イオン、セブン、ドンキ…… なぜ安くて価値ある独自商品が次々と生まれるのか 注目すべきPB10選

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2024年09月30日 06:11  ITmedia ビジネスオンライン

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各社が強化しているPBに迫る

 日本の小売市場が店舗飽和状態であることは、いうまでもありません。各業態の主要プレーヤーが出店攻勢を繰り返した結果、コンビニ、スーパー、GMS(総合スーパー)、ホームセンター、ドラッグストア、ディスカウントストア、100円ショップ、ユニクロやニトリといった専門店など、私たちの生活に店舗網は余りあるほど整備されました。


【画像】これは便利! 注目すべき商品(計4枚)


 店舗が増えると、必然的に1店舗当たりの収益が悪化します。もちろん、一部の近隣店舗が淘汰されて撤退することで残存者利益を得るケースもあることでしょう。しかし多くの店舗は人口減少と競争環境激化による客数減というリスクにさらされ、収益維持のために次の選択を余儀なくされています。


(1)粗利率の高い商品を売る


(2)原価率を下げる


(3)新しい事業を付加し新しい収益を得る


(4)経費を削減する


 このうち(2)は為替変動や製造業の値上げにより、下げるどころか上がっていく傾向にあります。(3)は小売業各社のリテールメディアなどが好例ですが、既存事業にインパクトを与えるくらいの規模に拡大するまで時間を要するケースが多いのが実情です。


 (4)は最低賃金の上昇、物流のいわゆる2024年問題などで高騰の傾向にあり、デジタルで補完するとしてもITコストが先に支出されることになり、成果を及ぼすのは先の話です。これらを踏まえると、最も大きな光ともいえるのが(1)であり、各社はこのためにNB(ナショナルブランド)よりも粗利率が高いPB(プライベートブランド)を開発し、売上比率を高めていくことに注力しています。


 特に食品においては、日経新聞の「PBの衝撃、物価高で存在感増す 小売りの戦略まとめ読み」(2024年1月8日)で紹介されているインテージのデータにもある通り、消費者物価指数の上昇と比例するようにPB比率が向上しています。つまり、物価が上がると各社は低価格で価値のあるPBにシフトする傾向にあることが見てとれます。


●イオン、セブンなど大規模小売りがPBに注力


 PBの伸びも顕著です。イオンは2024年2月期におけるトップバリュブランドの売り上げが1兆円を超え、2019年と比較し20%以上の伸びとなりました。セブン&アイ・ホールディングスは2024年2月期にセブンプレミアムの累計売上高が15兆円を超え、2025年2月期には前期比500億円増となる、1.5兆円の売り上げを見込んでいます。


 ファミリーマートはPB誕生から3年で1000種類以上へと拡大し、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは前期比で500億円弱も成長し、PBの売り上げは2461億円(構成比19.3%)に達しました。


 マツキヨココカラ&カンパニーはPB商品構成比を2026年3月末までに15%へ高める計画で、DCMホールディングスも2030年に50%という意欲的な目標を発表しています。目標という点では、イオンが2025年までにPB商品を全て環境配慮型にすると宣言したのは、ESG経営の潮流において、象徴的なことです。


 これらの結果や計画から、各社がPB強化路線であることは一目瞭然です。また、イオン、セブン&アイ、ドン・キホーテを中心に、PB品質の改善も目立ちます。メーカー商品のパッケージをただPBに差し替えただけのようなものでは消費者の心に響きません。各社が価格と価値のバランスにあらためてチャレンジしたことで、昔あったような「安かろう悪かろう」「NBの廉価版がPB」というイメージは払拭(ふっしょく)されつつあります。


 せっかくですので、話題性もあり、かつ消費者から支持されているPB10選を紹介しましょう。


 私が注目しているのは、無印良品「消臭機能付き くりかえし使える除湿剤」(990円)、ダイソー「静電容量式充電タッチペン for iPad」(1100円)、ワークマン「ファイングリップシューズ」(1900円)などです。


 無印良品の除湿剤は使えるシーンの多さ、ダイソーのタッチペンはハイプライスとの格差&機能性、ワークマンのシューズは滑りにくさがそれぞれポイントです。


 たった10商品をピックアップしただけでも、各社のPBが持つ特徴が多岐にわたることが分かります。


 PBの成果の一例として、圧倒的なのがワークマンです。新しく開発したウェア「着る断熱材」シリーズの予約販売分2万点が4日で完売、ランドセルも在庫消化率が90%など、大きな成果を出しています。


●PBがNBより高評価な時代に?


 昨今はPBとNBの価格と価値のポジショニングに変化が生じています。一般的にPBには低価格メリットがあることに大きな変化はありませんが、各社の商品価値が向上したことで、NBより安く、かつ価値は同等。さらに商品によってはNBを上回ると消費者が感じるケースも増えています。


 今後も各社のPBから、さまざまな切り口のヒット商品が誕生することでしょう。それが粗利率向上につながるとともに、消費者の生活を更に便利にすることでしょう。小売業各社のPBの展開に大きな期待と注目が集まります。


(佐久間俊一)



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