栃木県宇都宮市で、時速160キロの車に追突されて男性が死亡した事故をめぐり、宇都宮地検が被告の起訴内容を「過失運転致死の罪」からより刑が重い「危険運転致死の罪」に変更するよう請求しました。
【写真を見る】事故から1年半以上… 時速160キロ追突死亡事故 宇都宮地検が危険運転致死罪に変更請求 遺族「やっと土俵に上がった」【news23】
「なんでこんなに家族を亡くした遺族が頑張らないといけないのか」夫を事故で亡くした佐々木多恵子さん
「こういう事故を起こした加害者はとても憎いです。それ相当の罪で裁いていただきたい」
佐々木多恵子さんの夫・一匡さん(当時63)は2023年2月、バイクを運転中に猛スピードで乗用車に追突され亡くなりました。
相手の車は時速160キロ以上で走行。現場は一般道で、法定速度を100キロ以上オーバーしていました。
一匡さんが乗っていたバイクの車体の後ろは原形をとどめず、シートは前方にはね上がっています。
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夫を事故で亡くした佐々木多恵子さん
「160キロで追突された主人がものすごく不憫で、ものすごくかわいそうで、いたたまれなくなって、私も閉じこもってずっと過ごしてきました」
宇都宮地検は車の運転手・石田颯汰被告(21)を、刑の上限が懲役20年の「危険運転致死」ではなく、上限が懲役7年の「過失運転致死」の罪で起訴しました。
夫を事故で亡くした佐々木多恵子さん
「(ぶつかるまで)まっすぐ走れているので、それは運転を制御できていることにあたるので、危険運転にはなりません。過失運転ですということだったんですね。これはもう私は許せないなと思って」
多恵子さんは「危険運転」の適用を求め、7回にわたって地検に署名を提出してきました。
夫を事故で亡くした佐々木多恵子さん
「なんとも言えないですね。何回こういうことを繰り返しているのかと」
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そして10日、宇都宮地検は…
宇都宮地検
「被告人・石田颯汰に対する過失運転致死被告事件について、危険運転致死への訴因変更を請求する手続きを行いました」
この変更を裁判所が認めれば、多恵子さんが求めている危険運転致死の罪で裁判員裁判が行われます。
夫を事故で亡くした佐々木多恵子さん
「素直に嬉しいです。やっと土俵に上げていただいたので、とても感謝しております」
事故から1年半以上。10日までに多恵子さんたちが集めた署名は、7万6000筆を超えています。
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10日午後、多恵子さんとともに会見に臨んだ東名高速飲酒運転死亡事故の遺族は、次のように語りました。
東名高速飲酒運転死亡事故の遺族 井上郁美さん
「なんでこんなに家族を亡くした遺族が頑張らないといけないのか。こんなに待たせて、こんなに動いて、やっと訴因変更してくれる。なんでここまで遺族にやらせるのかと検察に対して感じています」
小川彩佳キャスター:
一番つらい思いをされているご遺族に、このように言わせてしまっている現状には、やはり歪みを感じてしまいます。法務省は検討会を設置して、この危険運転致死傷罪の適用見直しについて議論しています。
株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
前提としては、やはり司法の裁きというのは厳正なものであるべきですし、多数決的な民心に流されるべきものではないと思います。
しかし、今回のように法定速度を大幅にオーバーしていて、危険運転の立証がとても難しいからあまり選ばれないという現状は、明らかに歪んでいるのではないでしょうか。
こういうことこそ法務省や国会に優先的に議論をしていただかないと、被害はどんどん続いていくのではないかと思います。
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<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒 クイズプレーヤーとして活躍中