食品から日用品、雑貨、アパレルなど、ユニークな商品を次々と打ち出しているドン・キホーテ。しかし、ドン・キホーテにも、長年苦戦していた分野があった。運営会社であるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の向剛史さん(PB企画開発担当)に話を聞いた。
【画像】「80回洗っても全然色落ちない」スキニーパンツ(全2枚)
●ボトムスが苦戦、なぜ?
ドン・キホーテが苦戦していたのは「ボトムス」だ。トップスでは、表裏前後がないTシャツや硬すぎるTシャツ、方言Tシャツなどユニークな商品を展開していたが、ボトムスではなかなかヒット商品が生まれなかった。その理由について、向さんは「アウターやトップスと比べて、ボトムスはデザインやビジュアルで他社との差別化が難しいアイテムです。普通のボトムを販売しても、アパレルメーカーには到底敵わない。つまり顧客にとって『ドン・キホーテで買う理由』がなかったのです」と分析する。
また、店舗設計も苦戦する要因の1つだった。ドン・キホーテの店舗の多くは、試着室がない。Tシャツやパーカーよりもサイズやフィット感が重視されるボトムスは、手に取られにくいという。
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●流れを変える商品が誕生
苦戦が続く中、流れを変える商品が生まれた。2020年9月に発売した「色褪せ知らずの黒 スキニーパンツ」(3289円)だ。
同商品は、黒ズボンならではの悩みである「色落ち」を軽減した商品だ。洗濯時の色落ちを防ぎ、はっきりとした黒さが持続するようにした。色落ちしにくい特殊な染料と薬剤を使用し、生地を構成する糸自体に色を浸透させることで、色が落ちて白く見えてしまうことを防いでいる。
同商品は「80回洗っても全然色落ちない」というフレーズで販促している。公的機関で、生地の状態でどこまで色落ちしないか検査を実施。加えて、実際に洗濯を繰り返し、80回洗っても色にほぼ変化がないことを確認したという。色褪せ知らずの黒 スキニーパンツは、シリーズ累計販売数が40万点を突破。現在の売り上げも、昨年比約115%と好調だ。
●「ボトムスが売れない」を変えた2つのこと
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色褪せ知らずの黒 スキニーパンツのヒットを受けて、ボトムス開発で意識するようになったことが2つあるという。1つ目は「独自の切り口」だ。「使い勝手や履き心地はもちろんですが、そこに『洗っても洗っても色落ちしない』というような独自の切り口を追加しています。その結果、顧客が他社と比べて『ドン・キホーテの方が良い』と選んでいただけることにつながると考えています」(向さん)
2つ目は、デザインのラインアップだ。前述の通り、ドン・キホーテの店舗の多くには試着室がない。そのため、バルーンシルエット、ジョガータイプ、裾ドローコード仕様など、裾上げを必要としないデザインを積極的に採用。ファッショントレンドに合わせながら、拡充しているそうだ。
2021年4月には、ゆるっとしたシルエットが特徴の「アラジンパンツ」を発売。初年度は試験的に4000点だけ生産したが、1カ月で欠品する店舗が出るほどの人気だったという。2022年は1万点を用意したが、春夏シーズンでほぼ完売となった。
2023年からは通年タイプ(ロング丈)と春夏向け冷感タイプ(クロップド丈)の2種類を展開。年間で6万点以上を販売し、アパレル分野の主力アイテムに成長した。今年1〜8月までの販売数は9万点越えており、色褪せ知らずの黒 スキニーパンツを超える人気ぶりだという。
色褪せ知らずの黒 スキニーパンツというヒット商品をきっかけに、長年の苦戦分野を克服したドン・キホーテ。今後展開されるボトムスアイテムにも注目だ。
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