夫の「至らない言動」で年上妻が責められるのはなぜ?「ダンナの教育」を妻の役割にしたがる世間

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2024年09月29日 22:11  All About

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俳優の森田剛さんがバラエティ番組に出演し、家庭のことは何もしないと発言し、炎上。おまけに妻の宮沢りえさんにも「甘やかしている」と飛び火。いわゆる「夫婦間格差」があると、人はなぜか妻を標的にしがちである。
元V6のメンバーで俳優の森田剛さん(45歳)が、舞台の宣伝のためバラエティ番組に立て続けに出演したものの、態度が「マイペースすぎる」「やさぐれている」と炎上。もともとそういうタイプの人だと擁護の声もあるが、火種は妻の女優・宮沢りえさん(51歳)にも及んでいるようだ。

ふたりは結婚して6年経つが、森田さんは家庭のことは何もしないと言っており、宮沢さんが「甘やかしている」と非難されているのだ。

40代の夫の言動に対して、妻が責められるのはどこか理不尽である。妻は夫の教育係でも、母親でもないのだから。だが、世間はどうしても妻が年上だったり、いわゆる「夫婦間格差」があったりすると、妻を標的にするのだろうか。

夫の至らなさは妻に原因がある?

夫が自宅マンションの自治会副会長だというのは、ミツコさん(45歳)。37歳のときに結婚したのは7歳年下の男性だった。

「結婚する前に、ローンを組んでこのマンションを購入したんです。一生、ひとりでいるつもりだったから。でもそれからすぐ彼と知り合って、半年足らずで結婚することになって……。夫が転がり込んできた状態ですね。当時、彼はアルバイト暮らしだったし」

婚姻届を出してすぐ、今度は妊娠が分かった。ミツコさんは現在、それなりの役職がついたキャリアウーマン。夫は自宅でWeb関係の仕事をしている。小学校に上がったばかりの娘の世話はずっと夫が担ってきた。

「夫は子どもの世話係で、家事はまったくしません。というかできないんですよね。

人間、向き不向きがあるのでそれは仕方がないと思っているんですが、私がスーパーで買い物をしていると、ママ友たちが『お宅、ダンナさんが主夫なんでしょう。どうしてあなたが買い物してるの?』と言うんですよね。うちにはうちの事情があるのに」

夫がマンションの自治会副会長になり問題発生!

暇そうだと思われたのか、夫はマンションの自治会副会長になってしまった。会長は古株の年配男性なので、実質、働くのは夫である。

「ところがうちの夫は、そもそも人間関係を作るのが苦手で、だから会社勤めもできないというところがあって……。でも任命されたのがうれしかったんでしょうか。最初は張り切っていたんですよ。ただ、やっぱり連絡の仕方が悪かったり安請け合いしちゃったり。

近所の人からも『どうして連絡してくれないの』『早く掲示板に連絡事項を貼っておいてよ』と言われても、すぐに対処できなくて。結局、私がやっちゃうんですけど、それが夫を傷つけるみたいで」

近所の人からは「お宅のダンナさん、もうちょっと教育したら?」と言われてしまう始末だったそうだ。

「余計なお世話ですよね。でもなんだか肩身が狭くて……」

ミツコさんは夫のことも尊重したいんだけどとため息をついた。

高卒の夫を受け入れようとしない両親

夫婦の形に、たとえ親でも口をはさまれるのはとても嫌だと、マリさん(42歳)は怒りをにじませながら言った。

「私の親はもともと結婚に反対だったし、夫のことも好きではなくて、ほとんど会ってもくれないんです。原因は夫が大卒じゃないから。くだらない理由です」

マリさんと5歳年下の彼とは、4年前に妊娠を機に結婚した。ひとりで仕事をしていくつもりだった彼女が結婚したのは、彼の優しさにほだされたからだ。

「優しいんです、本当に。彼は介護関係の仕事をしているんですが、天職だと思えるほど優しい人。パートタイムで働いているので、家事育児、すべて担ってくれている。私が安心して仕事できるのは彼がいるから」

孫ができても、両親は高卒夫を拒絶する

ところがマリさんの両親は、孫ができた今でも、マリさんの夫で孫の父親でもある彼を受け入れようとはしない。会いたいから孫を連れてひとりで来てほしいというほどだ。

「正社員で働いてもいない男と結婚するなんて、どうしても許せないというわけです。許すも許さないも、両親が結婚したわけじゃない。私の夫です。娘を愛するなら、娘が愛した男をかわいがらなくてもいいから認めるくらいのことはしてほしいと言ってもダメなんですよね」

挙句の果てに、「そんなふうに育てた覚えはない」とマリさんまでもが責められるようになったのだという。

「私はひとりっ子だから、両親に腹を立てても見捨てるわけにはいかない。夫は『僕は気にしないから、きみは息子を連れて行っておいで』と言ってくれるんだけど……。なんだか夫が気の毒で。

私と結婚しなければ、こんな嫌な思いをしなかったのにねとつい涙がこぼれた。そうしたら夫は『僕はきみと息子がいるだけで幸せだよ』とまで言ってくれた」

本当は両親にもっと毅然とした態度で接したい。責められたら、いつだって縁を切ってやると言ってやりたい。だが愛されて育ったことは彼女が一番よくわかっている。だからこそ、親を見捨てることができずにいる。それが夫への後ろめたさにつながってもいる。

「いつかわかってもらえばいい。夫は悠長にそう言いますが、きっと夫もつらいはず。なんだか申し訳なくて」

わかってもらえないことを抱えながら生きていくのはつらい。それでも目の前の幸せを優先させなければと、マリさんは自分に言い聞かせるように言った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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