では筆者の取材でも、欠品が多く、欲しいものが手に入らない、といった声を聞く。インターネットでコメントを見ていても、コストコを苦手に感じている人が少なくないことが分かる。


 それでも、ビジネス面ではアジア系やアジア諸国で人気なのは間違いない。日本でも「近くにある米国っぽさを感じられるお店」ということで今後も人気は続くと予想され、地方を中心に店舗数を増やしていくだろう。


(山田敏弘)



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