生理のツラさに効果のある薬「親から飲むなと言われた」「ネットで危険と噂」産婦人科医がガチ反論

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2024年10月01日 09:00  女子SPA!

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 毎日服用することで月経困難症を改善したり、避妊効果が得られたりする低用量ピル。

「女性のQOLを向上させてくれる!」と飲み続ける人がいる一方で、「リスクが怖い」「親から危険だから飲むなと言われた」など不安視している方が多いのも現状です。

 そこで今回は丸の内の森レディースクリニック院長であり、女性の身体や性について様々な発信を行っている産婦人科医の宋美玄(そんみひょん)先生に、多くの方が勘違いしているピルについて教えてもらいました。

◆ピルを使った方がいい人と使わない方がいい人とは?

――そもそも月経困難症やPMSの軽減のために処方される薬には2種類あり、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが配合された「低用量ピル」とプロゲステロンのみを配合した「黄体ホルモン製剤」があります。この2つはどういった違いがあるのでしょうか?

宋先生:避妊目的の方や生理の量が多い方、生理不順や生理前の不調に悩んでいる方で30代までの方には「低用量ピル」がよく使われます。

 40代以上で初めて服用する方、前兆のある偏頭痛がある方、肥満の方、喫煙している方や血栓症の既往歴のある方は、基本的には「黄体ホルモン製剤」を処方します。

◆なぜ40代以上の人は低用量ピルを服用できないのか

――なぜ40代以上では低用量ピルを服用できないのでしょうか。

宋先生:低用量ピルにはエストロゲンとプロゲステロン(=黄体ホルモン)の2種類が入っています。エストロゲンは、肌をつやつやにしたり血管を守ったりと様々な作用がある一方で血栓症のリスクがあります。

 40代以上で初めて服用する方や喫煙・肥満の方は特に血栓症のリスクが高くなるため、エストロゲンの入っていない黄体ホルモン製剤を処方します。

 ただ、日本では黄体ホルモン製剤は避妊薬として承認されていないため、避妊効果も欲しい方にはミレーナ(子宮内に装着する避妊具)の併用をおすすめしています。

――基本的には30代以下の方にはピルを処方するとのことですが、10代で月経困難症やPMSに悩んでいる方に黄体ホルモン製剤を処方するケースもあると聞きます。

宋先生:10代の方には低用量ピルでもいいんですけど、保護者の方が低用量ピルに抵抗がある場合には黄体ホルモン製剤を処方し、「これはピルじゃないですよ」とお伝えすることがあります。まだまだ低用量ピルを危険な薬だと勘違いしている方が多いので、やむを得ずという感じですね。

◆太る? 乳がんになりやすくなる? ピルの勘違い

――確かに、低用量ピルについてインターネットなどで検索をすると「太る」「乳がんになる」など不安を煽るクチコミ情報が多く目に付きます。

宋先生:1999年に低用量ピルが承認される前に一般的だった、エストロゲン量が多い「中用量ピル」を服用すると太るということもありました。

 エストロゲンが多くあると太ることもあるのは確かです。しかし、低用量ピルに含まれている程度のエストロゲン量では太ることはないとされています。モデルさんも多く飲んでいますよね?

 それでも太ったと感じる方がいるのであれば、低用量ピルを飲む前は体調が悪かったけど、低用量ピルを服用後はPMSもなくなり、毎日が健康でご飯が美味しい!と食べる量が増えて太った……ということだったりするのではないでしょうか。

◆黄体ホルモン製剤は肝臓に悪い?

――低用量ピル自体に太る副作用は認められていないということですね。黄体ホルモン製剤についても「更年期障害のような症状が出る」「肝臓に悪い」といったうわさがネットでありますが……。

宋先生:黄体ホルモン製剤の容量が多いものを飲んでいる方には更年期症状に近い症状が稀に出る方はいます。ただ、飲んでみないとその症状が出るかどうかは分からないので、お医者さんと容量について相談してほしいですね。

 肝臓への影響は、薬は肝臓・腎臓で代謝するものなので薬剤性肝障害(薬やサプリの服用の影響で肝臓がダメージを受けること)はどの薬でも起こる可能性があります。

 私のクリニックでは1年に1回は健康診断もしくはクリニックでの採血を受けてもらい、血液検査の数値を確認しています。そこで特に問題がなければ過剰に心配しなくても大丈夫ですよ。

 乳がんについては低用量ピルや黄体ホルモン製剤を飲んでいてもいなくてもリスクは変わらないとされています。ただし、乳がんになった後は飲まない方が良いです。1年に1回乳がん検診を受けて、乳がんが認められたら直ちに服用を止めてください。

◆黄体ホルモン製剤=危険、の勘違い

――ホルモン製剤については、「健康診断をしてくれた医師からそんな危険な薬を飲むのはやめたほうがいい」と言われたケースや、親や友人などから「飲むのはやめなさい」と言われたという話もよく聞きます。

宋先生:「皮膚科の医師から『トラネキサム酸を飲んでいる場合は血栓症リスクが高まるのでピルはやめましょう』と言われた」という話は、患者さんから聞いたことがあります。気をつけるにこしたことはありませんが、実際は禁忌というほどではありません。

 基本的には最新のピルについて知識がある婦人科専門医が1番詳しいので信頼してほしいですね。それでも不安な場合は、ピルのガイドラインがネットでも読めるので、そうした“一次情報”を確認するのが良いと思います。

 ネットや詳しくない方の話を鵜呑(うの)みにするのはよくないですね。

◆自分の身体のことは自分で責任を持つべき

――自分自身が医師の話やガイドラインなどで納得していたとしても、家族や友人など身近な人に反対された場合、はどのように説明すれば良いのでしょうか。

宋先生:その方との関係性にもよりますが、健康診断を担当した医師のように、2度と会わない人だったら「わかりました、主治医に相談します」と言えばいいし、家族や友達、彼氏とか友達などちゃんと理解してほしいと思う方なら診察室に連れてきて医者の説明を一緒に聞いたりするのも良いと思います。

 ただ、成人しているのだから、自分の体のことを自分で決める!という意思はもってほしいと思います。親だろうがパートナーだろうが口を出す権利はないですし、自分の身体のことは自分が責任を持つべきです。

「私の身体のことは私が決めます」とはっきり伝えた上で“あなたが思ってるような危険な薬ではないよ”と説明できる範囲内で伝えてみてはいかがでしょうか。

◆低用量ピル・黄体ホルモン製剤と更年期&閉経

――低用量ピルや黄体ホルモン製剤は閉経のタイミングで服用を止めるとされていますが、服用中は生理が止まっているため、いつまで飲めば良いのかわからないと悩む方も多いようです。

宋先生:閉経の平均が50歳ぐらいなので、45歳〜55歳ぐらいを目途にやめましょうとお伝えすることが多いですね。あるいは、血液検査で女性ホルモンの数値を確認して判断することもあります。

――多くの女性が悩まされる「更年期障害」ですが、これは体内のエストロゲン量が急激に減少することで起きるとされています。ということは低用量ピルを服用している限り、更年期障害にはならないと考えて良いのでしょうか?

宋先生:理論上は更年期にならないホルモンバランスにはなります。理論上更年期障害は起こらないかもしれないけど、老化は起こりますし、低用量ピルは更年期に補充する量にしてはエストロゲン量が多すぎるんです。

 量が多すぎるということは血栓症のリスクが高まります。そのため、私は45歳ぐらいまででエストロゲンの入っていない黄体ホルモン製剤に切り替えることを推奨しています。

◆納豆と水分補給では血栓症は防げない

――低用量ピルを服用している際に最も気をつけなければいけない血栓症ですが、納豆を毎日食べて水分補給もしっかりしているという方なら防げるものなのでしょうか?

宋先生:納豆や水分程度では追いつかないくらい血栓ができる恐れがあるので、全く防げないですね。ないよりはいいかもしれないけど、気休め程度です。

 毎日ビタミンCのサプリを飲んでホワイトニングの美容液を塗ってたら日焼け止めいらないですか? そんなことないですよね。

 なんとなくの知識やネット上のデマで勘違いしがちな低用量ピル・黄体ホルモン製剤。少しでも気になることがある場合には処方してくれている医師に相談するのが一番ですね。正しい知識と使い方で月経や避妊の悩みを改善しましょう。

【宋美玄(ソン・ミヒョン)】
産婦人科医 医学博士、丸の内の森レディーズクリニック院長
1976年兵庫県神戸市生まれ、大阪大学医学部医学科卒。10年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集め、以後妊娠出産に関わる多くの著書を出版。“カリスマ産婦人科医”としてメディア出演、医療監修等、女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性など積極的な啓蒙活動を行っている。2児の母。

<文/松本果歩>

【松本果歩】
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。日本酒・焼酎・発酵食品が好き。X:@KA_HO_MA

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