「弱者は死ね」コロナ後遺症マンガ作者に誹謗中傷も。『水ダウ』コロナ対策いじり企画に“ただただ悲しく思う”理由とは

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2024年10月05日 09:00  女子SPA!

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女子SPA!

(画像:『水曜日のダウンタウン』Tver配信ページより)
新型コロナウイルス感染後、夫と一緒に筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)を罹患したえぞいちごさん。

日常生活を送るのに支障をきたすほどの全身にわたる倦怠感とさまざまな症状に悩まされ続け、その闘病記を漫画にしてSNSに投稿しています。

投稿に対してポジティブな反応もある一方で、誹謗中傷が後を絶ちません。それでも闘い続けるえぞいちごさんに、漫画に対するネガティブな反応、新型コロナウイルスを取り巻く現状について聞きました。

◆誹謗中傷との戦い

――マンガを投稿することでポジティブな反響がある一方で誹謗中傷もあります。

「時間が経つごとに内容は変化していますが、誹謗中傷は私がTwitter(現X)を始めた2020年当初からあり、病気と闘うと同時に、誹謗中傷とも闘い続けてきました。誹謗中傷の内容は基本的には、後遺症や新型コロナウイルス感染症への無理解から生じたものがメインで、時間経過によって、誹謗中傷の内容も多少変わってきています。

私たちはワクチンが開発されていない時期に感染した患者で、その後もME/CFS患者としてリスクがあることから、新型コロナワクチンを一度も接種していません。

それにも関わらず『コロナ後遺症じゃなくてワクチン後遺症だ』と決めつけるコメントが後を絶たたず、『ワクチン後遺症じゃないコロナ後遺症患者は声を上げるな。人としておかしい』といった理屈を伴わないものもありました。

最近では『弱者は死ね』『年寄りでも子どもでもコロナで死ぬのは寿命、運命だ』『自然の摂理だ』といった、弱者排除の考えにもとづいたコメントが多い印象です。

コロナ禍初期は、一般人のみならず医療従事者、地方議員、弁護士などからも後遺症は存在しないという認識にもとづくコメントが寄せられ、集団による誹謗中傷を受けました。

対策として、後遺症患者のコミュニティ内で警戒すべき情報を交換したり、誹謗中傷を行うアカウントをブロックしたりしました。

今は、医療従事者には徐々に後遺症に対する理解が広まってきていることもあり、初期と比べると誹謗中傷はだいぶ下火になっています。しかし、何かの拍子に投稿がバズると、誹謗中傷が急激に増えるので疲弊します。

鍵アカウントにすることも検討しましたが、情報を必要とする人のところに届かなくなってしまうため、今は公開しています」(えぞいちごさん 以下カギカッコ同じ)

◆後遺症を語れなかった

――新型コロナウイルスやその後遺症についての報道が少ない現状について、どのようにお考えですか。

「後遺症について語ることがタブーとされていた期間が非常に長かったと思います。

Twitter上での後遺症の存在否定の誹謗中傷だけでなく、その他に私自身の経験したことですが、ニュースサイトのコメントに『後遺症を診てくれる病院がない』と書いたら、それ以降書き込みができなくなりました。

患者さんの中には、Xで後遺症についての投稿をしたところ、アカウントをバンされたケースもありました。こういったことから思うに、後遺症を話題に扱ったり、表立って意見したりすることが阻まれていたのではと感じています。

私たち後遺症患者は、長い間、見えていない幽霊のような扱いでしたね。

また、後遺症を扱うことに消極的な報道姿勢には疑問を覚えます。感染対策と経済活動が対立すると一部では考えられているためだと思いますが、相反するものではないと私は考えます。

新型コロナウイルス感染症及び後遺症に関する事実をきちんと認識・把握・周知し、その上で感染対策をして、後遺症になって働けなくなったり、パフォーマンスが落ちたりする人を出来る限り減らすことは、長期的視点から言って、経済を回すことにつながるでしょう。報道関係者はその視点を持ってほしいですね」

◆コロナ禍のピークは今

――8月28日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS)で、ピーク時のコロナ対策を茶化すような企画がありました。これについてはどのようにお考えですか。

「コロナ禍のピーク時は、今現在だと思っています。下水中のウイルス量を継続して測定している札幌市下水サーベイランス(※1)の2024年9月3日の発表によると、ウイルスRNAの排出の最大値を更新したことを発表しました。

今は、感染しても受診しなかったり、検査しなかったりすることも多いため、医療機関の週次報告により感染動向を把握する定点把握では、正確な感染状況は把握できません。しかし、この下水サーベイランスのグラフを見ると、5類移行後、ずっと高止まりしている状況だということがよく分かると思います。

この事実から考えても、番組の内容をただただ悲しく思い、感染症への無理解を助長するのではないかと懸念しています。

誰もコロナ禍にいい思い出がなく、コロナ対策についても『考えたくないから冗談にしてしまおう』ということなのかもしれませんが、嫌でも考えざるを得ない私たち患者にとっては冗談では済まされません。

Xには『嫌なら番組を観なければいい』という意見もありましたが、現実的には番組が『感染対策をしなくてよいとお墨付きを与えた』と受け取る人もいて、公衆衛生を考えると、視聴しなければ済むという話ではないと思います。コロナ対策をお笑いとして成立させるなら、感染症の専門家に監修してもらうなど、もっと違うやり方があったのではないでしょうか。

◆必要とする人に漫画が届けばいい

――コロナ後遺症・ME/CFSの罹患と闘病生活について、率直な感想をお聞かせください。

「筆舌に尽くしがたい疾患です。いくら言葉で伝えても、一般の人のみならず、医療従事者にさえ理解されないことの方がはるかに多いのです。

そこで、漫画であれば読んでもらいやすく、理解につながると思ったのが、描き始めた理由です。できれば誰にもこの病気を経験させたくないですし、もしかかってしまった場合には、適切な医療を受けられることを願っています」

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

最近、多くの感染症が蔓延していますが、を向上させなければいけない状況感染症対策をおざなりにしている人が多い印象です。

この厳しい世の中で生き延びるために、私の経験談が何かしら役に立つのではないかと考えており、必要とする人にこの漫画が届けばいいなと思います。

漫画はもうしばらく描いたら一区切りつくと思いますが、読み返してみて、もう少し詳細に触れたいこともありましたので、そこを補いたいと思います」

※1 札幌市下水サーベイランス

<文/増田洋子>

【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora

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