バルセロナが今季好調! 林陵平がその理由を深掘り解説「中央から攻撃できる」「むしろ守備がいい」

0

2024年09月27日 17:31  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

林陵平のフットボールゼミ

ハンジ・フリック新監督率いるバルセロナが、今季開幕から好調だ。攻守において明確に変わった部分があるという。人気解説者の林陵平氏に分析してもらった。

【動画】林陵平の解説フルバージョン「フリックはバルサをどう変えた?」↓↓↓

【ボール保持しながら縦への速さもある】

 今季のバルセロナ初期配置は4−2−3−1です。ビルドアップの局面では、ピボーテ(ボランチ)のふたりのうち、マルク・カサドがアンカーの位置に入り、ペドリが左のインサイドハーフの位置に少し上がって、トップ下のダニ・オルモが右のインサイドハーフを務めるような形になります。

 ここで、相手にDFラインからカサドへのパスコースを切られた時に、ペドリが少し下りてきてあげて、カサドをサポートします。状況に応じてペドリが調整役となるのが今季の形かなと思います。

 前線は、右と左で作りが違っています。左のラフィーニャはかなり中に入ってきて、1トップのロベルト・レバンドフスキとの距離が近くなり、セカンドトップみたいな形。空いた大外のレーンは、左サイドバック(SB)のアレックス・バルデが高い位置をとって担当します。

 右はやはりラミン・ヤマルの1対1の突破能力を活かしたいので、基本は大外にいますね。右SBのジュール・クンデは、後方でサポートするプレーが多く見られます。

 もともとバルセロナはボールを保持できるチームなので、相手がどちらかというとブロックを組んで守るケースが多い。しかし、今季のバルセロナの強さは、そうした引いた相手もすごく崩せているところです。

 今までだとボールを持った時に、足元、足元へとつないで、あまり怖さがなかったんですが、そこでやはりハンジ・フリック新監督になって変わったのは、縦の速さです。ポゼッションだけではなくて、相手の背後を狙う。そこへアタックする選手がとにかく多いですし、配球もまずは背後からという狙いが見えます。

 ラフィーニャが特に輝いているのは、この相手の背後への斜めのランニングがあるからです。もちろん右のダニ・オルモもライン間(相手DFラインとMFラインの間)にはいるんですけど、そこからやはり背後を常に狙っている。ボールを保持しながらも、相手の最終ラインへのアタックが常に行なわれているっていうのが、今季のバルセロナのよさかなと思います。

【中央から攻撃できるのが強み】

 そうして相手のDFラインが下がったら、今度はライン間を使うといった使い分けもうまいです。あとは相手が陣形をコンパクトにしてきた時でも、中央の攻撃を本当にうまく使えていると思います。ここにはラフィーニャが入ってきて、ペドリもいる、ダニ・オルモもいて、最前線にレバンドフスキがいる。

 そのなかでは、やはりダニ・オルモとペドリですよね。このふたりが真ん中にいることによって、センターバック(CB)のパウ・クバルシやイニゴ・マルティネスから縦パスが出せますし、カサドもボールを受けた時に前に出せる。とにかく相手のライン間で、ペドリ、ダニ・オルモやラフィーニャも含めてボールを引き受け、前を向けるのが大きいです。

 両サイドの高い位置にバルデやヤマルがいるので、そこにボールを出すこともできるんですが、こればかりだと相手のブロックの外で回すことになり、怖くない。ところが今シーズンのバルセロナは、中にボールを刺せるんです。そこからペドリ、ダニ・オルモらとレバンドフスキのコンビネーションで突破できる。

 また、それを警戒して相手が中を閉めてくると、ここで外のバルデやヤマルがフリーになって、サイドからの攻撃も生きてくる。今シーズンは、こうした攻撃のバリエーションが本当に多彩で、かなり強みになっています。

 さらには、ボールロストしたあとの守備。カウンタープレスですね。ボールを保持してゆっくりと全体を押し進めながら攻撃しているので、陣形が整っているわけです。それだけにカウンタープレスが速い。これはフリック監督の特徴で、ドイツ代表監督時代からもそうでしたが、選手たちの反応のスピードが速いです。

 だからボールを奪われてもすぐに奪い返して、二次攻撃、三次攻撃につながっています。攻撃から守備のつなぎ目がないような状態でプレーできているのが、今のバルセロナかなと思います。

【面白いプレッシャーのかけ方】

 次に守備の話です。ここまで攻撃の説明をしてすごく強いなと思われたでしょうが、今のバルセロナの好調の要因として僕が思うのは、守備です。

 相手がボールを持った時の守備面もしっかり整備されていて、相手によって守り方を変えているんです。例えば4−4−2や4−2−3−1のチームのDFラインに対して、ダニ・オルモとレバンドフスキが前に出て、サイドをラフィーニャとヤマルが抑えるような4−2−4になるのは結構ある形。

 ところがバルセロナが面白いのは、ダニ・オルモとレバンドフスキのふたりが相手の2ボランチの側で彼らへのパスコースを塞いでいるように見る。そしてふたりのCBに対しては、ラフィーニャとヤマルが外からプレッシャーをかけるんです。この形はなかなか見ないので、すごく面白い守備のやり方だなと思います。

 相手のSBは結構フリーになるんですけど、ラフィーニャとヤマルが外切りでパスコースを消しながらプレッシャーをかけていくので、相手のCBはなかなかパスを出せません。では中から前進となると、ボランチへのパスコースはダニ・オルモとレバンドフスキが切っているので、出口を失ってしまう。

 もしSBに出されたとしても、そこはバルデとクンデが縦方向にスライドしてプレッシャーをかけることになっています。では、そうなった時に空いてしまう相手のウイングをどう捕まえるのかというと、そこにはボランチの選手がスライドして守る。

 こうして守備の仕組みが作られていて、すごくしっかり整備されています。

【相手によって守り方を自在に変える】

 では、違うビルドアップの形の相手、例えば第4節のジローナ戦ではどう守ったか。ジローナは4−2−3−1の基本陣形のところから左SBがかなり中に入ってきて、後ろが3枚気味の3−2−5のような形で、うまくビルドアップしてくるチームでした。

 これに対してバルセロナは、相手の後ろ3枚に対して、前の3人、ヤマル、レバンドフスキ、ラフィーニャを当てました。そうなると相手の2ボランチに対してダニ・オルモひとりでは見られないので、ペドリが出ていってふたりで捕まえる。それで、カサドが相手のシャドーのひとりを捕まえて、もうひとりをどうするかなと思ったら、右SBのクンデを出して捕まえた。こうなるとバルセロナの最終ラインはそれぞれ1対1の数的同数になってしまうんですが、そのようなはめ方をしました。

 このように、相手によって自分たちのプレッシャーかけ方も変えながら守る。本当に自在に変えている。このあたりの整備がすばらしいなと思います。

 前線の選手たちも(パスコースに)規制をかけるというよりも、プレッシャーをかけにいったら、もうボールを奪いきろうとしています。大体前線の選手規制だけかけて、後ろで取ればいいでしょとなるところなんですが。でも、こうして一人ひとりのボールホルダーに対してプレッシャーがしっかりかかっているので、後ろの選手たちも相手を掴みやすいというシーンが見られています。

 本当に守備がいいんです。「むしろバルセロナ、守備がいいんだよ」というところが、今の強みだと思います。

    ニュース設定