IT業界で「多重下請け」が進行 経営者の7割「短納期や低予算の下請け案件が多い」

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2024年09月30日 22:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ITエンジニア業界の現状について調査を実施

 ITキャリア支援事業を手掛けるキッカケクリエイション(東京都渋谷区)は、「ITエンジニア業界の現状」に関する調査を実施した。システム開発において「短納期や低予算の下請け案件が多い」と答えたIT企業経営層は、約7割だった。


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 IT企業経営層224人に「システム開発において短納期や低予算の下請け案件が多いと感じるか」を尋ねた。29.0%が「そう思う」、36.6%「ややそう思う」と回答。DXの加速により案件数が増加する一方で、4次受けや5次受けなどの多重下請け構造が進行している。その結果、労働に見合わない条件で働かざるを得ない企業が増えていることが分かった。


●「多重下請け」脱却のために必要なものは?


 次に「多重下請け構造脱却に何が必要だと思うか」を尋ねた。1位は「スキルの高い人材の確保」(59.8%)、2位は 「営業力の強化」(47.3%) 、3位は「社内のITエンジニアへの教育」(39.7%)だった。


 「多重下請け構造脱却のために行っていること」についても、1位は「スキルの高い人材の確保」(36.1%)で、2位が「ITエンジニアへの教育」(34.8%)、3位が「営業力の強化」(29.9%)となっている。いずれの取り組みも3割〜4割弱程度にとどまり、必要とされる施策に手を付けられない現状が浮き彫りとなった。


 「スキルの高い人材の確保」をしているとした回答者に「スキルの高い人材の確保を行う上での課題」を尋ねた。最も多かったのは「スキルの高い人材が少ない」(49.3%)で、「転職サービス活用における人材・時間的リソースがない」(33.3%)、「企業のダイレクト採用における人材・金銭的投資」(24.6%)と続いている。


 「どのようなスキルを求めているか」については、1位が「基本設計力」(62.9%)、2位が「要件定義力」(58.0%)、3位が「実装力」(41.9%)となった。これらのスキルに加え、現場での経験や自主的に学習をする人材を求めている。


 社内のITエンジニアへの教育をできていない経営層に「教育を行っていない理由」を尋ねた。最多は「教育で賄いきれないと感じている」(34.2%)となり、スキルの高い人材を確保する必要性が、より一層高まっている結果となっている。


●ITエンジニアへの転職理由 1位は?


 ITエンジニアから同職種への転職経験がある、または現在転職を検討中のITエンジニア256人に「ITエンジニアに転職の理由」を尋ねた。トップは「給料UPのため」(62.8%)で、他の理由に大きく差をつけている。会社選びの基準についても「給料」(63.2%)が1位となった。


 「転職活動中に感じた課題」を聞いた。最多は「良い条件の会社が見つからない」が44.1%。「自身の求める給料に対し、スキルが足りない」と感じている人も31.2%おり、求める条件で転職するためにはスキルを磨くことが重要だということが明らかに。


 「現職・前職でより一層実務経験を積んでいれば、より求める条件に沿った企業に転職できると思うか」を聞くと29.6%が「そう思う」、47.2%が「ややそう思う」と回答した。


 「現職の教育制度」については「満足していない」が13.7%、「やや満足していない」が36.7%に。十分な教育ができていない企業が多いことが分かった。


 今回の結果から同社は「市場価値を高めるための継続的な学習や、長期的な視野でのキャリア形成が重要だ。また、そうした視点を持つITエンジニアを採用することで、企業側も多重下請け構造からの脱却を目指せると考えられる」とコメントしている。


 調査は、IT系企業の経営者・役員224人、ITエンジニアから同職種への転職経験のあるITエンジニア256人を対象に、インターネットで実施した。期間は、7月26〜28日まで。


(小松恋、アイティメディア今野大一)



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