YouTubeには架空の「奇妙な雑学」を投稿し続ける“謎のチャンネル”がある――ホラー好きの間で人気急上昇中の動画クリエイターに「発想の源泉」を聞いた

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2024年09月28日 21:03  ねとらぼ

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「空に触らないで」という“謎のチラシ”……

 YouTubeには架空の「奇妙な雑学」を投稿し続けているチャンネルがある――そんな都市伝説のようなYouTubeチャンネルが今人気を博しています。その名は「奇譚師にんぎょ」。約31万人のチャンネル投稿者を誇る注目度急上昇中のクリエイターに「発想の源泉」を聞きました。


【画像】「奇妙な雑学」を見る


●本当にありそうでゾワゾワする「奇妙な雑学」たち


 奇譚師にんぎょさんは、2023年7月から動画投稿を始め、2024年9月現在では52本の動画を投稿している動画クリエイター。そのスタイルは、真ん中に写真が用意され、上下が白塗りになったYouTube ショートやTikTokでよく見かける“雑学動画”です。


 しかし、内容はかなり異質で「近畿地方の一部地域では『この人を捜さないで』と書かれたポスターが掲示されていることがある」というものや、「国道157号線沿いの獣道を進むと『この先、時間経過なし』と書かれた看板が立てられていることがある」など都市伝説めいた異常現象を扱う「奇妙な雑学」ばかり。


 例えば、「『空に触らないで』に関する恐ろしい雑学」という動画では、近隣住民から届けられたらしき「空に触れることの危険性」を記した“謎のチラシ”についての解説がされますが、実際のチラシを写した画像つきで紹介されることもあり、一見“本当の雑学”だと信じてしまいそうになります。


 しかし、最後まで見ると「この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません」との注意書きがしっかりと表示され、あくまで“架空の雑学”だったことが判明。本物にしか見えない不気味な画像も、AI生成を繰り返して出力したものなのだそうです。よかったぁ……。


●「発想が秀逸」「天才すぎ」など反響


 そんな良質な“架空の雑学”を披露している奇譚師にんぎょさんのチャンネルには、「ゾクゾクする」「発想が秀逸」「一瞬本当かと思った おもろい」「天才すぎ」「平行世界のshortが流れてきてる感じして好き」などさまざまなコメントが。


 また、X(Twitter)で人気急上昇中のモキュメンタリ―風謎解き「#この謎解きはフィクションです」の制作を手掛ける謎解きクリエイターの角谷進之介さんが、ねとらぼ編集部のインタビューに対し好きな作家の1人に奇譚師にんぎょさんを挙げるなど、新進クリエイターにも影響を与えています。


 最近では各所にちりばめられた謎から動画どうしのつながりを考察する人も多くなっており、連帯した1つの世界観を形成しつつ人々を魅了している「奇妙な雑学」たち。ねとらぼ編集部ではそんな秀逸な作品を次々世に繰り出し続ける奇譚師にんぎょさんに、始めたきっかけや影響を受けた作品など「発想の源泉」を尋ねました。


●奇譚師にんぎょ「現在走馬灯を見たことがある方を捜しています」


―― 奇譚師にんぎょさんの動画では、思わずゾクッとしてしまう“架空の雑学”が紹介されていますが、そのような形式で投稿しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?


奇譚師にんぎょさん: いわゆる「雑学系ショート」の形式はYouTubeユーザーの皆さまの目にとまりやすいフォーマットであり、分かりやすく情報をお伝えするのに適していると考えたからです。またクリエイター目線で言うと、編集コストが低いというのもあります。


―― 動画で紹介されている数々の“異常現象”は現実と地続きのような恐ろしさがありますが、設定やストーリーなどはどのように考えているのでしょうか?


奇譚師にんぎょさん: 日々の生活の中で思い浮かんだことをもとに考えています。


・「人肉ってどんな味なんだろう」


・「もし自分にしか見えない人間がいたら?」


・「夢から永遠に抜け出せなかったら?」


 そんなとっぴな妄想を、誰しもしたことがあると思います。それらを雑学の形式で分かりやすく言語化した結果が、私の動画です。


―― また、影響を受けた作品や雑学を思い付くためにしていることなど、発想の源泉についても教えてください


奇譚師にんぎょさん: 影響を受けた作品は、「世にも奇妙な物語」や星新一のSS(ショートショート)、SCPなどです。私の動画は「ホラー」というジャンルに区分されることが多いですが、ホラーはあまり通ってきていません。


 世にも奇妙な物語で好きな回は、ベタですが「懲役30日」(※)です。今気が付きましたが、「罪人が苦しみながら永遠に近い時間の中で罪を雪ぐ」というストーリーラインは「fujita.mp4に関する興味深い雑学」にて分かりやすく影響を受けていますね。


※三上博史主演のSFホラー作品。死刑制度が廃止された世界で、7人もの人間を殺害し「終身刑」だと思われた男になぜか「懲役30日」の刑が科せられるという話。「世にも奇妙な物語」ファンの間で長い間根強い人気を誇る名作で、DVD「世にも奇妙な物語 DVDの特別編 3」に収録されている。


 お話を考えるときには特別なことはしていません。強いて言えば、日々の生活の中でアンテナを少し高く張っておくと、話のネタが見つかることがあります。


―― にんぎょさんが初見の人にオススメしたい動画3選を見どころとともに教えてください


奇譚師にんぎょさん: 以下の3本です。


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【感染性記憶変容症候群に関する面白い雑学】


 人間は常に変化し続ける生き物です。例えばあなたが30歳だとして、10歳のときのあなたを構成していた細胞は一部を除き入れ替わっていますし、思考・精神・行動原理等もまた、まるっきり別のものになっていると思います。


 果たしてそれは同じ人間といえるのでしょうか。一般的には「成長」という言葉で片付けられるそれを、「精神疾患」という別のアプローチから捉え直してみた動画です。


【ニュードレプス症候群に関する恐ろしい雑学】


 夢を見ている最中って、その世界でとてつもなく長い時間を過ごしているかのような感覚になりますよね? この動画ではその現象の原因について、答えを出しています。特に明晰夢を一度でも見たことがある方には、ぜひ見ていただきたい動画です。


【上に住む者に関する恐ろしい雑学】


 私は普段怖い動画を作ろうとして動画制作をすることはないのですが、この動画は珍しく、怖いものを作ろうとして作った動画です。1分間という時間的制約の中で、ジャンプスケア(※筆者注:見ているものを「ワッ」と驚かせるような演出)を使用しない映像としては、それなりに怖いものになったのではないかと思います。大きな音や恐ろしい画像で怖がらせるような動画ではないので、ホラーが苦手な方にも見ていただけると思います。


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―― 現在チャンネル登録者が30万人を突破し注目度が高まっていると思いますが、心境はいかがでしょうか?


奇譚師にんぎょさん: 大変うれしく思いますが、数字に強いこだわりはありません。細く長く、続けていけるように頑張ります。


―― 初期はオムニバス形式の独立した“奇妙な雑学”という印象でしたが、最近では世界観がつながりを見せ始めているように見受けられます。コメント欄でもさまざまな考察がなされていると思いますが、今後はどのような展開を見せていくのでしょうか?


奇譚師にんぎょさん: YouTube ショートには1分間という制約があるので、私も全ての情報をお伝えできているわけではありません。故に想像の余地が生まれますし、そこが面白さだと思っています。


 一方で、今後動画の本数が増えてくることで、すでにご紹介した異常現象を別の側面からご覧いただく機会が増えてくると思いますので、楽しみにしていただければ幸いです。


―― 最後に、にんぎょさんとしての今後の展望をお聞かせください


奇譚師にんぎょさん: ショート動画以外の形式(長尺動画や文章等)での制作にも、挑戦していきたいと思っています。また、現在走馬灯を見たことがある方を捜しています。



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