「検察は捜査検証を」 袴田巌さん無罪へ、弁護側は「反省」求める

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2024年10月08日 21:15  毎日新聞

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検察の控訴断念の発表を受け、記者会見で喜びを語る袴田秀子さん(左)と小川秀世・弁護団事務局長。置かれた写真は故西嶋勝彦・弁護団長=静岡市葵区で2024年10月8日午後6時38分、丹野恒一撮影

 58年にわたった闘いに、終止符が打たれた。一家4人を殺害した罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審無罪判決について、検察当局は8日、控訴を断念すると発表した。「喜びしかない」――。袴田さんはようやく「真の自由」を手にすることになるが、冤罪(えんざい)に苦しめられた事実が消えることはない。袴田さん側は、改めて捜査機関に「反省」を求めた。


 検察当局の控訴断念の発表を受け、袴田さんの弁護団は8日夜、静岡市内で記者会見を開いた。袴田さんの姉秀子さん(91)は「これで一件落着。裁判は終わる。喜びしかありません。長い間お世話になりました」と晴れやかな表情を見せた。


 袴田さんは1966年、静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社の専務一家が殺害された強盗殺人事件で、30歳の時に逮捕された。取り調べでは、県警の捜査員から「意気地のねえ弱虫」「悪いと思ってんのか、おまえは」と迫られ、「自白」。最高裁まで争ったが、死刑が確定した。


 2度目の再審請求で、静岡地裁が2014年に再審開始を決定。袴田さんは48年ぶりに釈放され、曲折を経て、静岡地裁が24年9月に再審無罪判決を言い渡した。


 秀子さんが再審で「巌はいまだに妄想の世界にいる。どうか、巌を人間らしく過ごさせていただけますようにお願いします」と意見陳述したように、袴田さんは死刑執行の恐怖で精神をむしばまれ、意思疎通が難しい状態だ。


 体力も衰え、自宅の階段を一人で上り下りすることができず、リフトや周囲の介助も必要だという。


 それだけに、弁護側は検察側に控訴断念を強く迫ってきた。検察側が控訴すれば、袴田さんの精神状態が更に悪化するとの懸念があったからだ。


 秀子さんによると、控訴断念の一報を知ったタイミングで、袴田さんは外出中だったという。「(無罪判決後は)なんとなく生き生きしています。これから完全無罪になったことを分かってもらおうと思う」と語った。


 一方、弁護団は検察側の対応を改めて批判した。検察当局が8日に公表した畝本直美検事総長の談話では、袴田さんの再審請求審の検証を行う方針を示し、長く不安定な立場に置かれていた袴田さんに対して「申し訳なく思う」と陳謝の言葉もつづられていた。


 にもかかわらず、無罪判決については「強い不満」が示されており、弁護団事務局長の小川秀世弁護士は会見で「非常に納得がいかず、けしからんと思った。反省がない。証拠を隠したり捏造(ねつぞう)したりということが非常にたくさんあった。(捜査の)最初の手続きから検証が必要だ」と訴えた。


 弁護団は会見で、民事手続きでも捜査当局の責任追及に乗り出す考えも示唆した。【丘絢太、最上和喜】



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