東京メトロが会社設立20周年での初出場に向けて戦力充実、エースの上杉真穂はマラソン世界陸上代表に意欲【プリンセス駅伝】

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2024年10月17日 12:03  TBS NEWS DIG

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女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝(11月24日・宮城県開催)の予選会であるプリンセス駅伝が10月20日、福岡県宗像市を発着点とする6区間42.195kmのコースで行われる。30チームが参加し、上位16チームがクイーンズ駅伝出場資格を得る大会。注目チームの1つが創部5年目の東京メトロだ。上杉真穂(29)、小笠原朱里(24)、佐藤奈々(35)ら実績のある選手が昨年以降に加入。東京地下鉄株式会社(東京メトロ)が設立されて20周年の今季、初出場の機運が盛り上がっている。

駅伝をステップにマラソン代表選考レースに挑む上杉真穂

1区(7.0km)の可能性もあるが、エース区間の3区(10.7km)は上杉が任されそうだ。高校時代は無名選手だったが、22年にマラソンで2時間22分29秒をマークし、日本代表を狙えるところまで成長した選手である。昨年のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)で11位と敗れた後は、パリ五輪は断念して弱点だったスピードの再強化に取り組んだ。

2月の丸亀国際ハーフマラソンは1時間09分24秒の自己新で6位。トラックで何度も日本代表になった鈴木亜由子(33、JP日本郵政グループ)に次いで日本人2位と好走した。「そこまでハーフの練習はしていなかったのに」と中村悠希監督。前所属時代を含め、上杉に10年以上関わってきた指導者の感想だ。

5月のリスボン・ハーフマラソンは暑さに苦しめられ、1時間13分05秒の13位。7月のトラックレースも、直前に新型コロナに感染した影響で平凡だった。良くない流れは9月のシドニー・マラソンでも変えられず、2時間29分18秒で6位。10kmから単独走になってしまった影響もあったという。

試合に合わせられない失敗が続いているが、「丸亀の後も良い練習はできている」と中村監督。「シドニーに向けて一度しっかりと(長い距離の)練習をしたので、駅伝でもう一度スピードを入れて、冬のマラソンに合わせて行きます」

来年の東京世界陸上が大きな目標になる。参加標準記録は2時間23分30秒で、日本の女子トップ選手にとっては難しくない。来年1月の大阪国際女子マラソン、3月の東京マラソンと名古屋ウィメンズマラソンが選考競技会。その3レースで標準記録を破った選手から、東京世界陸上代表は選ばれる可能性が高い。

「上杉本人は2時間20分30秒が見えているようです。タイムも順位も、文句が出ないような走りをしてほしいですね」駅伝初出場を狙うチームにとって、1つ上のステージで戦うエースの存在は頼もしい。

復調の兆しを見せる小笠原朱里と、練習が継続できるようになった森田歩実

昨年移籍加入した小笠原も、5000mで17年の日本選手権3位という実績の持ち主。そのとき記録した15分23秒56(高校歴代2位)は、実業団駅伝でも区間賞候補といえるレベルだ。

しかしその後は故障に悩まされ、良くなりかける時期と悪い時期を繰り返している。20年には10000mで32分10秒69、ハーフマラソンで1時間10分25秒と自己新で走ったが、5000mのシーズンベストは21〜23年と下降線を描いた。

「今は痛みなく走れていますよ」と、石川県の先輩でもある中村監督(05年日本選手権5000m2位)。「パーソナルトレーナーをつけて動きや、体の使い方を考えてトレーニングをしています」。9月の日体大長距離競技会5000mでは16分04秒26と、この4シーズンで最高タイムをマーク。復調の兆しが表れてきた。

森田歩実(28)も9月の日体大5000mで15分55秒76の自己新をマーク。「単独走で出した記録なので、もっと行けると思います」と中村監督。「スタミナのある選手で、今年の東京マラソンでは2時間31分38秒で走りました。マラソン練習は上杉と一緒にやっています」。起用区間は「森田は向かい風も強い」(中村監督)ことから5区が有力か。1、3区を上杉と小笠原が分担することになりそうだ。

チームを盛り上げるキャプテン村上愛華

クイーンズ駅伝出場権は16位以内。そこに絶対に入る確証はない。ボーダーラインでレースを進める可能性もある。中村監督は以下のようにレースを展望する。

「予測は難しいのですが、1区は8位以内でつなげると思います。最短区間の2区(3.6km)を上手くつなげば、3区も順位をキープできる。インターナショナル区間の4区(3.8km)を(日本選手で)耐えれば、5区は順位を上げられるかもしれません。そこで勝負(16位以内)をつけられる」

プリンセス駅伝は主要3区間が、レースの流れを作ったり変えたりすることが多い。だが接戦になったり、予想以上の走りをする選手が現れたりすれば、それ以外の区間が勝敗に影響することもある。

主要3選手以外では佐藤が、5000m自己記録で15分36秒28とレベルが高い。クイーンズ駅伝でも21年大会で1区区間7位の実績を持つ。上杉、中村監督らとともに移籍してきたが、東京メトロ加入後はコーチ兼任ということもあり、昨年まで4シーズン続けてきた15分台を出せていない。だが9月の全日本実業団陸上5000mで16分35秒49と、移籍後の自己最高をマーク。15分台はないが記録は安定して出している。主要区間以外なら堅実な走りが期待できる。

そしてキャプテンの村上愛華(26)がキーパーソンになる。眞田木葉(21)とともに社歴は最も長い。

「入社したときから駅伝で、全国大会(クイーンズ駅伝)に出たいと頑張ってきた選手です。周りに気配りをして、チームの雰囲気作りを考えてくれている。駅伝に懸ける思いが強く、そういう選手が走ればチームに勢いが付きます」

中村監督は今年4月1日に就任したが、冬期練習の内容は把握していた。「当初は僕も練習を欲張りすぎて、ケガや体調不良を繰り返す選手もいました。夏からはしっかり練習を継続することも意識して、選手個々に合わせて練習し、積み上げることができたと思います。僕が言うのも何ですが、しっかり練習して、競技に打ち込めている。選手それぞれが成長しているのがわかりますよ。普通に力を出せば8位以内に自ずと入るでしょう」初出場を目指す東京メトロは、ボーダーラインのはるか前を走るつもりでプリンセス駅伝に挑む。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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