サッカー日本代表、「超攻撃的」から一変 堂安律、三笘薫の守備での健闘は宝の持ち腐れ

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2024年10月11日 16:50  webスポルティーバ

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 10月10日、2026年W杯アジア3次予選、日本は敵地でサウジアラビアを0−2で順当に下している。予選は中国戦、バーレーン戦に続きこれで3連勝。アジアを舞台にした戦いでは、今や欧州の有力クラブに多くの選手が在籍する日本の優位が濃厚に出ている。

 アジアでは力の差を見せているが、森保一監督が率いる日本の目標はあくまで「W杯ベスト8」だ。

 強豪との一戦を仮想した場合、W杯常連と言えるサウジアラビア戦では暗い不安もよぎった――。

 森保監督自身が、最終予選進出を決めてから採用している3−4−2−1を本心ではどう捉えているのか、正直な話、わからない。「有力な左サイドバックがいない」という現実のなかでの選択だったとも言えるが、周りは、「攻撃的なフォーメーション」と捉えてきたし、一部選手も「攻撃的な布陣」としてトライしている。実際、中国戦とバーレーン戦では12得点無失点で、多くの選手がゴール近くでプレーし、攻撃色は強くなっていた。だが......。

 サウジアラビア戦では、日本が攻める機会は過去の2試合と比べて激減した。敵地だったのを差し引いても、攻撃はカウンター、もしくは個人の力に頼るものが多かった。3−4−2−1というよりも5−4−1に近く、守備的な性格が濃く出た。

 ひとつは、久保建英が不在の影響が出たか。先制点を決めた鎌田大地が悪かったわけではない。だが彼は前線から下がるよりも、ボランチに近い位置でプレーメイクに関わりながら前に出ていくべき選手ではないか。一方、久保はうまくサイドや中盤に落ち、同じ左利きの堂安律との相性もよく、ラストプレーにも強さを見せ、攻撃を活性化できる。

 サウジアラビアは平凡な選手が多いが、世界一の金満リーグでスター選手を相手にするのに慣れているようだった。何より、フィジカル的な能力は高い。19番のサレム・アルダウサリのような個も擁し、ポゼッションで上回ってきた。

【勝利のなかにも修正点が】

 その結果、日本は両ワイドの堂安も三笘薫もポジションを下げ、守備に回らざるを得なかった。ふたりは本来、高い位置でドリブルから突き崩したり、連係から攻撃の多様性を生み出したりすることで持ち味を出せるアタッカーである。守備で健闘していたが、本末転倒だろう。騎兵として自由にサイドを蹂躙することで最大の力を発揮する選手が、馬を降りて塹壕の中に身をひそめて銃を放ち、歩兵で乱戦に挑むのなら「宝の持ち腐れ」だ。

 サウジアラビアのような相手でも、3−4−2−1で「攻められない」という証左になってしまった。

<勝利のなかに敗北は潜んでいる>

 それはスペインの指導者界隈での格言に近い。勝って兜の緒を締めよ、にも言い換えられるが、勝ったらすべてがOKというわけではないだろう。むしろ負けたからといって、必ずしもネガティブではない、というのがサッカーの真理である。

 もし"勝てば官軍、負ければ賊軍"という考え方だったら、森保ジャパンは世界ベスト8レベルの相手には打ちのめされる。

 たとえばGK鈴木彩艶は、ワールドクラスと言えるセービングを見せた。彼の得意とする反射神経を使ったはじき出すプレーだった。しかし、ハイボールの予測や準備や決断では、相変わらず不安定。前半、CKにふらふらと飛び出し、完全にかぶって、ボールが抜け出たシーンは失点ものだった。また終了間際、ロングボールをヘディングで合わせられたシーンは、センターバックふたりがややお見合いした形になったとはいえ、GKが出られるだけの余裕があり、コミュニケーションも含めて修正点だろう。

 プレーのダイジェストを見れば、鈴木はヒーローに近い。しかし、成功したプレーの陰にある、大きな傷にならなかったプレーには大いに不安を感じさせる。その波の激しさは、アジアカップからセリエAという世界最高峰のクラブでプレーするようになっていても変わっていない。ポテンシャルの高さは歴然としているが......。

「自分たちがボールを持つ時間を増やす」

 カタールW杯後、森保監督は、ベスト8に進む条件のひとつとして、イニシアチブの重要性を挙げていた。ドイツ、スペインを撃破した戦いは、そもそも僥倖に近かった。あの時よりも主体的な戦いができないなら、次は一敗地にまみれるだろう。端的に言えば、W杯ベスト8は夢と消える。

 現状、ピッチに立った日本の選手たちは、それぞれが連係し、やるべき答えを見つけ出すことができる。欧州トップレベルでの戦いで、彼らはその適応力を身につけている。おかげで、どんなフォーメーションも運用できる。ただ、不具合が生じた途端、攻撃的から守備的に完全にシフトチェンジせざるを得ないなら、そのフォーメーションには欠陥がある、ということになる。

 10月15日、埼玉。オーストラリア戦はひとつの試金石になるだろう。オーストラリアは世界の強豪とは言えないが、カタールW杯もベスト16に勝ち進んでおり、地力はある。森保ジャパンの真価が問われる。

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