「サラリーマン金太郎」連載開始30年で映画化、３代目金太郎は鈴木伸之で前後編２部作公開

本宮ひろ志氏の漫画「サラリーマン金太郎」が、1994年（平6）の連載開始から30年をへて映画化され、鈴木伸之（31）が主演することが26日、分かった。これまで2度、実写化されているが、価値観の変容、コンプライアンスの厳格化も踏まえ、令和の時代に即してオリジナル要素も加えてアップデート。25年に「サラリーマン金太郎【暁】編」（25年1月10日公開）「−【魁】編」（同2月7日公開）と、前後編2部作で公開する。

　　　◇　　　◇　　　◇

累計発行部数3000万部を記録し、99年に高橋克典（59）08年には永井大（46）が演じた、平成の世を駆け抜けた伝説のサラリーマン・矢島金太郎の3代目を、鈴木が演じる。「脚本からにじみ出るキャラクターの芯の強さを大切にしながら、言葉1つ話すのも難しく感じてしまうこのご時世に型破りに突き進んでいく令和版金太郎を演じていてとても爽快感を感じました」と演じた率直な感動を口にした。

原作をベースに、社会構造や地球環境の変化も考慮しオリジナル要素を加えた。まず、原作では金太郎は元暴走族で、漁の最中に漂流していたヤマト建設の大和守之助会長を救い、見習社員として入社する設定だった。今作では、破天荒な漁師に設定を変え、環境問題でマグロが捕れず、漁師も減少する中、息子を育てるために東京に出る形に変更した。入社当時の仕事は、原作では鉛筆削りだが、植栽の水やりに変えた。

前田利洋プロデューサーは「インターネットの普及で人々の暮らし、仕事、犯罪など30年前と比べ大きく変わっています。また当時に比べ地球の環境も変わって来ています」と説明。「最後までに検討した部分が、金太郎の会社での仕事です。協力して頂いた大林組を何度か取材を重ねている中で、今の時代の作業のハイテク感などから鉛筆を使う事に違和感があり、植栽に変えました。ゼネコンの根幹、モノづくりの根幹、会社の根幹は土にあり、その原点を大切にする思いを鉛筆ではなく植栽で表現しています」と明かした。

下山天監督（58）は「危うきものは排除するコンプライアンスに縛られた今の時代に、大義のためならルール違反もいとわぬ型破りなサラリーマンが存在し得るのか…いや、さまざまな制約でがんじがらめの現代だからこそこそ、われらは矢島金太郎の出現を待ち望んでいる」と、令和の時代にこそ作るべき作品だと強調。その上で「そんな僕の夢を主演の鈴木伸之さんは見事にかなえてくれました」と、鈴木の役作りの姿勢をたたえた。

同監督は「想像を超えたリアル矢島金太郎がカメラの前に現れ、撮影初日からアクセル全開でその勢いは長丁場の撮影中も全く衰えず、最後まで全力で突っ走ってくれました」と、撮影中の鈴木のたくましい姿を生々しく振り返った。そして「そのパワーとスケール感の中に垣間見る優しさと真摯（しんし）なお芝居への取り組みに、演出を忘れて涙があふれた事もしばしば。スタント必須のシーンも全カット自らこなし、さらに満身創痍（そうい）中『もう1回やらせて欲しい』と粘る姿勢は、まさに本宮先生の描いてきた漢達のそのものでした」と、鈴木が“リアル金太郎”だと絶賛した。

後編は環境、エネルギー問題をテーマにした物語を展開。金太郎のライバルの元官僚・鷹司誠士を、金太郎とアプローチは正反対ながら会社と日本のために環境、エネルギー問題を考えた設定に転換した。下山監督は「鈴木さんが演じる新しい時代の矢島金太郎が持つ普遍の強さと正しさは、新しい日本のアップデートへの手掛かりになると確信しています」と期待。前田プロデューサーも「政治への不信、広がる格差社会、将来への不安しかない今の日本。言いたい事も言えない世の中だからこそコンプライアンス無視の破天荒な男、矢島金太郎が必要だと思いました。金太郎のストレートで熱い想いが人々の心を動かし、会社で成り上がって行く姿に、胸がスカッとし、背中をちょっと押される事でしょう」と続いた。

鈴木は「時代と逆行する金太郎が社会とどう対峙（たいじ）していくのか見届けていただけたらうれしいです。毎日喉が枯れヘトヘトになって帰路についた日々が懐かしいです。力余すことなく挑戦した作品です。皆さまに少しでも愛される作品になりますように」と力を込めた。

◆「サラリーマン金太郎」過去の実写化　高橋克典主演で、TBS系で1999年（平11）00年、02年、04年と計4シーズン、連続ドラマが放送。99年11月には映画「サラリーマン金太郎」（三池崇史監督）が公開された。08年には、永井大主演でテレビ朝日系で連続ドラマが制作、放送され、10年には第2シーズンが放送された。