「一人ひとりを尊重する国に」=中絶2度強いられた女性―議連に経験証言・強制不妊

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2024年10月08日 07:31  時事通信社

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時事通信社

旧優生保護法下で人工妊娠中絶を強いられ、手話で取材に応じる柴田邦子さん=2日、名古屋市
 8日に成立する見通しとなった強制不妊手術の被害者補償法は、これまで救済の対象とされてこなかった人工妊娠中絶の被害者にも一時金を支給するとしている。先天性の聴覚障害を持ち、2人の子どもを中絶で失った名古屋市の柴田邦子さん(84)は超党派議員連盟の会合で自身の経験を証言し、救済を訴えてきた。「一人ひとりを尊重する国になってほしい」と強く願っている。

 同様に聴覚障害を持つ夫と結婚した柴田さんは、27歳で第1子を身ごもった。中絶を強いられたのは妊娠5カ月の時。おなかが膨らみ始め、時に胎動を感じるようになっていた。

 女児と分かり、誕生を心待ちにしていた中、義母と夫の叔母が柴田さんに中絶を迫った。「生まれてくる子も耳が聞こえないだろうから、産んでは駄目だ」。抵抗したが聞き入れられず、開腹手術を余儀なくされた。

 その後に妊娠した男児は反対を押し切って出産。34歳で3回目の妊娠をしたが、「子どもは1人しか駄目だ」と再び中絶を強いられた。「産みたかった。とても悔しかった」とやり切れない表情を浮かべ、「周りは『堕ろしたほうがいい』と言う人ばかりだった。ろう学校の先輩らもほとんどが婚約や結婚を機に不妊手術を強いられていた」と振り返った。

 国は補償法に謝罪を明記し、中絶被害者に200万円を支給する。柴田さんは「謝って許されることではない。おなかから子どもを取り出された苦しみには見合わないと感じるのが本音。過ちを二度と繰り返さないで」と手話で力強く訴える。

 「障害の有無で命の選択をせず、一人ひとりの命を大切にしてほしい。障害者、弱者だからといってさげすむのではなく、みんなを尊重する社会になってほしい」。反省の下で作られた補償法の成立が、その一歩になると信じている。 

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