ハーバード卒で社会的に成功しても不幸になる理由 他人の評価基準で自分の人生を測ることの危うさ

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2024年10月07日 06:30  ログミー

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ハーバード卒で社会的に成功しても不幸になる理由

鳥潟幸志氏(以下、鳥潟):残り6分なので、最後のパート「自分らしさに沿って生きる力」についてお話ししましょう。あらためて「自分らしさがなぜ大事なのか」を説明していきます。

私がとても影響を受けた本に、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授の『イノベーション・オブ・ライフ』があります。

この方は『イノベーションのジレンマ』という書籍で有名ですが、晩年に『イノベーション・オブ・ライフ』を書きました。この本では、イノベーション理論を人生に当てはめるとどうなるか、ということが語られています。

その中で、クリステンセン教授はハーバードの卒業生を追跡調査した結果、多くの人が社会的に成功している一方で、必ずしも幸せとは言えない状況に陥っていることがわかったと書いています。例えば、偉くなった後に不正を犯して牢屋に入ったり、家族との関係が破綻して離婚してしまったりと、何らかの問題を抱えている人が多かったのです。

その理由として挙げられているのが、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業した多くの人が、自分の人生を測るモノサシを「お金」「権威」「地位」といった外部の評価基準で測っていたからだということです。英語の原題は『How Will You Measure Your Life?』、つまり「あなたは何によって人生を測りますか?」という問いかけです。

私なりに解釈すると、これは「他人や社会が決めたモノサシで生きる人生」と「自分の哲学・信念・志に沿って生きる人生」の対比を意味しています。

多くの人が、良い成績を取り、良い学校に進み、良い会社で働き、高い給与を得るというステータスを追い求める人生を送っています。もちろん、これも重要ですが、型や自分の信念や志をしっかりと持ち、それに基づいて生きることも、同じくらい大事だと思います。

私は、この「お金や地位だけを追い求めて生きる」ということが、今や限界に近づいているのではないかと感じています。最近ではポスト資本主義やサステナビリティがよく話題になりますが、日本の名門企業でさえも、不正を行うことが少なくありません。これも、株価や売上を上げるために必死でなんとかしようとする中で、自社の内部常識で物事が動いてしまうからだと思います。

だからこそ、自分の人生を自分の価値観でしっかりと測ることが大切です。この「自分らしさ」が、最終的には良い問い、良い意思決定、そして良いリーダーシップに結びつくと考えています。

自分らしさを見つけるための簡単な問い

鳥潟:今日は時間が限られているので、この「自分らしさ」をどうやって発見するのかという部分については簡単に触れますが、グロービスの「志」系の科目などでもよく議論される内容です。例えば、志や自分のモノサシ、哲学は外にあるわけではなく、たいてい自分の過去や今にあるものです。

過去の自分を再発見するような問い、「自分は何によって感情が動かされたのか? それは今の自分にどうつながっているのか?」という問いや、「今、自分が大切にしている価値観は何か?」という問いがヒントになります。これらの問いに答えていく中で、徐々に自分の価値観が明確になってくることもあります。

ここではあまり詳細に説明できませんが、例えばライフラインチャートなどを使って、自分の価値観や感情の動きを丁寧にひもといていく手法があります。

自分の感情が大きく動いた時、それはなぜだったのか、そこにどんな意味があるのかを解釈していくことで、自分の価値観が浮き彫りになります。この手法も本で紹介しています。

この「自分らしさ」がベースにあることで、自分らしい問いを立て、自分らしい意思決定を行い、自分らしいリーダーシップを発揮することが可能になると考えています。それがこれからの時代にますます重要になっていくと思います。

生成AI時代にリーダーに求められる能力

鳥潟:最後にまとめます。生成AIが普及する中で、リーダーには問いを設定し、決める力がますます重要になるということです。

ただ、誤解してほしくないのは、私はAIをどんどん使うべきだと思っている派です。私も仕事でかなり使っていますし、日々のニュース集めや要約AIなども有料課金して利用しています。非常に便利なので、積極的に使うべきだと思います。

でも、要約AIで良い情報を集めたとしても、結局「それが何なの?」という問いが生まれます。そこで重要になるのは、自分がその情報に対してどういう問いを出し、どう思考し、どう行動していくかということです。

そのためにフレームワークが重要です。問いは見えているところから出ますが、視野が狭ければ、問いも限定的になります。ですので、自分の視点を広げるためにも、フレームワークを学ぶことが大切です。

実践については、上位役職者の追体験や、さまざまなケーススタディを通じて実践することが可能です。そうした体験が能力開発につながると思います。

もし、さらに学びを深めたいという方は、私が書いた『問いの設定力』という書籍をご覧ください。今日お話しした内容をもう一段詳しく書いていますので、参考になると思います。

また、フレームワークの観点から言えば、先ほど紹介した「GLOBIS学び放題」の動画もおすすめです。1本あたり3分程度の短い動画をたくさん用意しており、効率的に学べる内容になっています。ビジネススクールとして日本で一番大きい規模で運営しているので、内容はしっかりしています。もちろん、これ以外の方法でもぜんぜんかまいません。

私からのお話は以上となります。この後、質疑応答に進めればと思います。

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