「結果、かっこ悪い」だけなのに。ズレた“戦闘モード”で職場に敵を増やし続ける女性たちの話

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2024年10月10日 22:11  All About

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仕事をする上で、これまで性差別はあっただろう。だからといって、「戦闘」「攻撃」の姿勢でいては周囲は疲れ、職場の空気も悪くなる。けれども、攻撃的なスタンスで働く女性の話を耳にする。
生きていれば、公私ともに嫌でも闘わなければならないことがある。それだけに、極力、揉めずにお互い気持ちよく生きていきたいと思う人も多いだろう。仕事においては、今や「Win-Win」が当然で、それもできれば気持ちよく進めていきたいものなのだ。

最初にマウントとらないとダメ!

ところが「最初からかましてなんぼだから、こっちの優位性を認めさせてから仕事に入った方がいい」と心の中で思っている人もいる。性的差別をするつもりはないが、女性に多いようだ。

「今まで女性は闘う場すら与えられなかったのだから、仕事を任されたなら、自分がてっぺんで仕切るつもりで闘わなければダメ。そう言い張る同僚がいるんですよ」

苦笑しながらそういうのはワカコさん(48歳)だ。彼女はずっと共働きをしてきて、今は18歳と15歳の子がいる。

新しい部署に移ったのは2年前。たまたま同期のユミさんがいたので、仕事がしやすくなると思ったのだが、実際には逆だった。

「彼女も私もチームリーダーで、それぞれ3人くらいの後輩を抱えて仕事をしているんですが、彼女のチームの30代の子が泣きついてきたんです。もっと闘えとユミさんに言われて、もう疲れたと」

「脅して弱らせて従わせる」なんて嫌

新しい取引先との打ち合わせで、ユミさんはひたすら相手にダメ出しをした。打ち合わせが終わって会社に戻ると、ユミさんは後輩に「まあ、ああいうふうにしておけば、相手は弱くなるから」と言ったそうだ。

「脅して弱らせて、こちらのやり方に従わせようとしたんでしょう。後輩には、それが耐えがたいほど嫌だった、と。後輩は相手との信頼関係を築いて、穏やかに話し合って決めていきたかった。それなのにユミがいきなり一発かましたものだから、なんとなく相手の仕事へのノリが悪くなったのだそう。

そりゃそうですよね。でもユミは、そういうやり方が正しいと思ってる」

ちゃんと話し合いましょうと言った後輩に、「あんたはいつもそうやって相手の顔色をうかがうのね。それじゃいい仕事はできない」と言い放ったそう。

いや、相手を嫌な気持ちにさせたらいい仕事はできないとワカコさんは説得したが、ユミさんの気持ちを翻すことはできなかった。揚げ句の果てに「あなたは闘うことを忘れちゃったのね。情けない」とつぶやいたそう。

「私からみれば、今でもカリカリ怒って、それをエネルギーにしているユミのほうがずっと寂しいと思いますけどね」

声に、そこはかとなく諦めがにじんでいた。

毎日のように上司にクレームをつける先輩

「うちの部署の先輩女性は、どうやら部長が嫌いみたいなんです。何か確執があったのかどうか分からないけど、『あいつはセクハラ男だからね、気をつけて』とみんなに言ってた。でも私はあまりそうは感じないし、むしろいい人だと思うんですよね」

ヒカリさん(32歳)は、10歳年上の先輩についてそう言った。先輩はその部長を目の敵にしていて、毎日、何か言ってへこませてやりたいと思っているらしい。

「部長の方は言い返すわけでもなく、知らん顔しているから、周りはみんな先輩がヘンな女だと思うようになっています。それでも『ああいう女の敵とは闘わなくちゃいけないのよ』と言うんです。なぜ女の敵なのかと聞いても、詳細は教えてくれない。

どうやら先輩の昇進を阻んだ張本人だといううわさもありますが、単純に生理的に嫌いなだけかもしれません」

昇進を阻んだのが事実だったとしても、そこには複雑な理由があったのかもしれない。それはヒカリさんには分からない。

「結果、かっこ悪いんです」

それでも、会社にいる目的は仕事をすることだ。本人と周りを嫌な気分にさせるため、先輩自身が悪影響を及ぼす原因だと言われるかもしれない。現にそう見ている人もでてきている。

「だから心配しているんですけど、彼女は、闘うことは正義を貫くことだと思い込んでいるから、あなたたちは私たちが作ってきた道を歩いていけばいいだけだから楽よねとまで言って、若い女性社員の反感を買ってます」

確かに女性が社会で働くことには、さまざまな難関があっただろう。それは今も残っている。だが、自分たちが道を切り開いてきたと自分で言って周りが納得するとは思えない。もしもそうだったとしても、自分で言った時点で終わりである。

「結果、かっこ悪いんですよ。朝から『部長、今日のネクタイ、センス悪いです』『顔、むくんでますよ。飲み過ぎじゃないですか』と不快感をまき散らす先輩が。ジョークですむほど仲がいいなら別ですけど、そうじゃないから朝は誰も言葉を発しない。そういうのは『闘い』じゃないと思うんですが、先輩には分かってもらえない……」

ヒカリさんは毎日ひそかに心を痛めているというが、なす術(すべ)もない。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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