※本稿は『呪術廻戦』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。
コミックスの累計発行部数が累計1億部を突破し、名実ともに『週刊少年ジャンプ』を代表するヒット作の1つとなった『呪術廻戦』。そんな同作が、いかなる経緯を経て生み出されたのかご存じだろうか。
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これまで作者の芥見下々は、さまざまなところで自身の創作に関わるエピソードを語ってきた。今回は意外な裏話の数々をまとめて紹介しつつ、“ありえたかもしれない可能性”を考えてみたい。
『呪術廻戦』といえば、読者の心を抉るようなハードな展開の多いダークファンタジーだが、ここに至るまでには紆余曲折があった。なにせ芥見が初めて出版社に持ち込んだ作品は、ギャグマンガだったというのだ。ストーリーマンガ向けの「手塚賞」ではなく、ギャグマンガの殿堂として知られる「赤塚賞」に持ち込みを行ったのが、漫画家としての第一歩だった。
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受賞には至らなかったものの、そこで編集者に才能を見出され、さまざまな読み切りに挑戦していくことに。その中で生み出されたのが、『呪術廻戦』の原点となる読み切り『No.9』だった。同作は2015年に『少年ジャンプNEXT!!』と『週刊少年ジャンプ』で発表されたものだが、色々と“見覚えのある設定”が多い。
まず主人公・九十九恢勝は五条悟を思わせる性格をした白髪のキャラクターで、業界で“最強”と呼ばれるほどの実力をもつ。また、その能力は「積木」をモチーフとしており、磁石のように組む力と崩す力を操るのだが、いわば「無下限呪術」のような異能だった。
また、「一度人を殺せば 人を人として見れなくなるぞ」など、『呪術廻戦』に出てくる名ゼリフの原型のようなものが所々に登場していることも印象的だ。
その後、大きな転機となったのが2017年に『ジャンプGIGA』で発表した『東京都立呪術高等専門学校』。ご存じ『呪術廻戦』の前日譚にあたる作品だ。しかし2021年に芥見が出演した『漫道コバヤシ』(フジテレビONE)で語られたところによると、当初は本誌の連載で続編を描くつもりはなかったそうだ。
というのも実は元々連載を考えていたのは、プリキュア的なものが現実にある世界で繰り広げられる「アイドル格闘もの」で、編集者に難色を示された結果、「呪術をもっかいやってみよう」と言われたのだという。
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また同番組では、当初のタイトル案が「呪胎戴天」だったが、読者が覚えにくいため「呪術」という言葉を入れたものになったというエピソードも明かされていた。
■主人公は虎杖ではなく伏黒の予定だった?
『呪術廻戦』の連載が始まる前には、連載会議で不採用となったネームが存在した。いわばプロトタイプにあたるその物語は『呪術匝戦』(じゅじゅつそうせん)という題名で、「芥見下々『呪術廻戦』展」にて第1話から第3話までの内容が明かされている。
『呪術匝戦』の設定は『呪術廻戦』とある程度共通しているが、いくつか大きな違いもあり、たとえば主人公は虎杖悠仁ではなく伏黒恵にあたる人物の方だった。彼の姉・津美紀は「怪病」という謎の病におかされていたが、彼自身も強力な呪いに身体を乗っ取られてしまい、そこに五条のような最強の呪術師が駆け付ける……といった流れだ。
また本編では終盤に描かれた「死滅回游」が、ストーリーの冒頭に来るように構成されているのも大きな相違点。ここでは七海建人の原型と思われる人物が、敵キャラクターとして登場する構想だったようだ。
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その一方、『東京都立呪術高等専門学校』については、『呪術廻戦 公式ファンブック』にて興味深いエピソードが語られていた。同作は、初代担当編集から学園モノを描いてみるように勧められたことが執筆のきっかけだったが、そこで特級過呪怨霊・祈本里香の設定に関して疑問を呈され、誰にでも伝わるような「織田信長的なもの」にしてはどうかと提案されたそうだ。
芥見自身はこの提案を受け入れるつもりはなかったようだが、結果としてそのまま編集部の会議に通ったため、設定を変えることなく済んだという。
そのほか『呪術廻戦』の作中には、作者である芥見のプライベートな部分とつながるような要素も多い。虎杖は幼少期を岩手で過ごし、その後仙台へと移ったという設定だが、これは岩手出身で小学生の時に仙台に引っ越したという芥見の経歴と重なる。
また『呪術廻戦 公式ファンブック』によると、東堂葵はレスリングで国体に出たという学生時代の先輩がモデルになっており、その人物から聞いた話が本編にも反映されているという。
芥見の才能や個性、生き様などが詰め込まれている『呪術廻戦』。『週刊少年ジャンプ』での連載は完結したが、単行本やアニメ版はまだ続いているので、その物語を最後までしっかり見届けたい。
(文=キットゥン希美)
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