骨伝導イヤフォンの弱点を空気伝導ドライバー併用で克服した「OpenRun Pro 2」を試す

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2024年10月15日 14:11  ITmedia PC USER

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音質がさらに向上したShokzのハイエンド骨伝導イヤフォン「OpenRun Pro 2」

 骨伝導イヤフォンを手掛けるShokzが9月5日に発売した「OpenRun Pro 2」は、同社の最新フラグシップモデルだ。以前の社名であるAftershokz時代の「Aeropex」(2019年発売)を使っていた筆者が、最新モデルの実力を試してみたので、詳細をチェックしていこう。


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 Shokzは、2011年に米国で創業した骨伝導イヤフォンのパイオニアともいえるメーカーだ。先ほど挙げたAeropexは、コロナ禍で多くの企業がリモートワークに切り替わったとき、オンライン会議の機会が増えたユーザーから装着感の良さを指摘されていたのは記憶に新しい。


 筆者もその内の1人だ。よくあるオープンイヤー型のイヤフォンとは異なり、完全に耳をふさがずに装着できる。しかも本体重量が約26gしかないので、長時間の会議も苦にならない素晴らしい製品だった。


 だが、そんなAeropexにも欠点はあった。骨伝導ゆえに低音域が減衰するような感じや、ビデオ会議の通話音声が少しこもったように聞こえるなど、正直なところ、音質には不満を覚えていた。


 音質だけでなく、充電に専用のマグネットケーブルを必要とする点もイマイチだ。コネクターにケーブルを差し込まなくても接点で接続できるため気軽ではあるが、充電ケーブルに汎用(はんよう)性がなく、Aeropexを充電するためだけに専用ケーブルを持つ必要あった。


 そんな経験から、最新のOpenRun Pro 2はこれらの不満点がどのように払拭(ふっしょく)されているのか期待していた。早速実機をチェックしてみよう。


●充電はUSB Type-Cに対応 専用ケーブルにサヨウナラ


 商品を開封してみると、専用のキャリングポーチ、本体、取扱説明書、USB Type-Cケーブルが付属している。今回はAeropexからの変化を強く実感するために、あえて製品仕様をチェックしていなかったので驚きはひとしおだ。


 本体右側のキャップを外すと、USB Type-Cポートが見える。充電時間は約1時間で、最大12時間の音楽再生が可能だ。


 急速充電にも対応しており、5分間充電するだけで最大2.5時間利用できる。会議の準備中にバッテリーが切れていることに気が付いても、5分間の充電時間を確保するだけで、1回分の会議をしのげるようになっている。


 基本的なスペックとして、接続はマルチペアリング対応のBluetooth 5.3、対応プロファイルはA2DP/AVRCP/HFP、対応コーデックはSBCとなっている。専用アプリ(iOS、Android)で細かなイコライザー設定も可能だ。本体はIP55レベルの防じん防水性能も備える。


●OpenRun Pro 2の外観をチェック!


 続いてOpenRun Pro 2の外観についてチェックしていこう。今回手元にあるのは、プロの陸上競技選手である大迫傑さんとのコラボモデルで、他のブラックやオレンジモデルはツートンカラーなのに対し、スタイリッシュな仕上がりとなっている。


 スピーカーユニットにはマグネットが組み込まれているようで、写真のようにユニット同士がピッタリとひっつくようになっている。カバンの中に放り込んでもコンパクトにしまえる。


 ダミーヘッドを使ってOpenRun Pro 2の装着イメージを紹介しよう。OpenRun Pro 2を耳に引っかけると、骨伝導ドライバーが耳珠(じじゅ:耳の穴の前の出っ張り)の前にある骨、顎の根元の骨に当たるようになっている。OpenRun Pro 2は骨伝導ドライバーとあわせて空気伝導ドライバー(写真のメタリックカラーのユニット)が耳の穴方に向く。


 こうすることで、骨伝導ドライバーで高音域から中音域の音を実現しつつ、骨伝導ヘッドセットの弱みである、低音域の音を空気伝導ドライバーに担当させて音質向上を実現している。


 Aeropexと比べると、デュアルドライバー構成になったこともあって重量が約4g増加して約30gとなっている。


 仕様としては本体重量が増加している状況だが、軽量なことには変わりない。実際に1日中装着して試用してみたが、疲れや装着しているときの締め付け感などもなく大変快適に利用できた。


 OpenRun Pro 2は普通のイヤフォンとは違って、後頭部にアームを引っかける形なので、人によってはフィットしない場合もある。そのため、OpenRun Pro 2はスタンダードモデルと、スタンダードモデルと比べて21mm短くなったミニモデルを展開している。


 今回の大迫傑モデルは残念ながらスタンダードモデルに限られているが、好みのフィット感を選べる点はうれしい仕様だ。Shokz製品は国内の家電量販店にも販路が展開されているので、店頭で試着できる強みもある。興味のある方は購入前にフィット感を事前に確認しておくと良いだろう。


 右耳に当てるユニットには、ノイズ低減用のマイクを2基内蔵しているが、こちらのマイクで周囲の環境音を取り込み、AIノイズ低減アルゴリズムを使って環境ノイズを96.5%削減できるという。


 実際に筆者も2日間ほどビデオ会議に利用してみたが、クリアな音質で会議に臨むことができた。リスニング音質の向上だけでなく、マイク音質も改善されており、ビデオ会議用にピッタリな製品だ。まさに、非の打ち所が無いと個人的に感じた。


 電源のオン/オフや、ボリューム調整の操作も簡単で、右耳側にボリュームアップボタンと、ボリュームダウンボタンの2つだけのシンプルな構成になっている。電源を入れる際はボリュームアップボタンを長押しする形だ。


 操作自体がシンプルなので、装着した状態であっても目視せずに電源操作やボリューム調整が行えるのは便利だ。


●デュアルドライバーで骨伝導イヤフォンの弱点をカバー


 外観チェックでも軽く触れたが、OpenRun Pro 2は骨伝導イヤフォンと題しながら、骨伝導ドライバーだけでなく、空気伝導のドライバーのデュアル構成を取っている。


 Aeropexを利用していた際は、骨伝導ドライバーのみで音を鳴らしていたため、どうしても骨に響きにくい低音域が減衰してしまうデメリットがあった。


 OpenRun Pro 2では、この弱点を解消するために骨伝導ドライバーと空気伝導ドライバーのデュアル構成を採用した。正直これには驚いた。てっきり、前世代の「OpenRun Pro」と同じく、低音増強ユニットが搭載されるものとばかり考えていたからだ。


 なぜ、骨伝導イヤフォンのメリットを捨てて、空気伝導ドライバーを搭載したのか。「オープンイヤー型なので音漏れしてしまうのではないか?」と読者の方は思うのではないだろうか。筆者も当然そう考えたのだが、しっかりと対策がなされているので安心してほしい。


 OpenRun Pro 2は骨伝導ドライバーと空気伝導ドライバー両方で音漏れ対策を実施しており、適切な音量に設定すれば隣に座っていても音が聞こえないようになっている。


 実機を使って試したところ、静かな室内で音量を最大にするとかなり音漏れしてしまうが、通常利用であれば大きな問題にならない、という驚くべき結果となった。


 少し話が横にそれてしまったが、音質の話に戻そう。OpenRun Pro 2は高音域〜中音域は骨伝導ドライバーで、低音域は空気伝導ドライバーで鳴らし分けることで、骨伝導イヤフォンとは思えないような音質の高さを実現している。


 超軽量ながら音質の高さを実現しているため、会議中だけでなく作業用のBGMを再生する、装着したまま音楽を聞きながら外出できる等の点もあって、日中帯はずっと付けていられるイヤフォンに仕上がっている。


 筆者は朝方から昼にかけてドラムベースのような重低音メインの音楽を、昼以降はハイトーン寄りの音楽を聴くようなスタイルを採っている。


 OpenRun Pro 2はこのどちらもそつなく、会議中だけ利用するイヤフォンではなく、仕事中にずっと付けられるイヤフォンとして活躍してくれそうだ。


 Web会議用のヘッドフォンではなく、どんなシーンでも利用でき、軽くて耳をふさがないイヤフォンとしては、個人的にここ最近発売された物としては最高の製品だと感じたので、気になった方はぜひ一度家電量販店などで、実機を試してみてほしい。



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