「人手なさすぎ」漫画家・峰倉かずや 切実なスタッフ募集が話題「アナログ作業できるアシスタントがいない」

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2024年10月01日 08:00  リアルサウンド

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峰倉かずやの公式Xより@kaz_minekura
■アナログで作業ができるアシスタントがいない

  アニメ化もされたヒット作『最遊記』シリーズで知られる漫画家・峰倉かずやのポストが話題になっている。峰倉は9月28日、「時代的に難しい事は承知ですが、アナログ原稿の作画アシスタントさんを切実に募集中です」とアシスタント募集の告知をポストし、「人手がなさすぎて今回背景以外の全トーンを私と事務員さんで貼ってる」と、本来アシスタントが手掛ける作業を自身で行わなければならない悩みを打ち明けている。



【急募】
時代的に難しい事は承知ですが、アナログ原稿の作画アシスタントさんを切実に募集中です。
背景が描ける方は滅茶苦茶助かるのですが、トーン作業経験のみの方も大歓迎です…!
(人手がなさすぎて今回背景以外の全トーンを私と事務員さんで貼ってるので)
ぜひ一迅社までお問い合わせ下さい🙏 https://t.co/97pmNErI2a pic.twitter.com/3am9dFxHAm


— 峰倉かずや (@kaz_minekura) September 28, 2024



  峰倉はアシスタントの条件として、「背景が描ける方は滅茶苦茶助かるのですが、トーン作業経験のみの方も大歓迎です…」と記し、作業可能な人には一迅社まで問い合わせてほしいと呼びかけている。美しい原稿と併せてUPされたこのポストは、9月30日現在、約2万件のリポストと、約2.3万件のいいねを集めている。


  実は、従来通りの紙にペンを使って漫画を描いている漫画家は、同様の悩みを抱えていることが多い。アナログで作業ができるアシスタントがいなくなれば原稿が遅れてしまうし、何より漫画家自身のこだわりを反映できないという深刻な問題となっているのだ。危機感を抱いている漫画家は、アナログで作業ができるアシスタントのスケジュールを1年先まで抑えたり、完全に囲い込んだり、もしくは社員化している例もある。


■デジタルでしか描けない漫画家も多い

  一説によれば、今や、漫画家の約9割がデジタルで執筆しているといわれる。漫画制作ソフトの進化により、これまでアナログで描いてきたベテラン漫画家もデジタルに切り替える例が相次いでいる。そして、20代以下の漫画家は、そもそも漫画をデジタルでしか描いたことがないという人も少なくない。10代以下だとそれが顕著で、スクリーントーンを貼る、ベタを筆ペンやマジックで塗る経験をしたことがないという人もいる。


  少年漫画の現場であればトーンを使わないこともあるが、トーンを重ね貼りしたり、削ってグラデーションのような効果を作るテクニックは、20年ほど前であれば少女漫画の現場では必須のテクニックだった。漫画家志望者やデビューしたての漫画家は、売れっ子作家のアシスタントに入り、現場でトーンの切り方や削り方を教わることが多かった。師匠から受け継がれる、一種の伝統技能と呼ぶにふさわしいものだった。


  峰倉ほどの大御所漫画家の現場でも人材が枯渇しているという実態を知ると、もはやそういった技術はわずか20年ほどの間にロストテクノロジーになりつつあるのだ、と実感してしまう。トーンなどのアナログの画材が廃版になってしまう問題はしばしネットを騒がせるが、そもそものトーンを扱える人材が激減しているのだ。漫画制作の伝統が急速に失われていると言っていいだろう。


■アニメーターは意外とアナログ派がいる

  筆者の妻は少女漫画家であり、筆者も長年にわたって枠線を引いたり、トーンやベタを手伝ってきた。そのため、決して上手ではないが、アナログの漫画制作の工程は一通りできる。しかし、妻も数年前、コロナ騒動の自粛ムードの中、アシスタントを家に呼ぶことが難しくなり、ついにデジタルに切り替えた。ただし、ペン入れまではアナログで行い、トーンやベタ、背景などをデジタルで仕上げる折衷スタイルとしている。


  筆者がこれまでに取材した漫画家でも、『ゴールデン・ガイ』の渡辺潤や『邪神ちゃんドロップキック』のユキヲは、ペン入れまでアナログ、トーンからはデジタル、というスタイルで執筆している。意外にもこのスタイルの漫画家は他にも多い。慣れているペン入れまでは紙で描きたい、ペンでなければ理想の線が引けないなど、理由は漫画家によって様々だが、少なくともトーンはデジタルにしたほうが効率面で優れているのは間違いない。


  アニメーションの現場ではどうか。NAFCA(一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟)の福宮あやの事務局長によると、意外にもアニメーターはアナログで線を描いている人が4〜5割はいると推定されるという。もちろん、デジタルとアナログのハイブリッドも多いというが、意外にも昔ながらの技術が残っている業界といえる。その一方で、ゲーム制作の現場では、ほぼデジタルになっているようだ。


■若手のアナログ漫画家がどんどん生まれてほしい

  漫画界でもアナログの魅力を見直す動きは起こっている。大御所漫画家のさとう輝、木村直巳、本庄敬、三浦みつるは、アナログの魅力を伝えるべく「マンガ☆ハンズ」を結成している。また、今年に入ってから、ながやす巧やCLAMPなど、超絶技巧といわれるアナログのテクニックをもつ漫画家の原画展が開催されている。矢口高雄が描き出す自然美はたびたびXでバズる。一点物であるアナログの原画には人を惹きつける魅力があるのは間違いない。


  言うまでもなく、峰倉かずやも超絶技巧をもつ漫画家の一人であり、トーンやコピックにとって生み出される美麗な絵は多くのファンを魅了してきた。アナログでしか描けない線やタッチは確実に存在する。個人的な希望であるが、アナログの原画を目にした漫画家志望者のなかから、ぜひともアナログで描く若手漫画家が誕生してほしい。そうした漫画家が増加すれば、アシスタント問題が少しでも解決できると思うのだが……難しいだろうか。



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