『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.38【コミックス派はネタバレ要注意!】

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2024年09月29日 23:50  週プレNEWS

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『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが8月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが8月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第461話 KINマークの絆!!の巻(8月5日更新分)
第462話 全身全霊の一撃!!の巻(8月19日更新分)

第463話 逃がれられない過去......!!の巻(8月26日更新分)

<あらすじ> 
時間超人・ファナティックvsネメシスの一戦もいよいよ大詰め。1億パワーを誇るファナティックに寸前まで追い込まれたネメシスだが、キン肉族を愚弄する発言をしたファナティックへの怒りによって、さらなる力を発揮! 逆転劇が始まる。

●コミックス1巻分(10話分)の試合

爪切男(以下、爪) 今回は第461話〜第463話までの3回ですが、キン肉サダハル復活の様相から始まりますね。

燃え殻(以下、燃) 単純に、まずいい試合だよね、ネメシス対ファナティック。今までの試合と違って、ほんとに互角の相手として描かれている。そして、第463話でダウンしたファナティックが、ついに"超回復"を使う。

 そう。ここまであまりにも出てこなかったから、僕ら「ゆでたまご先生、"超回復"のことを忘れてない?」とすら思ったけど(笑)。

 第462話で、最初にネメシスが倒れ、あとからファナティックが倒れて、両者ノックダウンで終わったところで......。

 「あ、そうか、次回で"超回復"か!」と。

 思った、思った。

 これから先、"超回復"が大きなテーマになりますよね。ネメシスがここまでファナティックを追い込んでも、"超回復"で復活できるんだから。

 うん。それをさらに乗り越えて倒すのって、大変だよね。

 でも、ファナティックもカッコいいですよね。こんなに追い込まれるまで、最後の最後まで"超回復"を使わなかったのがね。俺が五大刻だったら、もっとチマチマ何度も"超回復"を使うだろうな。

 ファナティックより前に闘った時間超人たちは、何度も"超回復"を使っていたしね。

 マグネット・パワーも、本当に自分が危なくなるまで使わなかったし。

 うん。カッコいい敵役。

 でも、"超回復"さえなければ、ネメシスが勝ってもおかしくない勝負だったんだよなあ。だからネメシス、やっぱり相当強いってことですよね。五大刻のボス的存在を、ここまで追い詰めたんだから......あれ? 僕らは"超回復"ってものがあることを知って読んでいたけど、ネメシスは知ってたのかな?

 あ......そうか、ネメシスは前の試合を観ていないから、知らなかったのかも。

 "超回復"を知っていたら闘い方を変えたかもしれないですね。ネメシス、頭いいから。

 そうか。いや、気づかなかった。

 でも、さすがネメシスですよね。プロレスだと実力のない選手が40分の試合をしたら、観ていてしんどいなと思う瞬間があるけど、こんなにいい試合をやるとは......連載上で、2ヵ月以上続いてますよね。

 ここまでで連載9回分で、9月の1週目で終わったとして、10回だもんね。

 『キン肉マン』の中で、ここまでの回数を要した試合、なかなかないんじゃないかな。

●"超回復"のカッコいい破り方

 で、いかにカッコよく"超回復"を打破できるか、というのが今後のテーマになってくるんですかね。ゼブラとマリキータマンが、ドミネーター&エル・カイトと闘った時の"超回復"の封じ方は、相手の身体を鎖のロープで延々と擦り続けて、"超回復"するスキを与えない、っていう。

 かなり泥くさい方法でしたよね。で、相手が弱りきったところで、石柱に叩きつける。

 あれが最善の策ではないじゃない? そうすると、どうやったらもっとカッコいい方法で"超回復"を封じられるか、っていうのが今後のテーマになるんじゃないかな。

 俺が"超回復"を見て思い出したのが、『ターミネーター2』の敵なんですよ、T-1000。

 あ、身体が液体金属で、撃たれて変形してもすぐ元に戻る。

 シュワちゃんは、T-1000を溶鉱炉に叩き落としたじゃないですか。あれくらいのことをしないといけないのかも。

 今までとは違う難題だよね。このあと、ウォーズマン、テリーマン、キン肉マンの試合があるわけだよね。どうやって"超回復"に立ち向かって行くのか。僕らはネメシスよりも、ウォーズマンやテリーマンの試合を、長く観てきているじゃない?

 そうですね、長年読んできた分。

 だから、彼らの闘い方を熟知しているけど、その彼らがどう"超回復"と対峙するのか。

 たとえば、テリーマンのこれまでの持ち技の中に、時間超人を凌駕できるものがあるか、というとねえ......。

 うん。だから、このファナティックとネメシスの試合で「"超回復"とどう闘うか」という、ここからのテーマを提示したんだね。という意味で、とってもいい構成だと思う。

 やっぱり『キン肉マン』はちゃんとしていますよね、物語が。映画の『ロッキー』みたいに「なんでそうなる?」ということは、やらない。『ロッキー4』で、試合の後半に、なんでロッキーのパンチがドラゴに効き始めたのか、なんの説明もないんですよ。

 (笑)。そうだね。理由がわからない。

 ただ「効いたからええやないか」でおしまい、みたいな。あ、でも読んでいて気がついたんですけど、キン肉マンの「火事場のクソ力」も、ある意味"超回復"なんだな。

 あ、そうか!

 叩きのめされてもう終わった、というところで、「火事場のクソ力」で復活する。

 そうか、じゃあ最後はその対決になるんだ。"超回復"対「火事場のクソ力」。

 実はずっと前からキン肉マンは"超回復"を使っていた、というね。

●主役級がなかなか出てこないアニメ

 アニメのほうは追ってる?

 もちろん。8月の放送はミスターカーメン、ステカセキング、ブラックホールと、うれしい超人たちの試合が次々と。

 僕、最近は渋谷の仕事場でNetflixで観てるの。この間は編集者の人と一緒に観たんだけど、その人が「あれ、ロビンマスクとか全然出てこないんですね」って言ってて。

 ああ、まあ知らない人はそうでしょうね。

 連載をずっと追ってきた僕らは、「おお、ステカセキング!」「ブラックホール!」って盛り上がってるけど。そうか、数十年ぶりにアニメが始まって、観てみたらいきなり完璧超人vs悪魔超人っていうのは、混乱するだろうなあ、という。

 それはそうか。

 でもそれは逆に言うと、描いているゆでたまご先生が、ステカセやブラックホールのような脇のキャラにすごく信頼を置いている、ってことだよね。ファンは「ロビンマスク出ないのかよ」と思わないはずだ、という。

 うん。僕らのことも信頼してくれている。

 ただそれは、すっごい強気で描いている、ということでもあるよね。もし僕が原作者だったら「最初はやっぱり人気超人から」って、ロビンやウォーズマンの試合から始めそうだもん。こんなに久しぶりのアニメ化の最初を、悪魔超人にまかせるって、興行として考えると、すごいじゃない?

 でもこのアニメは、漫画連載に沿って作られているわけだから...。

 そうか、漫画の段階で超強気だったんだ。キャラに対する信頼度と、読者に対する信頼度がすごい。アニメでは、主要キャラは、第3話でテリーマンがマックス・ラジアルと闘ったのが唯一で、バッファローマンですら、まだ座ってるじゃない? いきなり悪魔超人の闘いを描くなら、せめて最初はバッファローマンを出すと思う、俺だったら。怖いもん。

 あと、そもそも『キン肉マン』をまったく知らない、宮野(真守)さんの大ファンの人たちも観ているでしょ。最初の段階でどんな感想を持ったのか、知りたい(笑)。

 第9話でピークア・ブーとの試合にスポットが当たるまで、キン肉マン、全然話の軸にならないもんね。

 でも、その声優さんのファンたちもそうだけど、昔の『キン肉マン』を知らなくて初めて観る人たちは、ロビンとかウォーズマンとか知らないから、普通に、悪魔超人たちが主人公クラスのキャラだと思って観るわけですよね。それもおもしろいな。

 いきなりヒール対ヒールだもんね。それってカルトファンが喜ぶもんじゃん。新しいファンを開拓するためのマッチメイクじゃないけど、それをあえてやるっていうのは、ヒール対ヒールだけど、このキャラたちはおもしろいんだ、という相当の自信があるんだね。

 強気ですよね。

 おもしろいと思うし、挑戦的だと思うな。僕らはこのアニメで、昔のファンに戻ってきてほしいと思ってるけど、もしかしたら先生は、そんなこと全然思ってないかも。

 そうか。それを狙うんだったら、さっきの話みたいに、最初にロビンマスクとかの人気超人の試合をそろえますよね。

 そう、再結成したバンドが昔のヒット曲ばっかりやるみたいに。でもゆでたまご先生は、バリバリの新曲と、昔ヒットしなかったけど実はいい曲を新しくリアレンジしてもう一度世に問う、みたいなね。だってアニメの『キン肉マン』、同窓会感、ないもんね。

 ない。ほんとだ。

 で、「今これがいちばんおもしろいんだよ!」というものを出している。すごいよね。

 現役なんですよね。ザ・クロマニヨンズのヒロト&マーシーって、ザ・ブルーハーツの曲もザ・ハイロウズの曲も、一切やらないじゃないですか。やりたくないっていうよりも、やる必要を感じないんじゃないかな。

 うん、同じだと思う。

 今が最高っていうね。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社、8月28日に文庫版発売)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は「ベスト・エッセイ」(日本文藝家協会編)選出作も収録した『愛と忘却の日々』(新潮社)。10月17日には『明けないで夜』(マガジンハウス)も発売。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00〜27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が来春書籍化予定。ドライバーWebで『横顔を眺めながら 〜爪 切男の助手席ドライブ漂流〜』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化

取材・文/兵庫慎司  撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社

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