2040年には「1兆ドル超」の市場規模に…日本の「宇宙開発」はどれだけ進んでいる?専門家が解説

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2024年10月07日 21:00  TOKYO FM +

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2040年には「1兆ドル超」の市場規模に…日本の「宇宙開発」はどれだけ進んでいる?専門家が解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30〜7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

10月6日(日)の放送テーマは「すごいぞ! 日本の宇宙開発」。内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 主査の細川奈央さんをゲストにお迎えして、日本の宇宙開発の現状と、その重要性について伺いました。


(左から)杉浦太陽、細川奈央さん、村上佳菜子



◆毎年10月4日〜10日は「世界宇宙週間」

67年前の1957年10月4日、ソビエト連邦により世界初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられました。そこから、毎年10月4日〜10日の1週間は、国連により「世界宇宙週間」と制定されています。

日本における人工衛星は「だいち」「ひまわり」「みちびき」などがあります。人工衛星はロケットで打ち上げられた後、地球を回りながらそれぞれの仕事をするロボットのような存在です。ここでは、細川さんから「みちびき」について詳しく伺います。

正式名称は『準天頂衛星システム「みちびき」』で、主にカーナビやスマホに電波を送り、今いる場所を教える役割をもつ、日本が独自に管理・運用している測位衛星です。測位衛星でもっとも知られているのはアメリカの「GPS」ですが、「みちびき」はGPSと互換性のある電波を使用しており、GPSと連携して活用されています。そして今後、機能強化などの目的から「みちびき」の整備が計画されています。

◆2025年度には4機→7機体制に

2018年11月より4機体制でサービスを続けている「みちびき」は、4機それぞれから電波を送受信していますが、細川さんは「常に1機は、日本の真上あたりを飛ぶようにプログラムされています」と説明。常に日本の真上付近に1機いることで、電波がビルや山などに遮られにくく、測位が安定しやすくなります。また、GPS衛星から見えにくいところにいたとしても「みちびき」がしっかり測位して、位置を安定的に示すことができます。

また、「みちびき」が出す電波のなかには、位置情報の精度をさらに高める補強信号もあり、この信号を利用すると、時には数メートルになることもある誤差を“数センチ”まで小さくすることが可能です。この補強信号のサービスは既に、車の自動運転、無人トラクターによる農作物の種まきや収穫、物流やスポーツなど、ビジネスの分野をはじめ、幅広い分野で活用されています。

なお、現在「みちびき」は4機体制ですが、2025年度を目処に7機体制になる予定で。そうなると、GPS衛星を利用しなくても「みちびき」のみで測位サービスが利用可能になります。

さらに、今年度から11機体制に向けた検討・開発もおこなわれる予定だそうで、細川さんは「7機体制はGPSに頼らない必要最低限の機数なので、1機でも不具合が生じると測位機能が維持できなくなります。ですから、安定供給のためにもバックアップ機能を強化する必要があります。また、11機体制にして利用可能領域を拡大すれば、アジア・オセアニア地域でも精度の高い測位が実現します」と解説します。

◆宇宙開発は“安全保障面”“防災面”でも重要

宇宙開発は“安全保障面”でも重要な領域です。近年、他国では軍事作戦支援や戦場の動向を把握することに、人工衛星からの情報が活用されています。ですから、日本の防衛力を高めるためにも、宇宙の開発・利用を強化しておく必要があります。

そして、防災面でも宇宙開発は重要な役割を担います。今年1月に発生した能登半島地震では「だいち2号」などが撮影したデータが、被災地の状況を把握するのに役立てられました。また「だいち2号」の調査によって、能登半島付近の大地が約4メートル隆起したことや、西向きに約1メートル動いたことが判明しています。

さらに、「2024年7月には、『だいち2号』を進化させた『だいち4号』が打ち上げられています。これにより、データ解析の時間が短縮されて、今後もし大きな自然災害が起こったとしても、すばやく被災状況を把握して“どこに支援をおこなうべきか”などがすぐに分かるようになります」と細川さん。

◆日本の宇宙開発を政府が支援

宇宙開発の重要性を踏まえ、日本政府は「宇宙基本計画」を策定し、我が国の宇宙開発利用を推進しています。宇宙基本計画とは、安全保障や防災・減災、宇宙科学、探査という宇宙活動を支えるロケットなどについて将来像を示し、その実現に向けた今後10年程度の取組方針を定めたものです。

近年では、月や火星などの宇宙探査活動について、民間事業者も参画して国際競争が激化していますが、日本もこうした世界的な流れに乗り、月面で使用する探査車「有人与圧ローバ」の開発などを加速させて、NASAの月面探査プログラム「アルテミス計画」に貢献し、日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指しています。

また、安全保障や社会活動における宇宙システムの重要性の高まりから、さらに人工衛星を乗せたロケットを打ち上げるなど、宇宙へのアクセスを増やす必要性があります。そのため、日本のH3ロケットなどの打ち上げ能力を高度化するだけでなく、民間企業によるロケット開発支援を加速していきます。これらの取組を通じて、政府としては2030年代前半までに、基幹ロケットと民間ロケットを合わせて年間30件の国内打ち上げ能力の確保を目指しています。

さらに、世界の宇宙市場は“2040年に1兆ドルを超える市場規模に成長する”との予測があります。そのため、日本では、民間企業や大学などが複数年度にわたって大胆な研究開発に取り組めるよう、新たに「宇宙戦略基金」を創設。これにより、先端技術開発、技術実証、商業化を強力に支援していきます。現状3,000億円の予算が割り当てられていますが、今後は総額1兆円規模の支援を目指しています。

今後は日本も世界と宇宙市場で戦うべく、まだ宇宙に携わっていない企業の宇宙分野への参入促進や新たな宇宙ビジネスの創出、事業化へのコミットの拡大などの観点から、スタートアップを含む民間企業や大学などの技術開発への支援を強化・加速していく方針です。

最後に細川さんは、「宇宙はインターネット通信や地図アプリといった身近なものから、安全保障や防災・減災といった分野まで、非常に幅広い分野で皆さんの生活に欠かせないものとなってきています。ぜひ、今後の宇宙政策、宇宙開発に興味を持って、理解を深めてみてください」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「日本の宇宙開発」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。まず、村上がポイントとして挙げたのは“宇宙開発は進んでいる!”でした。「当たり前のようにナビを使っていましたが、それは宇宙開発が進んでいるからなんだと学びました」とタメになった様子。続いて、杉浦は“暮らしに欠かせない宇宙開発”とポイントを挙げ、「ナビにとって宇宙開発がとても大事なんだと分かりました。こういうのを理解しておくのは大事ですね」とコメントしました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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10月6日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年10月14日(月・祝)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
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