色は私たちの知覚や行動に影響を及ぼします。そのため、私たちが多くの時間を過ごす“部屋”は、インテリアの色を変えるだけで快適さが大きく変わってくるのです。そこで今回は、色が与える感情や影響をもとに、インテリアにおすすめの色や注意点をご紹介します。
色の寒暖感とは?
「暖色」「寒色」とは、色によって感じる「寒暖感」のこと。寒暖感やその心理的効果は、最も身近な色彩心理学の一つです。例えば、山奥の青く澄んだ湖の写真を見れば「冷たい」という感覚を覚え、ろうそくの炎の写真を見ると「熱い」という感覚を受けます。写真の湖と炎の物理的な温度は同じであるにもかかわらず、湖は涼しそうに、炎は熱そうに感じるのです。
このような色の寒暖感は、一個人の体験の蓄積というよりは、人類の長い歴史の中で先祖代々の体験が受け継がれて、人類共通の特性として形成された色感情効果だと考えられています。
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寒暖感に影響を与える「色相」と「彩度」
赤〜橙(だいだい)〜黄を中心に暖かく感じる色が「暖色」、青緑〜青〜青紫を中心に涼しく感じる色が「寒色」です。色相環の暖色系と寒色系の中間に位置する、黄緑〜緑、紫〜赤紫は寒暖感をあまり感じないので、「中性色」と呼ばれます。
このように、寒暖感は「色相」が最も大きな影響を及ぼします。鮮やかな色ほど寒暖感は強くなり、淡い色、くすみ色、暗い色などの「彩度」(色の鮮やかさ)が低い色ほど、寒暖感が弱くなるのです。
寒暖感から発展する感情効果
寒暖感の強い暖色と寒色には、特徴的な感情効果があります。赤は、心拍数や呼吸数、血圧を上昇させ、アドレナリンの分泌を促進する色。そのため、赤は「興奮色」と呼ばれます。暖色は「暖かい」という心理効果を根底に、積極的、能動的、活動的、興奮感といった感情効果に発展するのです。
一方、青を見ると心拍数や呼吸数、血圧が下降し、副交感神経が優位になります。そのため、青は「鎮静色」と呼ばれます。寒色は「寒い」という心理効果から、涼しい、消極的、鎮静的といった感情効果に発展するのです。
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寒暖感を部屋作りに活用! 秋冬のおすすめは?
寒暖感は、快適な部屋作りの基本となっています。秋冬のインテリアにおすすめなのは「暖色」です。
インテリアに鮮やかな色を取り入れる場合は、クッションカバーや小さめのラグマットなどがおすすめ。例えば、ターコイズのクッションカバーをパンプキンのクッションカバーに取り替えてみましょう。ぱっと目を引くアクセントになり、温もりを感じられて秋冬らしいムードになります。
カーテンのような部屋の広い面積を占めるアイテムは、彩度を抑えた色がおすすめです。例えば、淡い水色のカーテンを淡いベージュのカーテンに取り替えてみましょう。どちらも淡い色なので、寒暖感に顕著な違いは感じられないかもしれませんが、水色よりもベージュの方が温もりを感じられます。
「暖色」「寒色」「中性色」にはそれぞれデメリットもある
秋冬のインテリアは、暖色を取り入れると温もりの感じられる空間となります。活性化作用のある暖色は、適切な量を用いると非常に優れた効果を発揮しますが、量が多すぎると害を及ぼしかねません。暖色が多すぎると感じたときは、自分の直感を信じて暖色の分量を減らしましょう。一般的に、寒色を見ると心が落ち着き、リラックス効果を得られます。しかし、気分が落ち込みやすい人や朝起きるのが苦手な人にとっては、寒色を多く取り入れた部屋はあまり適していません。無気力になったり、眠気が我慢できなくなったりする場合は、活動的な暖色を取り入れて寒色の分量を減らしましょう。
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リビングやダイニングといった語らいの場には不向きですが、一人で熟考したり、瞑想(めいそう)したり、自分の内面とより深く向き合いたいときには、手助けをしてくれるでしょう。
このように、色は私たちの知覚や行動に特有の影響を及ぼします。暖色、寒色、中性色の特性を理解し、自分の直感に素直に従うことが、心地よいお部屋作りの第一歩となるでしょう。
松本 英恵プロフィール
カラーコンサルタント歴20年。パーソナルカラー、カラーマーケティング、色彩心理、カラーセラピー、ラッキーカラー(色占い)などの知見を活用し、カラー監修を行う。執筆、メディア出演、講演、企業研修の講師など幅広く活動。近著に『人を動かす「色」の科学』。(文:松本 英恵(カラーコーディネートガイド))