「約束より給料が3万少ない!」「試用期間を延長されて…」就職・転職時に注意、労働契約トラブルを弁護士が解説

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2024年10月18日 11:30  ORICON NEWS

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就職・転職時によくあるトラブルは?
 「話が違う!」…就職活動や転職活動で、入社前に提示されていた待遇と実態が異なるといった話題がたびたびSNSやニュースに挙がる。以前も、某食品メーカーによる募集要項と実際との大きな違いが、多くの人を驚かせた。こうした労働契約にまつわるトラブルを防ぐ方法は? 我々はどのようなことに注意すべきなのか。アディーレ法律事務所・島田さくら弁護士に聞いた。

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■「給料が事前提示された額より約3万円少ない」どうしたら? 新卒と中途で違いも

――SNSではよく、「入社前に提示されていた待遇と実態が異なっていた」という不満の投稿を目にします。これは違法、詐欺ではないのか?と感じるのですが。

 「まず、雇主には、労働条件明示義務があり、給料や労働時間などの労働条件を明らかにしなければなりません。ですので、内規などで給料額が決まっていて実際にその額しか払わないのに、実際より高い給料を提示して労働者を集めたり、労働条件を明らかにしないまま契約をしたりすると、労働基準法や職業安定法に違反することになります」

――これに対する罰則は?

 「契約時の明示義務違反については、30万円以下の罰金が定められています。

また、給料が事前提示された額より約3万円少なかったというのが事実となると、これを理由に退職することもできますし、就業のための引っ越し代、交通費、宿泊費、また退職後の引っ越し代なども雇主に請求できます」

――新卒と中途で違いはありますか?

 「新卒で同じ会社に一斉入社する場合、初任給の額や労働条件はある程度一律化されていると思いますが、中途採用の場合は、個人の能力や経験によって条件が変わることが想定されているため、 “この人は、この年齢で、こういった経験があるから少し給料をプラスしよう”とか、逆に“まったくの未経験者だから…”と、交渉の中で給料の額が多少変わっても、労働条件明示義務違反とまではいえない場合があります」

――我々はどのような対応をすればよいのでしょう。

 「もともと提示を受けていた額の支払を求めていく場合、 “説明会で聞いた額と違う”と言っても、証明が難しいことがあります。書類やメールはきちんと保管しておくべきですし、募集時に説明された額と契約書に書かれている額が違う場合は、その時に指摘する必要があります。相手に騙すつもりがなければ、修正をしてくれるはずです。契約書にサインをする前に確認することが大切です」

――事前提示の給料と違うと会社に言うと、「最初は試用期間だから」と少ない額を払われたといった例も見ます。

 「それもよくあるトラブルです。試用期間があるのは聞いていたけれど、入社した後に、“試用期間中は時給”と言われ、生活が苦しくなってしまった事例も。入社前に細かいことを聞くのは気が引けるかもしれませんが、後のトラブル防止のために、試用期間も給料は変わらないかなど、確認しておいた方がよいですね。ほかにも、試用期間が終わるころに、 “まだ判断できないから、あと3ヵ月間契約社員として様子を見たい”と言われて契約を結びなおしてしまい、その後も正社員になれないまま契約が更新されて、1年以上契約社員のままだったという方もいます」

――そんな状態で束縛されていると再就職活動もままならないですね。

 「試用期間の延長や契約社員への切替といった話は、実はよくあります。そうした場合も、やはり契約書にサインしてしまう前に、労働基準監督署や弁護士などに相談してほしいです。契約書をよく見ていなかったとか、すぐに提出するように言われて中身も見ずに契約書にサインしたという事情があったとしても、やはり契約書にサインしてしまうと“書かれていることに納得していた”と見られてしまい、争えなくなることがあります」

■おかしいと思ったら? 弁護士が勧める注意点や相談方法

――恐ろしいですね。会社にペナルティがないとやりたい放題されてしまうのではないかと怖くなります。

 「罰則というところまでいかなくても、労働基準監督署は、法律違反について、必要な指導・助言をしたり、雇主に報告を求めたりすることが可能ですので、これはおかしいのではないかと思ったら、一度お近くの相談窓口へ相談してみてください」

――やはり書面をきちんと確認することが本当に重要になりますね。

 「おかしいと思ったらその場でサインをしてはいけません。“この場ですぐにサインをしなさい”というのは“怪しい”です。これは退職の時も同じで、契約書をよく見ると、“同業他社では働きません”と書いてあったりします。内容によっては争うこともできるのですが、そもそも納得できない書類にはサインしないのが一番。きちんとチェックして、その場で説明や修正を求めたり、それが難しければ、『大事な書類なので、一旦持ち帰って確認させてください』と伝えましょう」

──こうしたことに関する法改正は?

 「今年の4月から労働条件明示の範囲が少し広がり、就業場所や業務に関する事項も書かなければならなくなったので、より確認しやすくなりました。

 大きな企業でも訴えられたり、SNSで炎上する事例もあり、雇主側のリテラシーは上がってきているのではないかと思います。労働者側も自分の権利を知り、おかしいと思ったら動く、ということが大切です」

<プロフィール>
島田さくら
弁護士、アディーレ法律事務所所属。 『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)、『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)など、メディア出演多数。

(文:衣輪晋一)

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