大霧を破る異次元の走り。トヨタのロバンペラが圧勝、オジエは意地の日曜最速に【WRCチリ最終日】

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2024年09月30日 02:30  AUTOSPORT web

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2024年WRC第11戦ラリー・チリ・ビオビオ カッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)
 9月29日(日)、南米チリにて2024年WRC世界ラリー選手権の第11戦『ラリー・チリ・ビオビオ』の最終日はスペシャルステージ(SS)13から16までの4本で行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合優勝を飾った。

 また、2024年シーズンに新たに導入された日曜のみの総合順位でポイントを競う“スーパーサンデー”では、TGR-WRTのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が最速となり7ポイントを獲得している。

 いよいよ迎えた最終日はSS13からSS16までの全4本を走り、ステージの総走行距離は54.80kmで争われる。リエゾン(公道区間)も含めた総距離は291.38kmだ。

■厳しさを増すチリ。難易度マックスのグラベル

 暫定ポイントの懸かる山場となったデイ2は、午後から濃霧に見舞われる難コンディションの一日であった。そしてその猛威は、最終日も引き続き各車を見舞うこととなった。

 朝方に雨が降った様子のチリ・ビオビオ州。現地時間8時23分に開始となったこの日1本目の『ララクエテ1』(18.62km)は、狭い道幅とアップダウンの激しいステージレイアウトに加え、ぬかるんだ路面、先の見えない深い霧とますます厳しいコンディションで各クルーを出迎えた。

 まずは、デイリタイアからの再走を果たしたオジエを先頭にアタックを開始していく。


 林道を進むにつれて標高は高くなっていくうえに、時間経過で変化する天候状況としても霧は刻一刻と深まる様子。その影響はタイム差にも如実に表れ、先頭走者のオジエのタイムを超える者は現れず、スーパーサンデーの主導権を握るステージウインを飾った。

 続くSS14『ビオビオ1』(8.78km)でもこの状況は続き、各車が銘々のペースノートを信じてアタックを敢行、オジエが連続ステージウインをあげる。

 さらに、総合首位のロバンペラや総合2番手のエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、週末を通して発揮してきたペースの良さを活かし、オジエに続くタイムをマーク。貴重なポイントがかかるスーパーサンデー争いで、トヨタ勢がトップ3を占める展開となった。

■不可解なウイング脱落発生。ラッピは“2度目”のバンパーロスト

 再走ステージ1本目の『ララクエテ2』では、コンディションがやや好転した様子で、先述のステージ終了から間髪入れずにアタックがスタートした。

 標高が比較的低めなステージ前半では、視界を遮る霧も減り、路面コンディションもドライ寄りに変化して各車はペースアップを見せる。しかし、ここで勢いを数台は、アクシデントの引き金を引いてしまうことになる。

 そのひとりとなった2番目出走のマルティン・セスク(フォード・プーマ・ラリー1)は、ステージ終盤のジャンピングスポットにて、リヤウイングが脱落するトラブルが発生。ジャンプ途中でのエアロ破損に、走行後のセスクも「何?本当?なんでか分からないよ」と困惑のコメントを残した。


 さらに、3番目走者のエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)も、轍を使って勢いよくコーナリングをした結果、イン側の土手にフロントを接触してしまい、今大会“2度目”のバンパーロストを喫してしまう。


 そんな波乱含みのSS15は、先頭走者のオジエが勢い止まぬアタックを披露し、3連続の全体ベストタイムを刻んで見せた。

 昼の小休止を挟んでいよいよ迎えた最終ステージは、8.78kmの『ビオビオ2』だ。こちらはトップ5タイムのクルーおよびマニュファクチャラーにボーナスポイントが付与される『ウルフ・パワーステージ』となる。

 徐々に霧も澄みはじめたこのパワーステージでは、各車最速の座をかけてペースアップ。集大成となるアタック合戦の結果、オジエがロバンペラを0.1秒差で破るトップタイムを刻んでボーナスポイントを手にした。

 これでWRCチリは決着。デイ2に首位に躍り出たロバンペラがリードを守り切り、今季4度目の総合優勝を飾った。2位にはエバンスがつけてトヨタがワン・ツー達成、3位にはタナクがつける表彰台となった。そしてスーパーサンデーは、デイリタイアからの再走を果たしたオジエが挽回を期す走りで制して見せた。

 そして、デイ2終了時にはニコライ・グリアジン(シトロエンC3ラリー2)がクラストップの座に立っていたWRC2クラス。こちらはデイ2後に、クラス3番手のヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)に対し、SS11で前を走るスローペース車が上げていた砂煙に起因する減速が認められ、新たなノーショナル(想定)タイムが付与されてクラストップに浮上するというどんでん返しを経て最終日を迎えた。

 ロッセルがグリアジンに対して11.6秒をリードして幕が開けた最終日、もっとも勢いがあったのはオリバー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2)で、4本中4本でステージウインを飾る快走を披露。ソルベルグにとっては自力チャンピオンもかかる今季最後のポイント有効戦であったが、SS11でのパンクによるロスを巻き返すことはできず、涙の4位フィニッシュとなった。

 クラス優勝争いは、ロッセルとグリアジンが一進一退の僚友対決を繰り広げ、ロッセルが17.3秒のリードを守り切って今季2勝目を飾った。そして、ワン・ツー達成となったシトロエン・レーシングはWRC2クラスのチーム選手権のチャンピオンに輝いている。

 2024年WRCの次戦は、ドイツ、チェコ、オーストリアを舞台とする『セントラル・ヨーロピアン・ラリー』。CERと呼ばれるこのラリーは2023年にWRCに新たに加わったラウンドであり、ヨーロッパ中央部に位置する3か国のターマック(舗装路)をメインに争われる。異なる国を舞台とすることでステージの特徴も三者三様となり、一筋縄ではいかぬ戦いが予想される。最終戦ラリージャパンの前哨戦にもなるこの第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリーは、10月26日(木)から10月29日(日)にかけて開催される予定だ。

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