着陸予定は「氷の海」!! 日本の宇宙ベンチャーが作った「月着陸船」のヒミツ

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2024年10月19日 07:10  週プレNEWS

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月着陸船「RESILIENCE」とispace代表取締役CEO&Founderの袴田武史氏


今年9月12日、筑波宇宙センターの無塵室で、日本の宇宙ベンチャー・ispace(アイスペース)が、打ち上げに向けて佳境を迎えている月着陸船「RESILIENCE(レジリエンス)」を公開! 

【写真】月着陸船に搭載されたパーツや機能

■「最速で今年12月の打ち上げを目指す!」

日本の宇宙ベンチャー企業・ispaceが民間月面探査プログラム「HAKUTO−R」ミッション2の打ち上げ予定時期や着陸予定地を発表。すでに最終チェックの段階に入っている月着陸船(ランダー)と、同社の欧州法人が開発した小型の月面探査車(ローバー)をJAXA(宇宙航空研究開発機構)の筑波宇宙センターで公開した。


民間企業として世界初の月面着陸を目指した2年前のミッション1では、月面への着陸直前まで順調に進みながら、最終段階で高度の誤認識で惜しくも失敗。

その悔しさを胸に「RESILIENCE」(「再起」「復活」の意)と名づけられた今回の月着陸船は、最速で今年12月に打ち上げ後、4〜5ヵ月をかけて再び月面への着陸を目指す。


「前回のミッション1ではランダーの組み立てと試験をドイツにある施設で行ないましたが、今回のミッション2ではJAXA筑波宇宙センター内の施設をご提供いただき、国内で最終組み立てを行なうことができました。

今年5月からはJAXAの環境試験施設で宇宙の過酷な環境を想定した熱真空試験や振動試験を実施し、最終段階チェックも順調に進んでいます」と、ispaceの袴田武史CEOは語った。

RESILIENCEの上部には、同社の欧州法人が独自に開発した小型月面探査車、「TENACIOUS(テネシアス)」が搭載されており、装着されたスコップでレゴリス(月面の砂)を採取する。


採取したレゴリスの所有権はNASAに譲渡する契約で、将来的な月資源の採掘に向けた一歩となることが期待されるほか、月面で酸素と水素を作り出す高砂熱学の「月面用水電解装置」や、ユーグレナの「自己完結モジュール(藻類栽培装置)」など、ispaceの"顧客"の貨物が搭載され、約2週間に及ぶ月面ミッションを通じて得られた実験データなどを地球に送信することになっているという。

ispaceの技術部門を統括する氏家亮CTOに具体的な航行について聞いた。

「ミッション2の着陸地点は『氷の海』と呼ばれる、クレーターのような起伏の激しい地形がない、平坦(へいたん)な場所を慎重に選びました。

前回、着陸の最終段階で月面のクレーターの縁を通過した際、システムが高度を誤認識した失敗を教訓に、各パラメータの変更と飛行経路の詳細なシミュレーションを重ね成功を目指します」


今後、すべてが順調に進めば、打ち上げの1〜1ヵ月半前には米フロリダ州ケープカナベラルの宇宙センターに輸送され、米スペースXの大型ロケット「ファルコン9」で打ち上げられる予定だ。

燃料を節約する「低エネルギー遷移軌道」を利用するため、月に到達するのは打ち上げから4〜5ヵ月後の来年春頃になりそうだという。

そんな、もうすぐ月面に行く予定のRESILIENCEがその名のとおり、見事リベンジを果たし、日本の民間宇宙ビジネスに歴史的な一歩を刻むことを期待したい!

●袴田武史 Takeshi HAKAMADA  
ispace代表取締役CEO&Founder。1979年生まれ、東京都出身。名古屋大学工学部を卒業後、米ジョージア工科大学で修士号(航空宇宙工学)を取得。外資系経営コンサルティングファーム勤務を経て、2010年に民間月面探査レースに参加した際に日本チーム「HAKUTO」を率いる。民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」を主導しながら、月面輸送を主とした民間宇宙ビジネスを推進中

取材・文/川喜田 研 撮影/佐々木里菜

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