サラリーマン定年退職のIOC委員が五輪を変える!日本人初の会長選へ渡辺守成氏インタビュー

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2024年10月10日 11:00  日刊スポーツ

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日刊スポーツ

インタビューに応じた直後に羽田空港から海外に向かう渡辺守成氏(撮影・三須一紀)

来年3月の国際オリンピック委員会(IOC)会長選に日本人として初めて立候補した国際体操連盟(FIG)の渡辺守成会長(65)が、五輪改革案を具体的に示した。今年3月まで、イオンの社員として定年まで勤め上げた“サラリーマンIOC委員”。「オリンピズムに輝きを取り戻したい」と出馬を決意し、アジア人初の会長を目指す。【取材・構成=三須一紀】


   ◇   ◇   ◇


「たんまりの郵便物を整理するのに夜中3時までかかったよ」。渡辺氏は、たまにしか帰れない自宅での前夜の様子を明かした。年間の日本滞在日数は20日ほど。今回の帰国も1泊2日の弾丸だった。


FIG会長になり8年間で160カ国を回り、スポーツ界の現状を把握した。18年10月からはIOC委員も兼ね、会長を目指す選択肢を持って行動してきた。


「1896年に始まったビジネスモデルをこのまま続けていくわけにはいかない」。第1回アテネ大会から続く旧態依然の体質を、会長になり現場主導に変える。具体策は大会運営の主体「組織委員会」改革だ。


渡辺氏 開催都市がつくる組織委は競技には素人。競技の国際統括団体(IF)が中心となるべきだ。


東京大会では政府や都の役人が出向し、組織委を形成。海外拠点の各IFと交渉し、苦労して計画を立てた。それもIOCの鶴の一声でちゃぶ台返しされることすらある。マラソンの札幌開催はその一例だ。


渡辺氏 毎年、世界選手権を開催し競技運営のプロであるIFが最初から組織委の中心になれば準備期間は7年間もかからず短縮できる。大会経費だって半分にしたいぐらい。代理店やコンサルを極力削れ、透明性も確保できる。コストが減り、良いことずくめだ。


スーパー出身という視点も原点にある。


渡辺氏 商品陳列やレジで働く人たちが現場の課題を一番分かる。IFスタッフが現場を理解している。


税金を投入するのは自治体。金を出す主体の声が自然と大きくなるものだが、この点は“担当分け”を提案し、選手ファーストを進める。


渡辺氏 自治体は開閉会式や宿泊・輸送計画を担当し、競技は運営計画のみならず、会場選定からIFが関与すべき。そうすれば政治家や行政のアピールではなく、選手に最も適した会場が選定されるはずだ。


常々「スポーツは平和のためにある」と言う。ロシアによる軍事侵攻など戦禍で迎えた今回のパリ五輪は、平和の祭典という点で西側諸国がボイコットした80年モスクワ、東側が不参加だった84年ロサンゼルスに次ぐ「3度目の失敗」と言った。


渡辺氏 モスクワ、ロスの後にIOCは何を反省し、何を対策してきたのだろう。反省と改善、これなしでは組織は成長しない。もし、ロスの後に「スポーツが平和に貢献するためにどうすべきか」を真摯(しんし)に考え、紛争が起こりそうなところでは事前に積極的にスポーツによる平和活動を実施していたら少しは違った結果があったかもしれない。スポーツは政治から独立していなければならない。五輪開催時だけでなく、常にスポーツ界から平和活動を展開したい。


競技改革として推し進めたいのは、採点競技の透明化だ。


渡辺氏 ストップウオッチは世界共通。でも体操などの採点競技は練習や大会ごとに得点基準がバラバラ。AIを使って採点基準を統一して採点の電子化を進めたい。公平性、透明性が一番大事だ。


日本への五輪招致は目的か問うと「NO」と断言。スポーツ界の新たな地図を描くため、会長を目指す。


◆IOC会長選 他の立候補者


▽セバスチャン・コー世界陸連会長(67=英国)


▽ダビド・ラパルティアン国際自転車連合会長(51=フランス)


▽フアンアントニオ・サマランチ・ジュニアIOC副会長(64=スペイン)※父が元IOC会長


▽ファイサル王子、IOC理事(60=ヨルダン)


▽カースティ・コベントリーIOC理事(41=ジンバブエ)※女性初の会長を目指す


▽ヨハン・エリアシュ国際スキー・スノーボード連盟会長(62=英国)


◆渡辺守成(わたなべ・もりなり)1959年(昭34)2月21日、北九州市生まれ。戸畑高時代に体操を始め東海大に進学。その間、2年間ブルガリア国立体育大に研究生として留学し新体操に出会う。84年ジャスコ(現イオン)に入社し、新体操の育成強化に尽力。00年日本体操協会常務理事。04年アテネ五輪の男子団体「復活金メダル」に貢献した。09年専務理事。FIGでは13年から理事を務め、16年10月にFIG会長選で当選し、17年1月から同職。18年10月に、日本から通算14人目のIOC委員に就任した。

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