【ドラフト2024】猛アピールで運命の日を待つ ファーム新球団・オイシックス新潟アルビレックスBCの4人

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2024年10月11日 07:30  webスポルティーバ

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 10月24日に迫ったプロ野球ドラフト会議。そこで指名を待つのは、アマチュア球界や独立リーグの選手たちだけでない。NPB12球団の指名を待つ身でありながら、NPBの二軍選手たちと年間通して戦い、いわば「毎日がトライアウト」という状況をたくましく戦い抜いたファーム球団の選手たちがいる。

【社会人を辞め一念発起でオイシックス入団】

 今季からファームのみで活動する新球団として『くふうハヤテベンチャーズ』(ウエスタン・リーグ)とともに参入した、『オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ』(イースタン・リーグ)。

 昨年まで独立リーグであるルートインBCリーグに所属していたが、当然相手のレベルは格段に高くなり、薮田和樹(前広島)や高山俊(前阪神)といったタイトル経験者らの補強を敢行はしたものの、41勝79敗6分(勝率.342)の最下位(8位)で全日程を終了。ホーム開催では33勝28敗3分と健闘を見せたが、悔しい結果に終わった。

 その一方で、たしかな結果を残し、ドラフト指名に向けて猛アピールした選手たちがいる。その筆頭格が、首位打者を獲得した知念大成だ。

 沖縄尚学高では投手として最速150キロ左腕として活躍し、高校卒業後に沖縄電力に入社。社会人野球日本選手権での登板もあったが、打力を生かして外野手に転向。

 社会人野球を統括する日本野球連盟のジュニア合宿では、打球速度や飛距離、スイングスピードや50メートル走の測定で、並いる好選手たちを抑え上位に入っていた。だが全国大会出場や日本代表選出、ドラフト指名には至らなかった。

「(身体能力に)自信はあったのですが、野球の結果につなげることができませんでした」と苦しい日々が続いた。

 そこで24歳となる今季を前に、「体が元気なうちに勝負しよう」と一念発起。多くの人たちが反対するなか、地元の超安定企業を捨てて、ドラフト指名を目指しオイシックスに加入した。

 すると6月にイースタン・リーグで28安打(リーグ2位)、7二塁打(同3位)、41塁打(同1位)、打率.364(同3位)の好成績で、新規参加球団所属選手初のファーム月間MVPを受賞した。その後、相手のマークは厳しくなったが、それでもヒットを積み重ね、打率.323でイースタン・リーグの首位打者を獲得したのだ。

「長い間を戦うのでデータは取られますし、さまざまな攻め方をされました」と、これまでにない消耗したシーズンだったと知念は振り返った。それでも野村克也監督のもとでヘッドコーチ、また巨人や侍ジャパンでは戦略コーチを務めたオイシックスの橋上秀樹監督と共有しながら、試行錯誤したことが結果となって表れた。

「勢いだけでうまくいく世界ではないので、考えながら試合のなかでの"読み合い"も意識しました。一方で、"負けたら終わり"の社会人野球で必死に泥臭くやっていた姿勢は、試合数の多いプロの世界でも変えていません」

 新たなことを取り入れつつも、かつての経験も生かし、うまく融合させた。

 社会人時代から「ドラフト30位でも行きたい」と切望するプロの世界。イースタン・リーグ首位打者という最高の結果を誇りに、プロからの指名を待つ。

 オイシックスには知念のほかにも、タイトル獲得者が出現。創価大時代から最速を3年間で8キロ上げて148キロとしたサイドスロー右腕・上村知輝が20セーブ、アンダースローから浮き上がるストレートや多彩な変化球を武器とする神奈川工科大出身の下川隼佑が102奪三振で、それぞれタイトルを獲得。

 ともに大卒3年目の今季、タフな相手と試合日程に揉まれ、それぞれ結果を残したことで一躍「ドラフト候補」として注目される存在となった。

【大化けの予感漂う速球派左腕】

 結果を残すことは、アピールするうえで大事なことであるが、その一方でNPB球団のスカウトからは「二軍の成績だけでなく、一軍の戦力になれるかどうかを見ている」という声も聞こえる。今後の伸びしろや将来像も、大きな評価のポイントとなるのだ。

 そういう意味で、「大化け」の予感を漂わせているのが、新潟医療福祉大出身の1年目左腕・目黒宏也だ。「だんだんと出力が下がって、ストレートで押せなくなっていました」と振り返ったように、今季は4勝7敗、防御率5.75と成績は残せなかった。

 しかし9月10日の楽天戦で中継ぎとして登板すると、自己最速となる150キロを記録。また橋上監督が「スライダーの回転数の数値が抜群によかったそうです」と話すように、武田勝コーチに指導を受けている変化球でも、大きな可能性を感じさせた。

 さらに、野間口貴彦ヘッドコーチからの「2球以内に(最低でも)1ボール1ストライクのカウントをつくって、自分のペースで投げるように」という教えのもと、ストライク先行の投球スタイルで、持ち味を伸ばそうと励んでいる。

 先述の楽天戦では3イニングで59球を投げたが、それから中3日の9月14日の巨人戦では、3842人の観衆の前で先発。2回に二死から増田陸に3ランを浴びるなど、5回4失点で敗戦投手。それでもボール自体はすばらしく、ストレートも140キロ台後半をコンスタントにマーク。まだまだ課題は多いが、きっかけひとつで、ストレートを中心に打者をねじ伏せる"速球派リリーバー"の未来像も見えてくる。

 生まれも育ちも、これまで所属したチームもすべて新潟で、降雪の多い冬場は毎年のように地道なトレーニングに励んできた。その成果が実り、「純新潟産左腕」がNPBの世界で羽ばたくかもしれない。

 年間を通して戦うなかで、橋上監督は「春先に比べると、投打ともに相手のスピードに対して対応力が上がりました」と、選手たちの成長を感じている。新たな種まきをした1年目の秋に、はたしてどんな収穫が得られるのか。その結果が表れるのは、もうすぐだ。

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